イタズラ好きな何か

公開日: ほんのり怖い話

wallpaper373_640_1136

子供の頃、イタズラ好きな何かと一緒だった。

見えなかったから何かの正体は最後までわからなかったけど、イタズラ好きなやつだった。

例えば、俺が誰かと並んで座ってたり歩いてたりすると、よく隣の人の肩をトントンと叩いてた。巧いこと見てない隙を狙うので、大抵は俺が疑われた。

小学校3年生辺りで慣れた。

ただ、時計が狂うのは困り物だった。

電池式・家庭用電源・アナログ・デジタル問わず、身の回りの時計は月差15~30分はズレた。音楽を聴いてると、スピードが早くなったり遅くなったりした。CD聴いてると勝手に早送りとかするんで、一回「うるさいよ」って呟いたら、その瞬間に正常に戻ってちょっと笑った。

ドジなところもあった。

高校生の頃には、隣の彼女の肩をいつもの様にトントン叩いたが、振り向いた彼女が見たのはジュースを注ぐ為に両手が塞がってた俺。彼女はパニック。

外を歩いていて、いきなり後ろから引っ張られて立ち止まったら、目の前に花瓶が落ちたこともあった。高校を出て上京した時は、トントンのお陰で出来た友達がいた。トントンがきっかけで彼女も出来た。

20歳を幾らか過ぎた頃から、イタズラはなくなった。そのころ生きていれば一つ下の弟がいたと聞かされた。あれは弟だったのかな。

時計はもう狂わない。

関連記事

タクシー(フリー写真)

黄色いパジャマの子供

去年の暮れの事。 池袋のとあるレストランで会社の忘年会があった。 二次会は部署内で、三次会は仲間内での飲み会になった。 家路につこうとする頃には終電も過ぎ、タクシー…

教室(フリー素材)

M君の記憶

中学二年の終わりに引っ越す事になった。 引っ越しの前日、家の前を同級生のM君がブツブツ独り言を言いながら歩いているのを見つけた。 M君とは幼稚園から中学二年まで同じ学校で、…

エレベーター

ワープする部長

会社でのぬるい話をひとつ。 コンサル部の部長は時々ワープするらしい。 打ち合わせ中に他の場所で目撃されたり、出張中なのにかかってきた電話に出ていたりと、「瞬間移動できる」ま…

アパート

黒い同居人

ある日を境に、私の部屋に“黒い人影”のような存在が棲みつくようになりました。 おそらく、どこかで拾ってきてしまったのか、それとも偶然入り込んでしまったのか――とにかく、それは静…

機関車(フリー写真)

電車の幽霊

埼玉の三郷に操車場跡という所があります。地図にも載っています。 心霊スポットとしては途中のお化けトンネル(化けトン)が有名ですが、体験したのはその近くの建物です。 操車場は…

満月(フリー画像)

天狗

35年前くらいの事かな。俺がまだ7歳の時の話。 俺は兄貴と2階の同じ部屋に寝ていて、親は一階で寝ていた。 その頃は夜21時頃には就寝していたんだけど、その日は何だか凄く静か…

不敬な釣り人の顛末(宮大工11)

とある休日、久しぶりにオオカミ様の社へと参りに出かけた。 途中、酒を買い求めて車を走らせる。 渓流釣りの解禁直後とあって、道には地元・県外ナンバーの四駆が沢山停まっている。…

狐(フリー写真)

鼠の天麩羅

知人の劇団員が、地元の猟師さんの笑い話を元に劇を作ったことがある。 長くなりますが、よろしければ暇潰しにどうぞ。 ※ 元号が幾つか前の時代のお話。 木樵と炭焼きと、猟師…

和室(フリー写真)

回転する位牌

昔ニュースになったので、知っている人は知っているかもしれません。 一人暮らしのおばあさんが、マンションの一室で孤独死した。 死因は、ノイローゼが昂じて、弱った心臓が耐え切…

アマヒメ様

その山村には、奇妙な言い伝えがあった。 寛政年間(18世紀終盤)のある年、雲一つ無いよく晴れ渡った空から、にわかに雨が降った。 おかしな事もあるものだと村人が空を見上げてい…