手伝うよ
公開日: 不思議な体験 | 死ぬ程洒落にならない怖い話
私が通学する駅は自殺の多い駅だ。
そのせいか、電車の急停止が多い。
急停止が多いあまり、学校や会社に遅れても「電車が」「自殺があって」と言えば遅刻扱いにならず、受験は余った教室で受けさせてくれるなど、朝が苦手な人には好都合だった。
そんなある日、私が何気なく駅のプラットホームにぼーっと立っていたら、いきなり男に肩を掴まれ「手伝うよ」と言いながら線路に落とそうとしてきた。
男の服装はきれいなスーツに顔は普通の25~30歳の人。
しかし口角が異様に釣り上がっていて不気味だった。
高校で柔道部に入ってたのでとっさに男を線路側へ投げたが「しまった」と思った。
正当防衛だったと言えば何とかなるとビクビクしながら考えていたが、線路には男の姿は無かった。
気味が悪いと思ったが気にせず電車に乗り、いつも通り学校へ向かった。
※
そして私は高校と大学を卒業し、社会人として世に出た。
高校の頃のあの事件を忘れかけていたある日。
駅が混んでいたせいで後列に並んでいた。
何気なく前列の方を見ていたら、小柄な男子高校生らしき子が並んでいた。
すると、その高校生の後ろからきれいなスーツ姿の男が近づき、高校生の耳元で何かを言った後、肩を掴んで線路へ走り出した。
私は思った。5年前と髪型、姿、身長、顔、全てが同じ人は居るのだろうか。男を擬視した。
その時、一瞬後ろを向いた男と目が合った。口角があの時と同じように釣り上がっていた。
僅か2~3秒のことだったが、30分のような長い時間に思えた。
ハッと我に返ると周りで「キャー」とか「おうぇ」とか聞こえてきた。
また自殺らしい。男子高校生一人の。私は上司に遅れると電話をかけた。
ちなみにその後も自殺は減らないと言う。原因は何なのだろう?