ふたりの父親
公開日: 怖い話 | 死ぬ程洒落にならない怖い話
4~5歳くらいまで、父親が2人いた。
それも、浮気とかじゃなくて、同じ父親が2人。
意味が分からないと思うけど、顔形は全く同じなのに目つきだけが異様な感じがする、とにかくこの世のものとは思えない存在だった。
どういうときに “そいつ” が来たのかは覚えていないが、いつもの父親と同じように家に帰って来てた。
でも、俺も母親も “そいつ” が父親じゃないということは肌で感じており、玄関の前に来たときから震えていた記憶がある。
そして、“そいつ” は家の中に入ると決まって家具や皿を滅茶苦茶に荒らすんだよ。
俺は恐くて目をずっと瞑ってるんだが、耳には母親の「やめて!」という声が今でもこびりついている。
断言できるが、俺の父親は優しい人で、そんなことをする人ではない。
でも、顔が同じで、性格が全く逆のもう1人の “そいつ” は確かにいた。
今、そのことを親に言っても「そんなことはなかった」しか言われない。
恐怖はいつも父親が仕事から帰ってくる時から始まっていた。
大体本来のやさしい父親が帰ってくるのだが、たまに “そいつ” が帰ってきてた。
今になって家族に訊いても、暴れていた事実自体がないという。
それでも気になって、親に問い質してみました。
・父親が暴れていたか
・あの頃浮気していたのか
・父親は精神病なのか
・俺は精神病なのか
何を訊いても「そんなことはない」しか言わなかったので、こっちも強く出ようとしたところ、兄に制止されました。
しかし、その後で兄から真相を聞くことができました。
あの頃、確かに家内で暴れていた時期があるということです。
ただ兄が言うには、
「あのとき暴れていたのは、母さんの方だぞ」
とのことでした。
今は恐くて母親に話しかけられません。