死者の夢
俺の友人Aは、小さい頃から長い休みになると毎回父方の田舎に一人で帰省していた。
Aが中学2年生の時、数日前から体調を崩して寝込んでいた爺ちゃんが、Aと叔母さん(A父の姉)にこんなことを言った。
「夜中に目を覚ますと、死んだ○○や△△たちが布団の横に並んで、みんなで睨めつけてくる。恐ろしい」
風邪のせいで怖い夢でも見たのだろうと、その場は二人で爺ちゃんをなだめた。
5日後、爺ちゃんは体調を悪化させて死んだ。
※
それから2年経ち、高校1年生の時。
盆前に両親より一人早めに帰省したAが、夜にコンビニから戻ると、21時過ぎには床に就いたはずの婆ちゃんの部屋からうめき声がする。
「どうした? 婆様」
と部屋を覗くと、Aの姿を見た婆ちゃんは泣きながら抱きついてきて、
「爺ちゃんたちが布団を囲んでジーっと睨んでくる」
と言い、また泣き出した。
2年前の爺ちゃんの話を思い出して少し怖くなったが、
「大丈夫、夢でも見たんだよ」
と落ち着かせ、婆ちゃんが眠りに就くまで傍に付いていた。
3週間後、婆ちゃんは脳梗塞で急逝した。
※
その年の冬、帰省したAが、従兄弟(A父の弟の息子)と遊んでいると、
「そういや昨日、すっげー怖い夢見てさぁ、死んだ爺ちゃん婆ちゃんと、他にも何人か見たことある人が俺の部屋の中に居てさ、みんなで睨んでくんのよ」
これはヤバイと思ったAは、従兄弟を連れて先祖の墓参りに行き、寺で経を唱えてもらった。
2日後、従兄弟は交通事故に遭い死んだ。
※
それ以後、Aは正月と盆に家族と共に帰省する以外は田舎に行かなくなった。
従兄弟が死んでから5年後、叔母さんから電話があった。
「Aちゃん、お爺ちゃんとお婆ちゃん、それにBちゃん(従兄弟)が亡くなった時のこと覚えてる?」
「亡くなった親戚の人達に睨まれたってやつですか?」
「そうそれ、叔母さんね…見ちゃったのよ」
「!?」
「それでね、怖いの我慢しながら睨んでる人たちをよーく見てみたんだけど、全部で9人くらいかしらね。
お父さんにお母さん(爺ちゃん婆ちゃん)Bちゃんに○○さんに△△おじさん…みんなうちの親戚の人なのよ。
でもね、一人だけ全然知らない人が居たの。
スーツを着た40歳くらいの男の人で、結構痩せた感じの人だったわね。
しかもその人だけ笑ってるのよ、ニタニタって…気持ち悪い感じで」
「叔母さん、あの…気を付けてと言うかその……」
「分かってるわよ。取り敢えず色々探してお祓いしてもらったり、事故にも気を付けるわ。
急な病気じゃどうしようもないけどね。
それじゃ、Aちゃんも気をつけてね…」
これが今から2ヶ月前の話。
お盆にも会ったけど、叔母さんはピンピンしていた。
お祓いに行った先では特に何も言われなかったみたいだけど、祓えたのかねぇ…。