Qualeは物質に干渉する

公開日: 不思議な体験

Mysterious-Steampunk-Gentleman

僕は東京の杉並区に住んでいます。今は恥ずかしながらフリーターです。

昨日は友人四人と駅近くの居酒屋で飲み、ほろ酔いで自宅まで帰っていました。駅から自宅までは歩いて10分ほどです。

その途中にコンビニがあるんですが、お酒のせいで喉も渇いていたし、煙草も切れていたので、寄ることにしました。

缶コーヒーと煙草を二箱買って店を出ると、とても雨が強くなっていました。

雨宿りがてら煙草に火をつけ、コンビニの軒下で雨足が弱くなるのを待っていました。

コーヒーを飲みつつ、二本目の煙草に火をつけたときでした。

隣にいつの間にか上品なおじさんが立っていて、僕のほうをじっとみています。

カーキ色のスーツにノータイ。なかなかのロマンスグレーです。

なんだろうと思いつつも気にしないようにしていましたが、一度意識してしまうと、どうしても視線が気になってしまいます。

知っている人かな?とも思いましたが、顔や雰囲気に見覚えは全くありません。

ちらちらと様子を見ていると、その男性が会釈をしたので、思わず会釈し返しました。

「雨が強いですね」

「ですね。台風のせいでしょうね」

最初は二言三言こんなふうに始まりましたが、気がつくと結構しゃべりこんでいました。

その人の話し方がまた上手いんです。

なんていうんだろう…警戒心を和らげるような口調と声質っていうのかな。

自分の身の上というか近況なんかを、知らず知らずのうちベラベラと話してました。

両親とは中学生の頃に死別したこと、大学卒業して上京してきたこと、就職先でトラブルがあり退職したこと、今はフリーターをしながら、大学院に入りなおすために勉強していること。

ほとんど僕が話していた気がします。

男性は絶妙な相槌を打ったり「そうなんですか」と興味深く聞いてくれたりしてたのがとても嬉しくて、話しながら何故か胸が熱くなり、最後の方は鼻声になってしまいました。

僕はいつも自分のことを孤独だと思っていました。たとえば親友と会っている時も、彼女がいた時も、心の奥底では、自分は独りなんだという気持ちを完全に拭い去ることが出来ませんでした。

両親に置いていかれたんだと、心のどこかでまだ思っていたのかもしれません。

そんなことを、初めて出会った見知らぬ人に話している自分にも驚きますが、黙って聞いていてくれた男性も、今思えば本当に不思議です。

気がつけば一時間くらい、コンビニの軒下で僕たちは話していました。

ふと携帯が鳴り、見ると、さっきまで一緒に飲んでいた友人からの着信でした。

「ちょっと失礼します」と言って電話に出ると、かなり酔っ払った様子で何を言っているか分かりません。

まださっきの店の近くにいることだけはわかったので、タクシーで迎えにいくからと言って切りました。

男性に友人の件を話して「話を聞いてくださってありがとうございました」とお礼を言いました。

男性は「いえいえ、こちらこそ」と、親切にもコンビニのお兄ちゃんに言ってタクシーを呼んでくれました。

前置きが長くなって申し訳ないのですが、実は本題はここからなのです。

タクシーを待っている間(と言っても3分ほどだったのですが)、男性は奇妙なことを僕に言い出しました。

「君はどんなに勉強して試験をパスしても、大学院には戻らないだろう」

「今アルバイトで働いている会社は2年後に無くなる」

「リラはダメだ」

「2009年1月2日13時43分に、杉並区のA神社境内で、ある女性と必ず出会いなさい。茶髪、癖っ毛、長めのショートヘアで、ファー付きのロングコート。茶色のヒールが高いブーツを履いている」

