エレベーターと失われた時間

エレベーター

今日、不思議な体験をしました。

仕事が早く終わったので、行きつけのスナックで一杯飲むことにしました。

スナックが入っている雑居ビルのエレベーターに乗り、いつものように胸ポケットに3,000円を入れて5階に着きました。

しかし、エレベーターを降りると、視界一面が真っ白でした。

壁、ドア、看板など、白くないはずの所まで真っ白だったのです。

『全店改装か?一斉引っ越しとかないだろう。ママも一言連絡くれてもいいのに』と思い、エレベーターに戻ろうとしたら、「チン」という音がしてドアが開きました。

すると、作業服を着た初老の男性が降りてきて、私を見て目を見開き、「何故、ここに居るんだ!どこから入った!」と怒鳴りました。

私は、エレベーターで上がってきたことを説明しましたが、「そうじゃないんだよ、ここはダメなんだよ」と言われました。

男性は携帯電話を取り出し、何か話した後、「ヒグスデンカデしてください」と言いました。

次の瞬間、ビルの前に立っていました。

確かにスナックがある5階にいたはずなのに、どうして外にいるのでしょうか。

時計を見ると23時半で、23時半なんてあり得ないはずでした。

胸ポケットを触ると、さっき入れた千円札が3枚入っていました。

あの初老の男性は一体誰だったのでしょうか。

そして、私はあの数時間、一体どこに居たのでしょうか。

関連記事

ランドセルの女の子

叔母さんのお守り

小学2年生くらいの時から、妙な光の玉を度々見るようになった。 家族にその話をしても嘘つき呼ばわりされるので、今度その光の玉を見た時は証人となる人を連れて来て一緒に見ようと頑張っ…

竹下通りの裏路地

今から5年前、当時付き合っていた彼女と竹下通りへ買い物に出掛けました。 祭日だったと記憶しています。どこを見ても若者だらけで、快晴の空の下、人混みを避けながら買い物を楽しんでいま…

お婆ちゃんの手(フリー素材)

牛の貯金箱

小学生の頃、両親が共働きで鍵っ子だった俺は、学校から帰ると近所のおばあちゃんの家に入り浸っていた。 血縁者ではないが、一人暮らしのばあちゃんは俺にとても良くしてくれたのを覚えてい…

彼の予見

昔付き合っていた彼氏の話。 当時高校生だった私は、思春期にありがちな『情緒不安定』で、夜中に一人で泣く事が多かった。 当時はまだ携帯なんて高嶺の花で、ポケベルしかなかったん…

小学校

途切れた記憶

私は小学3年の冬から小学4年の5月までの間、記憶がありません。 何故かそこの期間だけ記憶が飛んでしまっているのです。 校庭でサッカーをして走っていたのが小学3年最後の記憶で…

田舎(フリー写真)

魚のおっちゃん

曾祖母さんから聞いた話。 曾祖母さんが子供の頃、実家近くの山に変なやつが居た。 目がギョロッと大きく、眉も睫も髪も無い。 太っているのだがブヨブヨしている訳でもなく、…

田舎の風景

白ん坊

このお話の舞台は詳しく言えないけれど、私の父の実家がある場所にまつわるお話。 父の実家はとにかくドが付く程の田舎。集落には両手で数えきれる程しか家がない。 山奥なので土地だ…

山では不思議なことが起きる

この話を聞いたのはもう30年も前の話。 私自身が体験した話ではなく、当時の私の友人から聞いた話。 その友人は基本リアリストの合理主義者で、普段はTVの心霊番組や心霊本などは…

手伝うよ

私が通学する駅は自殺の多い駅だ。 そのせいか、電車の急停止が多い。 急停止が多いあまり、学校や会社に遅れても「電車が」「自殺があって」と言えば遅刻扱いにならず、受験は余った…

プラント・コロニー(長編)

いつものようにバイトをして、休憩室で飯を食ってたんだわ。 飯を食い終わってスマホを弄ってたら、頭がくらっとしてきた。 貧血かなーと思ってたんだけど、妙に意識だけはっきりして…