不可解な扉の向こう
幼い頃の私には忘れられない体験があります。それは幼稚園の頃、よく遊びに行っていた祖父の家で起きた出来事です。祖父の家は関東のどこか、田舎でも都会でもない中途半端な場所にありました。そこでは特にすることもなく、いつも外で遊んで時間を潰していました。
ある日、またしても退屈を感じて外へ出ようと家の玄関を開けた瞬間、驚くべきことにそこは夜でした。時間の感覚に混乱しましたが、何よりも驚いたのは、目の前の景色が全く異なっていたことです。
祖父の家の玄関前には普段、鉄の柵があるのですが、そこから外を見ると、工場のような場所が広がっていました。配管が無数に通り、大きな機械の稼働する音が響いていました。
恐怖を感じてすぐに家に戻ろうとしましたが、玄関のドアが何百年も使われていないかのように錆びついており、ドアノブも回りませんでした。焦った私は泣きながらドアを蹴りつけましたが、全く動かず、絶望的な気持ちになりました。
しかし、泣いていると突然ドアが開き、中から祖母が出て来て私を抱きしめてくれました。玄関先での大騒ぎに、両親や祖父、親戚や警察も駆けつけました。昼過ぎに家を出て以来、夜中の1時まで戻らなかったため、家族が警察に通報し、一同で探していたのです。
私は全力でその体験を説明しましたが、誰も信じてくれませんでした。結局、母には理解されずに叱られ、さらに泣くことになりました。
今でも正月に親戚が集まるとこの話が出ますが、あの日の出来事は今だに解明されていません。私にとっては永遠の謎となっています。