留守電に残された声

踏切(フリー素材)

偶にニュースで取り上げられる、『携帯電話に夢中で、踏切を気付かずに越えて電車に轢かれてしまう』という事故があるじゃないですか。

巻き込まれた本人もさる事ながら、電話の相手も大変です。

友人知人が、或いは肉親が電車に轢かれるまでを、電話口で聞かされる事になるのだから。

そしてその中には、電話先が留守電であったために、その一部始終が録音されている場合もある訳です。

友人の彼女、A子もそういう経験を持っています。

以下の話はA子から聞いた話。

A子の友人にB子という子がいたのですが、このB子がまさにA子の留守電にメッセージ入れている最中に、電車に轢かれたそうです。

よくある旧式の踏切で、遮断機が無く警笛だけの踏み切りでの事故だったとの事。

何でも次の日にA子の家に泊まりに来る予定だったのだが、行く時間がずれるので連絡を入れていた最中に踏切で轢かれたらしい。

内容は大体このようなものだったとか。

「カーンカーン」という警笛の音が微かに聞こえる中…、

「B子です……明日ね、ちょっと遅れそう……一時間くらい遅れ

(衝突音)」

そんな事故があったとも知らず、家に帰って留守電を聞いたA子。

本当にびっくりしたらしい。メッセージの途中でいきなり物凄い衝突音がする訳ですから。

B子の家に確認の電話を入れたら、やはり事故に巻き込まれた事が判りました。

無論即死だったとの事。

友達が死んでしまう前の、最後の声の入った留守番電話。

嫌だとは思いつつも、B子の事を思ってメッセージを消すに消せず、テープに入れたまま残しておいたそうです。

一年後の命日。A子はそのテープをもう一度だけ聞こう、そして供養のためお寺に預けてしまおうと思い、最後に聞く事にしたそうです。

そしてテープを聞くと、一年前には気付かなかった変な事に気が付いたのです。

A子「電話がかかってきた時にもう警笛がしているのよ。という事は、かける前から鳴ってるはずでしょ、何でB子は気付かないの?」

私がこの話を聞いた時はもうお寺にテープを預けた後で、実際のものを聞いていないのでその辺りは何とも判断できないのですが、もう一つ不思議な事があるとA子は言うのです。

「それに喋り始めてからぶつかるまでが結構短いのよね。警笛が鳴ってから電車が来るまでって、少し間があるじゃない。でもね、あっという間なのよ」

A子が再現してくれたテープの内容は先に書いた通りです。文字にすると解り辛いですが、普通の速さで口に出して読んでみてください。確かに短いんです。

結局、こういう推測しかできないんです。

警笛が鳴る直前に電話をかけ始め、A子の留守電が「メッセージをどうぞ」と言った後、喋り始めると同時に、電車が来ると分かっているはずの踏切に向かって歩き始めた。

こんな妙な事があるものなのか、今だに理解できない話なのです。

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