プラットフォームの死神
小学生の時の事なので思い違いかもしれないけど、謎だった体験。
家族と出掛けた帰り、確か夜の21時頃に、駅のホームで電車を待っていた。
ホームには他にも少数の人が居て、少し離れた所に子供のように背が低く、でも顔は明らかに爺さんの人がしゃがみ込んでいた。
その人が気になってチラチラ見ていたら、急に手を前に伸ばしてクイックイッと紐を手繰り寄せるような動作をした。
それを何度か繰り返しているので不思議に思い、その見えない紐の先の方を見てみた。
すると向こう側のホームに女の人が立っていて、爺さんがクイックイッという動作をする度に体が揺れているようで、じりじりと前に進んでいる。
その時、向こう側のホームに電車が入って来た。
爺さんは大きく紐を引き、女の人はまるで釣られるようにスタスタとホームに向かって歩き出した。
自分はびっくりして悲鳴を上げた。周りの人が驚き、一斉にこちらを見た。
次の瞬間、向こう側のホームで沢山の悲鳴が上がり、電車が急停車した。
※
父親が野次馬で見に行った報告によると、
「女の人が電車に接触して怪我をした。酷い血が流れていたけど意識はあるようなので、多分命に別状は無いんじゃないか」
との事だった。
「飛び込み自殺をしようとして、寸でのところで思い留まったのだろうね」
と…。
※
気付いた時には、爺さんの姿は無かった。
自分以外の家族は、爺さんの事は見ていないらしい。姉も、
「そんな爺さんが居たらアタシだって気になったはず。でも居なかったよ、そんな人」
と言っていたので、もしかしたら見間違いなのかもしれない。
でも、あれ以降電車に乗る度に、ホームで爺さんの姿を探してしまう。
反対側のホームの真正面に爺さんが居たらどうしよう…などと考えてしまう。