ストーカー
公開日: 本当にあった怖い話 | 死ぬ程洒落にならない怖い話
俺が友達の女の子の家に泊まりに行った時の事。
彼女は前からストーカー被害に遭っていると言っていたんだけど、まあ正直特別可愛い子という訳じゃないし、男からすればストーカーどころか痴漢すら都市伝説なんじゃないかなって感じするよな?
だから誰も相手していなかった。
でもあまりに怖がるし、マジで顔色が悪くなってきたから、面倒見の良い先輩が、
「じゃあみんなで今日は遊びに行こう。一日そうすれば平気になるだろ」
と言い出して、男三人で遊びに行ったんだ。
メンバーは俺、先輩、先輩の友達(B先輩とする)。
※
道中は部屋に何も無いと言うから、持って来た麻雀のルールを彼女に説明したり、「男三人いればストーカーが来た方がむしろ解決だろ」みたいなことを言って笑い合っていた。
夜も2時くらいを回って、明日もあるから寝ようかという話になった。
彼女はベッドで寝て、俺達は床に上着を布団にしたりクッションを枕にして横になっていた。
俺が一番ドア際に居て、言い出した先輩が隣、B先輩が窓際に寝ていた。
オレンジ色の電球を見つめていたんだけど、なかなか寝付けずにぼーっとしていたら、B先輩が俺の上を横切って行ったのね。
「どうしたんすか?」と聞いたら、
「なんだ起きてたのか。ジュース買ってきたわー」と言った。そしたら先輩も、
「えー、俺の分は?」と言って起き出した。
「二人で起こせよ」とブツブツ文句を言いながらB先輩が上着を肩にかけて、先輩がジュースを開け、俺はトイレを借りようと思って立ち上がった、その時。
まさにその時。
ああ、ほんと、思い出しちまった。
多分B先輩が鍵を閉めていなかったんだな。
ドアが「ガチャ!」と凄い勢いで開いた。
女の人、ぼさぼさの髪の人が顔を突き出すような感じで、開けたドアから首から先と右手だけ突っ込んで来た。
もう本当に、闇から顔がぬっと飛び出て来たような顔で、しかも目がクリクリに開きギラギラ輝いていた。
俺は目が合った。
俺はもう混乱して「うぇあ!」みたいな声を出し、腰が抜けた状態。
先輩が立ち上がろうとした瞬間、「バタン!!!」と凄い勢いでドアが閉まった。
ドアが空いたのは1、2秒だと思う。
それで閉まったドアの向こうから、凄く甲高い叫び声で、
「なんだぁぉっぉぁぁぁぉー!!!あぁぁぁええぁぁぁー!!!
あはは!おんまあえらぁがぁーーー!!!ぁぁぁー!!!ぉあーっ!!!
こぉーーっ、ぉっ、ーーこぉあーぅるあぁぁー!ちくし……ぃぁーっっっ!ぁっぁっ……(バタバタバタバタ…)」
と聞こえ、声の合間合間に「バタン」とか「ガタン」とか何かを蹴ったりするような音がするのね。
最後の「バタバタ」というのは階段を降りて行く音。段々声が遠くなった。
俺はマジで腰が抜けて、がたがた震えていた。心臓は本当に飛び出すかというくらい鳴っていた。
先輩も女の子も飛び起きて、女の子はマジパニック状態。
「なんで閉めなかったんですか、なんで!!なんでぇー!だからー!あぁー!」とか言って大泣き。
「死ぬ、殺される、助けて」と叫びながら、先輩をぶんぶん殴っていた。
俺とB先輩は、震えながらだけど上着を着て取りあえず外に出た。しかし何処にも女の姿は無かった。
でも履き潰されたナイキの白のボロボロのスニーカーが片方だけ転がっていた。
先輩は「マジかよ…なんだこれ…やべぇぞ…これは…」みたいに呟きながら、廊下から外を見て確認して、俺は階段を確認した。
階段にはもう片方の靴が落ちていた。
部屋に帰って鍵を閉めた。窓の鍵も確認した。
女の子はもうただただ泣いていて、先輩が慰めていた。
※
俺達はそのまま110番して、警察に色々聞かれた。
靴は警察が持って行って、指紋も取っていた。
結局その子は翌月引っ越したんだが、あまりにも怖かったらしく、それから引っ越すまでずっとサークル員の女の子の家に泊まっていた。
俺達も出来るだけその子の家に泊まろうという話になり、俺も何度か行った。
彼女はいつも怖がっていて、凄く無口になっていた。
それから俺があの日、どんな女を、何を見たのかと言われる度、
「それくらい怖かったよな」
と言って片付けられるんだが、今にも夢で見る。
絶対間違いじゃない。
その女は、白目が無かった。目が全部真っ黒だったんだよ。
それが飛び出しそうなくらい見開かれていた。
今でも忘れられない。