記憶の村の変貌

廃墟

ある日、男性は突然、過去に訪れた村を思い出した。

それは数年前、一人旅をしていたときに偶然立ち寄った、小さな宿がある村だった。

その村では心温まるおもてなしを受け、強く印象に残っていた。

無性にもう一度訪れたくなり、男性は連休を利用して車を走らせた。

彼は自身の記憶力に確信を持っていたため、道順はすっかり覚えている。

しかし、村の入り口を示す看板が見えた時、彼は首を傾げた。

以前は「この先Xkm」と書かれていたはずの看板が、「巨頭オ」と奇妙な文字に書き換えられていた。

その文字は、外国人が急いで書いたかのようだった。

不吉な予感を覚えつつも、男性は引き返すことをせず、車を村の中へ進めた。

村に着くと、そこはもはや人の住まない廃村と化していた。

建物には草が絡みつき、男性は車から降りることを躊躇った。

その瞬間、彼は約20メートル先の廃屋の影から、異様に大きな頭を持つ人影が現れるのを目撃した。

驚愕してハンドルを握り締めると、その奇怪な人影は手を足にぴったりとつけ、巨大な頭を左右に振りながら、彼の車に向かって歩き出した。

しかもそれは一人ではなかった。

幸いにも、男性は車から降りずに済んだ。

彼は恐怖に駆られて車を急バックさせ、国道に向かって全速力で車を走らせた。

家に帰って地図を確認しても、何年も前に訪れた村と、その日に訪れた場所が間違っていないことを確認した。

だが、男性は決してその村を再訪することはなかった。

そして、その村の真実は、彼の記憶の中だけに留まった。

関連記事

禁忌の人喰い儀式

俺の親父の田舎は、60年代初頭まで人喰いの風習があったという土地だ。 とは言っても、生贄だとか飢饉で仕方なくとかそういうものではなく、ある種の供養だったらしい。 鳥葬ならぬ…

鯉の池

けもの

俺のじいちゃん家は結構な田舎にあり、子供の頃はよく遊びに行っていた。 じいちゃんは地元の名士とでも言うのかな、土地を無駄に一杯持っていて、それの運用だけで結構稼いでいたらしい。 …

コインロッカーベイビー

東京で一人暮らしをしている女性がいた。 彼女はある時、誰の子とも分からない子供を身ごもったのだが、育てることができそうになかったので、自宅でひっそりと子供を生み、そのまま東京駅の…

チャイムが鳴る

ある蒸し暑い夏の夕暮れ時、俺は自宅の2階で昼寝をしていた。 「ピンポ~ン、ピンポ~ン」 誰か来たようだ。俺以外家には誰もいないし、面倒くさいので無視して寝ていた。 「…

ひょっとこのお面(フリーイラスト)

ひょっとこのお面

俺の爺さんには従兄が居たらしいのだが、十代前半で亡くなっている。 それがどうも不自然な死に方だったらしく、死んだ当時は親戚や近所の連中に色々騒がれたのだそうだ。 ※ 戦後すぐ…

河原(フリー写真)

手を振る人形

2008年8月の終わり頃、一週間ほど夏休みが取れたので兵庫県の実家に帰省しました。 ある日、叔父(父の弟)に頼まれた簡単な仕事の手伝いを終え、二人車で帰路に着きました。 時…

マイナスドライバー

そんなに怖くないのですが聞いてください。 私がまだ4~6歳の頃の話です。 当時、私の家には風呂が無く、よく母親と銭湯に行っていました。 まだ小さかったので、母と女湯に…

ゆかりちゃん

ゆかりちゃんという女の子がいた。ゆかりちゃんは、お父さん、お母さんと3人で幸せに暮らしていた。 しかし、ゆかりちゃんが小学校5年生の時に、お父さんが事故で亡くなってしまった。 …

ファミレスのバイト

ファミレスでの俺のシフトは、普段は週3日で17時~22時と日曜の昼間。 肝試し帰りの客の一人が、憑いて来た霊らしきものを勝手に店に置いて行った後での出来事。 ※ マネージャー…

呪詛

相も変わらずこのスレは荒れてるようで。 怖い話の怖さとは、それを見聞きする環境にも左右されるのはご存知の通りだと思いますが、現在のスレのような状況では、仮に良質な話が投下されたと…