心霊動画保管庫
俺は現在、某携帯キャリアの携帯を使っているんだが、どうにも訳の分からないことが起きすぎる。
事の初めは、俺が携帯でサイトを見ていた時だった。
まず、俺の知り合いで携帯の不思議なサイトに詳しいやつがいたんだ。そいつを仮にYとする。
『無料着信音ならここ』『画像検索はここ』というサイト関連の事を知り尽くしていたやつなんだけど、前々から俺宛にYが 「ここのサイト面白いよ」というメールを何件か送って来ていたんだ。
付き合いという事もあったけど、色々と興味をそそられるものが多く、いくらかサイトを見て回った。
大体見て回ったが、怖い画像系が特に多かった。
その中で、これは面白いと思ったものが一つあったので、Yに詳しく聞いてみることにした。
俺が目に付けたのは『心霊動画保管庫』というよくある掲示板だった。
ここは結構カウンター数は少ない割には、やばいのが沢山置いてあるサイトだ。
Y曰く「ああ、これ!俺の一番お気に入りのサイトだよ!」と言っていた。
それを聞いて嬉しくなった俺は、一日中そのサイトの心霊動画を漁っていて、それから一週間くらいはそれに夢中だった。
※
一週間後にYから、
「ここのページもうそろそろ閉鎖するらしいよ。寂しいよな」
というメールが来た。俺は悲しさが隠し切れなかった。
俺はなんとか閉鎖だけはしないで欲しかったので、そのページにある誰も書き込まない掲示板に丁寧な文で、
「毎日楽しみにしています…(略)…どうかやめないで下さい。お願いします」
と書き込んでいた。
掲示板では返事は何も来なかったんだけど、それから2日後に変なアドレスからメールが来た。
メールの内容は確か、
「アgヒooo゙゛イイ」
という内容。
アドレスは何も登録してないはずなのに、差出人名に『曰花』と書いてあった。
携帯のバグかなと思い、Yにも相談してみたが、
「意味不明だな…なんか凄いな、お前」
と逆に尊敬されてしまった。
まあ、故障か何かだろうという事で、明日中に某携帯ショップに行こうというくらいの気持ちだった。
変な事と言っても文字化けが出ただけなので、俺は普通にYと夜中までメールをしていた。
しかし、その夜が一番怖かった。
夜中にYと他愛もない話をしていたんだが、急にYのメールがおかしくなってきた。
というのは、メールの件名が
「別別別別別別…」
となっていた。
ちなみに本文には何も書いていない。
訳の分からない件名に急に鳥肌が立った俺は、
「おい、どうしたんだよ(笑)。Yってこんなキャラだっけ?」
といった感じのメールを送信した。
…30分経っても返信が来ない。
急に返信が来なくなるのはいつものことだから俺は構わないのだが、今回の終わり方は最悪。
明日には会って「どうしたんだよ」と聞いてみようかと考えていた。
明日も朝から早いので、携帯に充電コード挿して寝ようと思った。
電源コードを挿した瞬間、画面がプツンと切れて焦った。
本気でやばいのかと思い、俺はもう一度充電器のコードを抜いて挿し直した。
どの携帯でも同じで、起動画面は表示されるんだけど、その時の俺の携帯は違った。
画面の照明は点いているんだけど、画面は真っ暗。
そして3秒間くらい経った時、突然画面に女の人の真顔の動画が表示され焦った。
その女の人の真顔の動画というのが、目や口が無くて、そこだけ黒く透けてんの。
ビビリな俺は、携帯のバッテリーを急いで抜いて切った。
その日は寝られる訳もなく、朝まで起きていた。
※
次の日、Yは学校に来ていた。俺は早速昨日の件について話した。
意味不明がって挙句の果てに俺のことを尊敬してきた。
少し安心して、通学の帰りに某携帯ショップに行こうと思ったんだが、また登録していない番号から…今度は電話があった。
俺は何も喋らずに、取り敢えず録音ボタンだけ押して出た。
そのまま5分くらいして勝手に切れたので、急いで某携帯ショップまで行った。
色々と事情を店員に話したんだけど、『文字化けしただけじゃん、何言ってるのこいつ?』状態。
一旦間を置いて、
「取り敢えず、修理に出してみましょうか?」
と店員が切り出してきた。
俺はそのまま流されそうになったが、急に電話の事を思い出し、
「あ、ちょっと待ってください」
と大きな声を出してしまった。
あの時は他のお客さんの目もあって恥ずかしかったな…。
取り敢えず、まずはスピーカーに繋いで聞いてみることに。
聞こえてきた内容は鮮明で、よくあるパソコンの電子音なんだけど、結構人の声としても認識できる程の鮮明な感じで、
「ゆうくんはどうしたの? ゆうくはどうしたの? どーしたの~? どー…」
ここで切れた。絶句する俺と店員。
店員は凄く焦った顔をして、
「すいませんが、これはあなたの友人の方ですか?」
俺はとっさに焦ってまた大声を出してしまった。
「こんな友達いませんよ!いまの明らかに機械音だったじゃないですか!」
「でも、こんなことで修理っていうのもおかしな話で…」
「取り敢えず、お願いします!ウイルスかなにかだったらホッとするんです!それだけでいいですから」
「…」
店員は少しの沈黙の後、
「では、こちらで預からせて貰いますので、修理する間の代替機種を持ってきますね」
と言って代わりの携帯の手続きをした。
※
その後、俺は落ち着いて家に帰り、Yにメールで「テスト~届いた~?」という感じのメールを送信した。
あいつは今日絶対返信するとまで言っていたので、3分くらい携帯の前で待っていた…。
…届いた!!!
ちゃんと「届いたぜ~」と返って来た。
凄くほっとして、俺はまた返信した。
人間状況が変わるとここまで安心するのだなあと思った。
だがその後、とんでもないYのメールが俺の携帯に来た。
内容はこうだ。
「おい、お前の下の名前○○だよな…あの掲示板に○○様へ、別別別…って書いてあるぞ?」
もうなんか俺は泣きそうだった。
それからすぐまたあの番号から電話がかかって来た…。
すかさず俺は録音ボタンを押して聞かないようにした。
次の日にそれを聞いた時、俺は聞かなきゃよかったと思った。
機械音声で、
「決まりだからあー決まりだからあー」
無意味に怖かった。なんで俺なんだよ…。
もう精神的にも耐えられなかった俺は、次の日Yにしっかり俺の書き込みの内容を見せて貰った。
本当にあった…。もう耐えられない…。
あのサイトで動画を見てしまったからだろうか、それとも書き込みをしたから…。
今度は御祓いに行こうと思っている。