子供にしか見えない

公開日: 不思議な体験 | 心霊体験

il_fullxfull.339873873

その友人親子は夕方に近くの公園まで散歩をするのが日課でした。

友人の仕事の関係上、いつも日暮れ前には帰宅していましたので、夕食ができるまでの間に4歳になる息子と毎日遊んであげていたそうです。

友人が言うには、その子は少し変わった所があるようでした。

初めて歩く場所で「ここは行きたくない」と歩道橋の前に座り込み、意地でも動かない事がありました。

根負けした友人は、仕方なく遠回りして横断歩道へ向かいましたが、その時に何気に歩道橋を見るとお花とビールが添えてあったり、前を走っている自転車に向かっていきなり指をさし「あっ!」と叫んだかと思うと、その自転車が転んだり。

友人はその子の不思議な何かに気がついてはいましたが、本人があまり意識をしないようにあえてその話には触れずに、幼稚園の友達の事や、毎日の出来事などを話しながら楽しい散歩を心掛けていたそうです。

そして問題の日。いつものように公園に遊びに行き、友人は公園のベンチに腰をかけ、タバコをふかしながら息子がジャングルジムや滑り台で遊ぶのをぼんやりと見ていました。

すると、そこに見かけない男性がやってきて友人の隣に腰を掛けました。特に何を話すわけでもなく、軽く会釈をしただけで2人は黙って座っていました。

ふと息子を見ると、息子は滑り台の上でじぃっとこちらを見ていました。さっきまでは夢中になって走り回っていたのに、食い入るように2人が座るベンチの方を見ているのです。

『なんだろ…?』友人はそう思いましたが、別段気にも留めずに時計を見ると、夕食にちょうど良い時間になっていたので、友人は手を振って子供を呼んだそうです。

しかし、息子は首を横に振ってこちらに来ようとしません。

『ん? またか…。今度はなんだろう…。まさかこの男性がお化け? そんな訳はないよな、霊感のまったく無い俺にもはっきり見えるんだし』

友人はそう思いつつも、その男性が本当にお化けじゃないかを確かめるために、さりげなく、しかしハッキリと確認したそうです。

『足はついてるな…。実体感もあるし。…気のせいか』

結局息子はこちらに来ないので、滑り台の所まで迎えに行き手を差し伸べたそうです。

「帰るよ」そう言いながら息子の手を取ったのですが、氷のように冷たくなっていた息子の手に、友人は一瞬ギクリとしたそうです。

公園の出口で振り返った時には、その男性の姿はなかったそうです。

息子と手を繋いだまま帰り道に向かっていると、その小さな手にギュっと力が加わったので友人はなんとなしに周囲を確認しました。

すると、前方の公園の角から先ほどの男性が歩いて来ます。道に迷ったようでキョロキョロと周りを見回していました。

そしてこちらに気が付くと、まっすぐこちらに歩いてきました。友人が軽く会釈をして通り過ぎようとしたところ、

「○○○駅はどちらの方向ですか?」

と話し掛けてきたので、行き方を教えてあげるとその男性は礼も言わずに走って行ったそうです。

その男性が現われてから、息子が力いっぱい手を握っていたのを友人は知っていました。

男性が去った後に気づいたそうですが、手は汗でびっしょりで、小刻みに震えていたそうです。

そしてその男性の姿が完全に見えなくなった時に、息子が言ったそうです。

「…ねぇパパ…。さっきのおじさん、どうして血だらけのおばさんと一緒なの?」

翌日の朝刊で、その男性が指名手配された殺人犯と知ったそうです。

関連記事

抽象画

息子を迎えに来ますからね

知人のおばあさんは我が強くて恐い人だけど、自分の母親の話をする時だけは顔つきが穏やかになる。その人から聞いた昔話が原因の出来事。 ※ そのおばあさんの母親(仮にAさんとする)は、お…

北アルプス(フリー写真)

呼ぶ声

先日、私と登山仲間の先輩とが、北アルプス穂高連峰での山行中に経験した話です。 その日は、穂高連峰の北に位置する槍ヶ岳から稜線を伝って奥穂高岳へ抜ける縦走ルートを計画していました。…

田畑(フリー写真)

尻切れ馬

これは大学生の頃、年末に帰省した時の体験談です。 私の地元はそこそこの田舎で、駅付近こそビルが多く立ち並んでおりますが、少し離れると田畑が多く広がっています。 私の実家も田…

油絵の具(フリー素材)

風景画の中の女性

心霊写真の話はよく聞くけど、風景画に霊が入り込む事もあるのだろうか。 定年退職後の祖父の趣味は油絵だった。 描いているものは人物画だったり、風景画だったり、祭事を描いたりと…

キャンプ場(フリー素材)

黒い石

大学時代のサークル活動で不思議な体験をした。 主な登場人物は俺、友人A、先輩、留学生3人(韓国、中国、オーストラリア)、友人Aの友達のアメリカ人、他は日本人のサークルメンバー。 …

ゼンゾウ

伯父が都内の西側にちょっと広い土地と工場の跡地を持っていたんだ。 不況で損害を被った伯父は、これを売りたがっていたんだよ。 と言っても伯父も金が無くてね。更地には出来なかっ…

夜道(フリー写真)

連れて帰ったもの

私が小学3年生の夏休みに体験した話。 私が住んでいた所は凄い田舎で、地域の子供会の恒例行事で七夕会があった。 七夕はもう過ぎているけど、要するに皆で集まって、クイズなどの出…

占い師

昔、姉夫婦と私と彼氏の4人で食事した帰りに『この悪魔!!!』って女性の叫び声が聞こえた。 声のする方向を見ると、路上で占いしてる女性が私に向かって指を差して『悪魔!!悪魔ああああ…

餓鬼魂

もう30年程前になるか、自分が小学生の頃の話。 当時の千葉県は鉄道や主要街道から少し奥に入ると、普通に林が広がっていた。 市内にはそう広くない林が点在し、しかも民家から距離…

渓流釣り(フリー写真)

一人で泳いでいる男の子

去年、梅雨の終わり頃に白石川へ渓流釣りに行った時の事。 午前4時くらいに現地に到着して準備を終えました。 そして川に入ろうとした時に、川の方から子供の声が聞こえるのです。…