不可解な扉の向こう

工場

幼い頃の私には忘れられない体験があります。それは幼稚園の頃、よく遊びに行っていた祖父の家で起きた出来事です。祖父の家は関東のどこか、田舎でも都会でもない中途半端な場所にありました。そこでは特にすることもなく、いつも外で遊んで時間を潰していました。

ある日、またしても退屈を感じて外へ出ようと家の玄関を開けた瞬間、驚くべきことにそこは夜でした。時間の感覚に混乱しましたが、何よりも驚いたのは、目の前の景色が全く異なっていたことです。

祖父の家の玄関前には普段、鉄の柵があるのですが、そこから外を見ると、工場のような場所が広がっていました。配管が無数に通り、大きな機械の稼働する音が響いていました。

恐怖を感じてすぐに家に戻ろうとしましたが、玄関のドアが何百年も使われていないかのように錆びついており、ドアノブも回りませんでした。焦った私は泣きながらドアを蹴りつけましたが、全く動かず、絶望的な気持ちになりました。

しかし、泣いていると突然ドアが開き、中から祖母が出て来て私を抱きしめてくれました。玄関先での大騒ぎに、両親や祖父、親戚や警察も駆けつけました。昼過ぎに家を出て以来、夜中の1時まで戻らなかったため、家族が警察に通報し、一同で探していたのです。

私は全力でその体験を説明しましたが、誰も信じてくれませんでした。結局、母には理解されずに叱られ、さらに泣くことになりました。

今でも正月に親戚が集まるとこの話が出ますが、あの日の出来事は今だに解明されていません。私にとっては永遠の謎となっています。

関連記事

カップル(フリー素材)

恋人との思い出

怖いと言うより、私にとっては切ない話になります…。 私が高校生の時、友達のKとゲーセンでレースゲームの対戦をして遊んでいました(4人対戦の筐体)。 その時、隣に二人の女の子…

夜の工場

深夜の国道と消えた時間

昔、私は某電機機器メーカーの工場で派遣社員として働いていたことがありました。 三交代制の勤務で、その週は準夜勤、つまり17時から深夜0時30分までのシフトに入っていました。 …

亡くなったはずの役者さん

私は昔、ある役者さんの熱狂的なファンでした。 その役者さんが出ている作品を全て見る事は勿論、雑誌を買い集めたりと、私の生活は彼と共にありました。 しかし役者さんは、ある日病…

夜の駅(フリー素材)

地図に無い駅

その日、彼は疲れていました。 遅くまで残業をし、電車で帰る途中でした。 既にいつも使っている快速は無く、普通電車で帰るしかありませんでした。 その為いつもよりも電車で…

河原

時空の穴

この出来事は14年前に起こりました。私は多摩川の河原を散策していたところ、奇妙な穴を発見しました。その穴は草むらにあり、斜め下に向かって延びていました。何の気なしにその穴を進んでいく…

昔の電話機(フリー画像)

申し申し

家は昔、質屋だった。と言ってもじいちゃんが17歳の頃までだから私は話でしか知らないのだけど、結構面白い話を聞けた。 田舎なのもあるけど、じいちゃんが小学生の頃は幽霊はもちろん神様…

有名な家

もうかれこれ10年前の話。当時、まだ自分は9歳だった。 諸事情で祖母と二人暮らしをしていたが、小学生半ばの頃に母親とも一緒に暮らすことになった。 それまで祖母とは小さな漁師…

非常階段

数年前、職場で体験した出来事です。 その頃、僕の職場はトラブルつづきで、大変に荒れた雰囲気でした。 普通では考えられない発注ミスや、工場での人身事故が相次ぎ、クレーム処理に…

癒しの手

不思議なおっさん

自分が小学生の頃、近所で割と有名なおっさんがいた。 いつもぶつぶつ何か呟きながら町を徘徊していた人だった。 両親も含めて、奇妙な人だから近寄らない方が良いと誰もが言っていた…

廊下

迷宮と煙草

私は都内で雑誌関係のライターを担当しています。 多岐にわたるテーマの記事を手がけるため、日常は刺激に満ちていると言えるでしょう。 その中で、オカルト関連の記事は、読者から…