集団の闇

南京錠(フリー写真)

身元が特定されるかもしれないから詳しくは書けないけど、某長寿番組に『開かずの扉を開ける』という企画で出たことがある。

当時住んでいたのは割と年代物の寮で、俺達の代で廃寮になることが決まっていた。

寮生の私物を入れる大きなロッカーがある部屋があり、ロッカーの後ろに押入れがあることに、ある日一人が気付いたんだ。

ロッカーを動かしてみようか、という話になったのだけど、何しろ大きくて重いし、折角だから有名な某番組に投稿しようぜ、という流れになった。

それが採用され、5月にタレントがやって来た。

最後の寮生である俺と、あと二人が立ち会って、ロッカーを退け、押入れを開けると…。

そこには大量の朝○日報。

そして木製バット。

○鮮日報は殆どが綺麗に折り畳まれていたけど、血の染みのようなドス黒いものが大量に付着していて、ぐちゃぐちゃにされたものも結構大量にあった。

それらを取り出して更に捜索すると、押入れの壁は落書きだらけ。

大半は日本語だったけど、ハングルやよく解らない文字もあった。

お札も貼ってあった。

結局、テレビではボロっちい寮で暮らす生活を面白おかしく取り上げて、開かずの扉のところは、取り敢えず無難そうな顕微鏡と謎の皿を映しただけで終わった。

取り出した物は全部、カメラマンさんやタレントさんが戻し、ロッカーも元通りにしてくれた。

そういう作業はADさんの仕事だと思っていたから、タレントさん自らやることに少しびっくりした。

元々とても古い寮で、トイレの傍には学生闘争時代のポスター(『1979年×月×日、○○が死んだ!彼の遺志を継げ!』というような物騒な内容)が今だに貼ってある。

それでも、やはり血の染みが付いた朝○日報と、凶器っぽいバットには血の気が引いた…。

その番組が放送された後、その寮の出身者と思われる占い師を自称する女性が訪ねて来て、現役寮生が席を外した間に、過去~現在までの寮生名簿を持ち去るという事件もあった。

一応返却はされたのだけど、コピーされているかもしれないよね…。

俺達が在寮している時には、もう思想的な縛りなど何も無かった。

でも同じ大学や近所の大学では、今だに学生闘争を引き摺って、何やら活動してる寮もあったようだ(一応、西暦2000年だったのに)。

実家が貧乏で仕送りが期待出来ない、でも一人暮らししたい、という軽い気持ちで寮に入ったけど、集団というものには闇が潜みやすいのだろうなと思う。

関連記事

猛スピードで

俺にはちょっと変な趣味があった。 その趣味って言うのが、夜中になると家の屋上に出て、そこから双眼鏡で自分の住んでいる街を観察すること。 いつもとは違う静まり返った街を観察す…

ハカソヤ(長編)

ほんの数年前に知った私の母の故郷の習慣の話です。 うちの集落にはハカソヤという女限定の変な習慣があります。 ハカソヤにも色々あって、大きく分けてお祝いの言葉に使う場合と、お…

自殺志願

年月が経つにつれ自信がなくなっていく思い出です。 俺が19歳の頃の話です。高校は卒業していましたが、これといって定職にもつかず、気が向いたら日雇いのバイトなどをしてブラブラしてい…

コトリバコ(長編)

序 暇なときにここを読んでいる者です。俺自身、霊感とかまったくありません。ここに書き込むようなことはないだろうと思ってたんですが、 先月起こった話を書き込もうかと思いここに来ました。一応…

何で俺なんだよ

最近体験した怖い出来事です。 文章が堅いのでいまいち怖くないかもしれませんが、洒落にならないくらい怖かったです。 ※ 今年の2月下旬、出張で都内のビジネスホテルに泊まった。 …

廃屋

廃屋での恐怖体験

小4の時の話。 多分みんな経験があると思うけれど、小さい頃って廃屋があると聞いただけで冒険心が疼いて仕方ないと思うんだ。 俺自身もあの日は家からそう遠くない場所に、まだ探検…

夜の山道

ヤマメ

あれは母の実家から帰る途中での出来事。 母の実家はG県の田舎で、夏はキャンプ、冬はスキーをする人が来るような山の中。 お盆の時期になり、母が祖父の家に帰るらしいので、3人で…

柿の成る家(フリー素材)

ジロウさん

23年程前の話。 俺の地元は四国山脈の中にある小さな村で、当時も今と変わらず200人くらいの人が住んでいた。 谷を村の中心として狭い平地が点在しており、そこに村人の家が密集…

U字溝

実家のある地域では、毎月一回くらい集まって地区の道路の掃除とか酒飲んだりする日がある。 んで、その日は昔からありすぎてもう何を奉ってるかも分からない神社だかお寺を掃除する日だった…

マネキン工場

幼い日、何てことなく通り過ぎた出来事。その記憶。 後になって当時の印象とはまた違う別の意味に気付き、ぞっとする。 そんなことがしばしばある。 例えば。 小学生の…