人の想い

公開日: 心霊ちょっと良い話

ソファー(フリー写真)

俺は出張マッサージを生業にしているのだけど、十何年か前、名前を言えば誰でも知っている会社の会長さんのお宅に仕事でお伺いした時の事。

いつものように呼び鈴を押して返事を待っていたところ、着物姿のお手伝いさんが門から出て来た。

そして手招きをして

「こちらの居間へどうぞ」

と居間に通され、ソファに腰掛けていた。

するとそこの奥様が来て、驚いた様子で

「どうやって家に入ったの?」

と聞いてきたので、

「お手伝いさんに案内されましたが」

と言ったら、

「家にはお手伝いは居ない」

と言う。

こういう感じの人でしたよと説明した後、奥様がいきなり

「ああ…また出たのね~」

どうやら以前雇っていた方だったらしく、亡くなっても尽くしているお手伝いさんに感動してしまった。

後日談

あの一件の後、そのお宅の旦那さんが奥様からお手伝いさんの話を聞き、

「まだ逝ってないのか、解った」

と言い、お手伝いさんが眠る墓地に赴き、墓前に線香と花を添えてから、

「もう向うに逝きなさい。お前は充分に働いてくれたじゃないか」

と言葉を掛け、墓地を後にしたのでした。

次の日の夜中、旦那さんの枕元にお手伝いさんが正座して、

「お坊ちゃま、お世話になりました。これからアチラに参ります」

と頭を下げて消えたそうです。

その話を後で奥様から伺い、

「もう出ませんよ」

と言われた時は、一抹の寂しさを感じてしまいました。

死後の世界があるのかどうかは分からないけど、人の想いはこの世に残るものですね。

関連記事

夫婦の手(フリー写真)

あの世とこの世

若くして亡くなった夫は、美術的な才能のある人でした。でも息子は小学生の頃から図画の授業は全然ダメ。その点は父親に似なかったんですね。顔も似ていません。性格はよ…

手を繋ぐ親子(フリー写真)

おとうさん、こっち!

お隣に、両者とも全盲のご夫婦が住んでいらっしゃいます。この話は、ご主人から茶飲み話に伺ったものです。 ※ ご主人は16歳の時に、自転車事故で失明されたそうです。当然…

雪景色(フリー素材)

もどり雪

一月の終わり、山守りのハルさんは、山の見廻りを終えて山を下っていた。左側の谷から、強烈な北風に舞い上がった粉雪が吹き付けてくる。ちょっとした吹雪のような、『もどり雪』だ…

ラグビー(フリー写真)

先輩の分まで

大学に入学してすぐにラグビー部に入った。入部するなり、ある4年生の先輩に「お前は入学時の俺にそっくりだ」と言われた。その先輩は僕と同じポジションだった。…

河童淵(フリー写真)

河童

幼稚園の頃、祖父母の住む田舎に行った時、不思議な生物に会いました。のんびりとした田舎町で、周りに住んでいる人全員が家族のように仲が良い場所なので、両親も心配せずに私を一人で遊び…

体温計(フリー写真)

太いお姉ちゃん

去年の話なのだが、5歳の娘が急に高熱を出し、慌てて近くの病院へ連れて行った。そして風邪と診断され、処方された薬を3日間飲ませていたが、症状は一向に良くならず。『ひょっと…

ろうそく(フリー写真)

評判の良い降霊師

実家は俺の父親が継いでいるが、実は本来の長男が居た。俺の伯父に当たる訳だが、戦前に幼くして亡くなったのだ。今で言うインフルエンザに罹ったと聞いたように記憶しているが、と…

小綺麗な老紳士

駅構内の喫煙スペースで私はタバコを吸っていました。喫煙スペースと言っても田舎の駅なので、ホームの端っこにぽつんと灰皿が設置してあるだけの簡易的なものでした。すると小綺麗…

牛(フリー写真)

ミチ

私の母の実家は一度、家が全焼してしまう大火事に遭いました。当時住んでいたのは、寝たきりのおばあちゃんと、母の姉妹6人だけ。皆が寝付いて暫く経った頃、お風呂を沸かすために…

白いシャツ(フリー写真)

破れたシャツ

先日、酔っ払いに絡まれている女性がいたので助けました。その時、酔っ払いに引っ張られ、シャツの生地の縫合部分が裂けました。その日に限って、病気で亡くなった妻が私の誕生日…