本当の霊視
とある心霊系のオフ会に参加した時の話です。
私は霊感がある(手品も上手い)Tさんの車に乗せてもらい、スポットを幾つか回りました。
不思議なのはその人の会話です。
話題が霊視になった時、Tさんは
「あれはコールドリーディングというテクニックですよ」
と言い切りました。
話によると、それは会話の中からどうとでも取ることが出来る曖昧な話をして、相手にその先を喋るように仕向け、ヒントを得て行くやり方。所謂インチキだと。
「じゃあ試してみましょうか?」
とニッコリと微笑みを浮かべ、Tさんは喋り始めました。
そして次々と、私の部屋の間取りと置いてあるタンスの位置や、カーテンの色を当てて行きます。
ただ確かに曖昧に語り掛け、私に正解を言わせているのが解りました。
※
「もうちょっと特別なことをしてみる?」
と、Tさんは妙なことを言い出しました。
私の手を、Tさんの手の上に乗せるように言ってきました。
運転の邪魔にならないタイミングで手を乗せると、Tさんはまた喋り始めたのです。
しかも話を引き出す今までの話し方ではなく、いきなり、
「君のお母さん…今のお母さんじゃなくて、生んでくれた方のお母さんの実家、H市のM町の方だけど、今でもご縁があるかな?」
私が二才の時に実母は他界し、五才で父が再婚。
実母の記憶は殆ど無く、今の母親を実母のように慕っていて、自分でも実母の事はすっかり忘れていました。
確かに実母の実家がH市であるのは知っていましたが、M町かどうかは知りません。
Tさんは続けます。
「来年結婚する前に、お母さんの実家に行ってみてくれんかな?
おじいちゃんとおばあちゃん…特におじいちゃんが会いたがっているよ」
※
私は後日、父にH市の住所を聞き(本当にM町でした)、彼氏と行ってみました。
私達は歓迎され、お祝いとして大金まで頂きました。
更におじいさんの方は病気を患っていて、もう長くないとも聞きました。
そこで、あの時Tさんが続けた言葉、
「庭の元々井戸があった位置で酒を撒いて、器に入れた塩と水を供えておいで」
を実行しました。
初めてのお庭でしたが、Tさんの言う通りの位置に井戸がありましたし、迷いませんでした。
それを境におじいさんは快方に向かい、元気な姿で結婚式にも来てくれました。
※
Tさんとはオフの後、二、三度会いましたが、結婚後は会っていません。
あの時、
「見えない縁の綻びを直せるのが本当の霊視ですよ」
と言ったTさんの言葉通り、今は幸せです。