一瞬の異界体験

アパート

その頃、私は一人暮らしのアパートに住んでいました。ある日、母から頼まれた回覧板を隣の部屋に渡しに行きました。

手早く回覧板をポストに入れた後、自分の部屋に戻りました。しかし、ドアを開けるとそこは明らかに私の部屋ではありませんでした。部屋は別の何か別の世界のようでした。

しかし、ドアの番号を確認すると、間違いなく自分の部屋の番号です。不安を感じつつ、「こんばんはー」と声をかけてみました。

すると、見知らぬボサボサ頭のおじさんが「はーい」と返事をして、部屋から出て来ました。その光景に驚き、「間違えましたー」と慌ててドアを閉めました。

その後、再び部屋の番号を確認しましたが、書かれている苗字も隣の部屋も、間違いなく私の部屋と隣の部屋でした。

「あれぇ?」と思いながら再びドアをそっと開けてみると、今度はいつもの我が家の風景がそこには広がっていました。ボサボサ頭のおじさんの姿もありませんでした。

これが私がこれまでに経験した唯一の不思議な体験です。あの日見たものが何だったのか、今でも時々思い出しては、ぞっとします。

関連記事

ワープ

会社の後輩に聞いた、その子の友人(Aさん)のお話。 Aさんが小学生の時、積極的だったAさんは、休み時間に校庭で皆とドッジボールをして、チャイムが鳴ったので一番に教室に駆け込んで行…

インコ(フリー写真)

インコの証言

これはテレビ番組『探偵!ナイトスクープ』で取り上げられた実際のエピソードです。 依頼内容は、保護した迷いインコの飼い主を見つけて欲しいというものでした。 そのインコは「ピ…

癒しの手

不思議なおっさん

自分が小学生の頃、近所で割と有名なおっさんがいた。 いつもぶつぶつ何か呟きながら町を徘徊していた人だった。 両親も含めて、奇妙な人だから近寄らない方が良いと誰もが言っていた…

抽象画

娘と狛犬

5歳になる娘と散歩で立ち寄った神社でおみくじを引いた時、3回連続で凶が出た。 こんな事もあるのかと驚きながら家に帰ると、嫁が訝しげな顔で言った。 「それ、どうしたの?」 …

親子(フリー写真)

前世の母

うちは母子家庭だった。母ちゃんは地元のスーパーのパートさんで、一人で俺を育ててくれていた。 親父が何をしていた人だったかは知らないけど、会った記憶も無い。 気が付いたら古い…

家(フリー写真)

下に誰か来ている

うちの家は親父が製麺業を経営していて、親父は仕事上、朝の4時になると家を出て行く。 両親の部屋は1階、俺の部屋は2階にあった。 俺が中学生だった時のある日のこと。 …

小さな鍾乳洞

少し昔……と言っても15年以上前の話になる。 俺の地元には小さな鍾乳洞がある。 田んぼと山しかないド田舎だったので、町としても鍾乳洞を利用して観光ビジネスを興そうとしたらし…

幸福の妖精

リクルートスーツを見る季節になると、毎年思い出すお話。 俺は就職活動してた。バブル崩壊後の冷や水ぶっかけられた氷河期世代あたりだと思ってくれ。俺は理系で一応研究職希望だったけど、…

餓鬼魂

もう30年程前になるか、自分が小学生の頃の話。 当時の千葉県は鉄道や主要街道から少し奥に入ると、普通に林が広がっていた。 市内にはそう広くない林が点在し、しかも民家から距離…

秘密基地

サイキック少年

今から16年前、僕が小学4年生の頃の話です。 昔、秘密基地とか作りませんでしたか? 僕も友達(けんちゃん、としちゃん)と秘密基地を作り、学校帰りにいつもそこで遊んでいました…