その話の途中でタクシーが着ました。

僕はいきなり言われた色々なことを、整理もできないまま乗り込んだのですが、ドアが閉まる直前、男性は僕の手に紙切れと何かを握らせました。

そして早口で何かを言いましたが、僕には聞き取れませんでした。

紙切れには、先ほどの女性の件と、英語と日本語の混じった文字が書いてありました。

『ネメア』

『Jacob’s Ladder was developed by Causal closure of physics』

『Maryはpaper moonを歌わない』

『主観から始まったものは全ては客観に終わる』

そしてサンプルケースのようなものの中に、ピアスが一対入っていて『Her diva』と書かれた付箋が付いていました。

紙切れの裏側には、

『彼女に会ったら、ピアスを自然な形で渡す。その際に、彼女に自分のことを不審に思われてはいけない。難しいだろうが頑張る必要がある。Qualeは物質に干渉する。2009年1月2日13時43分にA神社で、誰よりも早く彼女に会わなければいけない。つまり彼女がその日話す初めての人物が、君でなくてはいけない。13時43分に遅れてはならない。妹さんは、おじさんとおばさんとうまくやっているが、おばさんは一年後に、精密な検診をうけなければならない。その時には、妹さんと共に必ず実家にいなければならない。2009年のお盆に帰省してはいけない。万が一にも失敗したならば好きにしてよい。君の他に二人いるが、それらは補欠である』

そんなことが書いてありました。

一体なんだったんでしょうか。

一切創作はありません。

人形釣った

俺は東京で働いていて家庭を持ってたんだが、2年前からちょっとキツイ病気になって、入退院を繰り返した挙句会社をクビにされた。 これが主な原因なんだが、その他にもあれこれあって女房と…

雨(フリー写真)

黒い傘

あまり怖くないかもしれないけど、今日のような雨の日に思い出すことがあるんだ。 高校2年生の夏休みの時の話。 友人二人(AとBとする)と買い物に行っていると、突然雨が降って来…

亡くなったはずの役者さん

私は昔、ある役者さんの熱狂的なファンでした。 その役者さんが出ている作品を全て見る事は勿論、雑誌を買い集めたりと、私の生活は彼と共にありました。 しかし役者さんは、ある日病…

神秘的な山(フリー写真)

サカブ

秋田のマタギたちの間に伝わる話に『サカブ』というのがある。 サカブとは要するに『叫ぶ』の方言であるが、マタギたちが言う『サカブ』とは、山の神の呼び声を指すという。 山の神…

ひな祭り(フリー写真)

三つ折れ人形

私の実家に、着物の袖が少し焦げ、右の髪が少し短い、一体の日本人形があった。 桐塑で出来た顔には、ちゃんとガラスの目が嵌め込まれていた。 その上に、丁寧に胡粉の塗られた唇のぽ…

並行宇宙(フリー素材)

史実との違い

高校時代、日本史の授業中に体験した謎な話。 その日、私は歴史の授業が怠くてねむねむ状態だった。 でもノートを取らなければこの先生すぐ黒板消すしな…と思い、眠気と戦っていた。…

雪に覆われた山(フリー写真)

雪を踏む足音

初雪の山は登ってはいけない。 そういう話を仲間内でよく聞いていたが、単に滑りやすくなるからだろうと軽く捉えていた知り合いは、命の危険に晒された。 彼は登山歴3年くらいの経験…

古書店(フリー写真)

消えた友人

先輩と二人で仕事場に泊まり込んでいた日、休憩中にその先輩が聞かせてくれた話。 先輩曰く「友人に会えなくなった」らしい。 最初は単に仕事が忙しいからなのではないかと思ったのだ…

笈神様(おいがみさま)

その日の夜、私は久し振りに母に添い寝してもらいました。母に「あらあら…もう一人で寝られるんじゃなかったの」と言われながらも、恐怖に打ち勝つ事は出来ず、そのまま朝を迎える事となりました。…

生まれ変わり

物心がついた頃から、 「僕は1回死んだんだ」 って言っていた。 むしろその記憶は今でも残ってる。 その自分が死んだって言っていた理由ももちろん覚えている。 …