本当の霊視

恋人(フリー写真)

とある心霊系のオフ会に参加した時の話です。

私は霊感がある(手品も上手い)Tさんの車に乗せてもらい、スポットを幾つか回りました。

不思議なのはその人の会話です。

話題が霊視になった時、Tさんは

「あれはコールドリーディングというテクニックですよ」

と言い切りました。

話によると、それは会話の中からどうとでも取ることが出来る曖昧な話をして、相手にその先を喋るように仕向け、ヒントを得て行くやり方。所謂インチキだと。

「じゃあ試してみましょうか?」

とニッコリと微笑みを浮かべ、Tさんは喋り始めました。

そして次々と、私の部屋の間取りと置いてあるタンスの位置や、カーテンの色を当てて行きます。

ただ確かに曖昧に語り掛け、私に正解を言わせているのが解りました。

「もうちょっと特別なことをしてみる?」

と、Tさんは妙なことを言い出しました。

私の手を、Tさんの手の上に乗せるように言ってきました。

運転の邪魔にならないタイミングで手を乗せると、Tさんはまた喋り始めたのです。

しかも話を引き出す今までの話し方ではなく、いきなり、

「君のお母さん…今のお母さんじゃなくて、生んでくれた方のお母さんの実家、H市のM町の方だけど、今でもご縁があるかな?」

私が二才の時に実母は他界し、五才で父が再婚。

実母の記憶は殆ど無く、今の母親を実母のように慕っていて、自分でも実母の事はすっかり忘れていました。

確かに実母の実家がH市であるのは知っていましたが、M町かどうかは知りません。

Tさんは続けます。

「来年結婚する前に、お母さんの実家に行ってみてくれんかな?

おじいちゃんとおばあちゃん…特におじいちゃんが会いたがっているよ」

私は後日、父にH市の住所を聞き(本当にM町でした)、彼氏と行ってみました。

私達は歓迎され、お祝いとして大金まで頂きました。

更におじいさんの方は病気を患っていて、もう長くないとも聞きました。

そこで、あの時Tさんが続けた言葉、

「庭の元々井戸があった位置で酒を撒いて、器に入れた塩と水を供えておいで」

を実行しました。

初めてのお庭でしたが、Tさんの言う通りの位置に井戸がありましたし、迷いませんでした。

それを境におじいさんは快方に向かい、元気な姿で結婚式にも来てくれました。

Tさんとはオフの後、二、三度会いましたが、結婚後は会っていません。

あの時、

「見えない縁の綻びを直せるのが本当の霊視ですよ」

と言ったTさんの言葉通り、今は幸せです。

関連記事

戦時中の校舎

戦時中の校舎

10年前の夏休み、母と一つ上の姉と共に母方の実家に遊びに行った。 そこは集落から少し離れた山の麓にあり、隣の家まで行くのに5分は歩くような場所だった。 当時、私たち姉弟の間…

眼鏡

眼鏡の思い出

祖父が生前、私たち家族には常に厳しい人でありながら、時折見せる優しさとともに存在感を放っていました。 彼が亡くなった後、家族として彼を失った悲しみが心の隅に深く残っていました。…

良い心霊写真

写真店のご主人から聞いた話ですが、現像した写真におかしなものが写り込む事は珍しくなく、そういったものは職人技で修正してお客さんへ渡すそうです。 このご主人ですが、一度だけ修正せず…

アパート(フリー写真)

好条件物件

まだ自分が大学在学中、あれやこれやがあって、気分を変えるため引越しをすることにした。 大学のそばにある不動産屋で、大学と係わりの強いおばちゃんに条件を提示しつつ、お勧めの物件につ…

田舎の風景(フリー写真)

掌を当てる儀式

この間、ずっと忘れていた事を思い出しました。 前後関係は全く判らないのですけど、子供の頃に住んでいた小さな町での記憶です。 他の五人くらいの子供と、どこかの家の壁にぎゅーっ…

綺麗に揃えられる靴

小学校の頃、近所にお化け屋敷と言われている家があった。 まあ、実際は屋敷という程でもない少し大きめな日本家屋なんだが、小学生の言うことだしな。 その日は両親共に帰宅が遅くな…

飲み屋街(フリー素材)

常連客

学生時代、叔父が経営する小さな小料理屋(居酒屋)で手伝いをしていた。 常連客の中に、70代のMさんという真っ白な頭の爺様が居た。 ほぼ毎日、開店時間の16時から24時くらい…

トタンのアパート(フリー写真)

訳あり物件のおっちゃん

半年ほど前に体験した話。 今のアパートは所謂『出る』という噂のある訳あり物件。 だが私は自他共に認める0感体質、恐怖より破格の家賃に惹かれ、一年前に入居した。 ※ この…

電話機

8時半の電話

私の会社に毎朝、電話がかかって来る。 それも朝の8時半、ぴったりに鳴る。 入社したてで電話番をしていた頃は律儀に電話に出ていた。 しかし電話に出ても何も言わず、暫く…

ろうそく(フリー写真)

評判の良い降霊師

実家は俺の父親が継いでいるが、実は本来の長男が居た。 俺の伯父に当たる訳だが、戦前に幼くして亡くなったのだ。 今で言うインフルエンザに罹ったと聞いたように記憶しているが、と…