しがみついて

hdr-photography-nature-scape-sea-2866345-2560x1600

3年前、家族でI県の海岸にあるキャンプ場に遊びに行った。キャンプ場は崖の上にあり、そこからがけ下まで階段で下りると綺麗な砂浜があった。

私達の他にもたくさんキャンプに来てる人がいて、その砂浜自体も名所なのかたくさん車で乗り付けて来ている、とても人の多い場所でした。

弟は当時中学2年生、反抗期だったのかこの家族旅行にも参加したくないとゴネていたが父が無理矢理に車に乗せて、キャンプ場まで連れてきた。

皆で海で泳ごうという段になっても、私や兄とは別れて、崖の真下の岩場や少し沖の遊泳可能範囲に浮いてるブイの所まで一人で泳ぎにいっていました。

正午辺りから泳ぎ始めて、一時間程経った頃、沖のブイの所で弟が何やら叫んでいた。ゴムボートで弟に近づくと段々ブイにしがみついて、顔を真っ青にしてガクガク震えている様子が見えてきました。

変だなと思い、ボートを漕いで弟に近づきながら聞いてみた。

「何してんのー? 足でもつったの?」

「……人っ!人が!腕ひっぱって!」

「人?…誰かに悪戯でもされたん?」

「ぎゃー!…子供!服着てるっ!」

言ってる事がさっぱりわからない。とりあえずブイにしがみついてる弟をボートの上に引っ張り上げた。

よく見たら弟の左腕二の腕の辺りから結構な量の出血が。弟にその場で話を聞こうとしても「人が人が…」とずっとブルブルしていたのでとにかく岸まで連れて行った。

崖上のキャンプ場まで兄に担いでもらってテントに休ませ、簡単な腕の手当てをした。傷口自体は2センチ程だったが、その傷は腕を貫通していた。少し落ち付いた所で弟に再度話を聞いた。

ブイにつかまって沖から海岸を見てぼーっと浮いてたら、同じように離れたブイの辺りに浮かんでいる子供を見付けた

子供一人でこんな沖まで出て大丈夫なんかなと、思った途端何か嫌な雰囲気を感じてすぐに目を逸らした。

弟曰く「何かよく分からんけど、絶対目を合わせたらダメだ。気持ち悪い、死ぬ!」と思ったそうな。

目を逸らした途端、その嫌な雰囲気がどんどん弟のところに近づいてきた。

目を開けたらまた子供を見てしまう、早く逃げないとこの嫌な雰囲気に追いつかれたら死ぬ気がする。

しかし、弟は怖くて泳いで岸まで行く事が出来ず、ブイにしがみついて必死に岸近くで遊んでいた私達に助けを呼んでいたんだそうだ。

私の声が聞こえるまで終始目を瞑っていた弟が、私の声に返事をした瞬間目を開けた時、

「俺の左腕に、顔が半分溶けてる子供がしがみついてたん。指が腕にめり込んだんだ。髪の毛がべったり俺の体にくっついてて巻き付いてて、あのブイがなかったら俺死んでた」

弟の体をボートに引き上げた時は、そんな髪の毛はついていなかったし、腕の怪我は貫通していた。

だからブイにくっついて浮かんでる時に寝てたんだろと、その話をまともに相手にしなかった。

腕の傷は、稀に潜水服とかを貫通する程鋭い体を持った魚がいると聞いた事があったのでそれじゃないか、という事でまったく弟の話を夢扱いにした。

キャンプ場から帰って2週間、弟の腕の傷は一向に良くならず、それどころか膿んで物凄く腫れあがってきた。

医者に行って念の為にレントゲンをとると、どうやら傷口の中に何か異物が入っていて、それが原因で膿んでいるらしい。簡単な手術で摘出すればすぐに治るとの事だったので、すぐに手術をしてもらった。

「異物は全部取り除きました。これで怪我も治るでしょう」

「先生ありがとうございました」

「…つかぬ事を聞きますが、この傷はどうやってつきましたか?」

「…どうかしましたか?」

「いえ、中に入っていた異物なんですが…」

そういってお医者さんがバッドに乗せてもってきた「弟から腕から摘出した異物」は「たくさんの長い毛の塊」と「引き剥がしたような生爪」でした。

その後、弟は特に何事もなく過ごしていますが、海には絶対行きたがりません。

弟の言った子供の事は今でも信じられませんが、弟と一緒に医者で見た血に塗れたあの髪の毛の塊と生爪を思い出すと、今でも背筋が寒くなります。

棲家

9歳の時引っ越した私の家には何かが居た。 主に私の部屋で、金縛りはしょっちゅう起きるし、色んな人の声もする。 壁の中からだったり、寝ている自分の上や枕元、ベッドの下からなど…

病室

盛り塩

俺が足を怪我して入院していた時、俺より早くから入院していた奴と仲良くなった。 ある日、消灯後に喫煙所でダベっていると「あ~、部屋帰りたくね~」と言う。 俺と奴は病室が違う。…

中身はミンチ

Nさんは、鋼材関係の専門の現場作業員だ。 会社勤めではないが、色々と資格を持っているおかげで、大手企業の下請けや手伝いをやっている。 人集めを任されることもあるが、そんな時…

看護婦寮

これはまだ私が日本に居た時の話なので、10年くらい前のことです。もう既にその寮は取り壊されているし、かなりの年月も経っているので文章にしてみました。 未だに当時の細部まではっきり…

モニターに写る女

去年の夏の話です。 自分、配達の仕事をやっていて、最初に研修という形で先輩と配るんです。その時教えてもらったC先輩とはすぐに仲良くなり、飲みに行ったりしてました。 ある時、…

夜道

散々な彼女

高校時代の彼女H美の話。 H美の家は、少し長めの道路の中間ぐらいに位置していた。夜になると人影も車もまばらになる薄暗い道路だ。 ある時期から、大して人通りもないその道路で事…

ホテルの看板(フリー素材)

海外の幽霊ホテル

この前、ニュージーランドをバイクで旅したんだ。 南島にダニーデンという町があって、そこのユースホステルは幽霊が出ることで有名なんだ。 そこの建物は50年前まで病院だったらし…

峠

イキバタ

友人は「俺って社会不適合者だよね!」と笑いながらタバコを吸う。 現在高校生やり直し中の通称「イキバタ」さん。行き当たりばったりを略しての渾名らしい。 俺はもう卒業したのだが…

アケミくるな

僕は運送大手の○川でドライバーをしていました。 ある夜、○○工場内(九州内にあります)で作業中、どうにも同僚Sの様子がおかしいことに気が付きました。 Sは仕事中だというのに…

古民家(フリー写真)

庭にあるお墓

そんなに怖くないかもしれませんが、私の体験談です。 埼玉県のとある地域に住んでいるのですが、何代も前から住んでいる人たちの間に、ある習慣があります。 それにまつわるお話です…