今度は落とさないでね

公開日: 怖い話

湖のボート(フリー写真)

ある若いカップルに子供が出来てしまい、堕ろそうか悩んだ挙げ句、産むことにした。

しかしまだ若い二人には育てることが出来ず、相談した結果、その子を殺すことにした。

二人は夜中に湖へ行き、置いてあるボートに乗って真ん中辺りまで漕いで行った。

彼女は何度も「ごめんね、ごめんね」と言いながら、赤ん坊を湖にポチャンと落とした。

それから何年か経ち、そのカップルはようやく結婚することになった。

そして二人の間に女の子が産まれ、幸せに暮らしていた。

その女の子が4歳くらいになったある日、その子が突然湖に行きたいと言い出した。

父親は気が進まなかったが、あまりにしつこく言うので仕方なく親子三人で出掛けることに。

湖に着くと今度は「パパ、あれ乗りたい」とボートの方を指差して言う。

しつこくねだられ、しぶしぶボートを借りて湖の真ん中辺りに来た所で、女の子が「パパ、おしっこしたい」と言い出した。

仕方がないと思い、周りに誰も居ないのを確認して湖にさせようと娘を抱っこした。

両足を持って二人が同じ方向を向いていると、娘がくるっと振り返り、

「今度は落とさないでね」

と言った。

関連記事

神隠しに遭う子

神隠しに遭う子

小さな頃、私は「知的障碍があるのでは」と思われていました。 言葉や文字に遅れはなく、読み書きも問題はありませんでした。 しかし、人と目を合わせない、会話ができない、約束が…

真夜中の訪問者

私には父親が生まれた時からいなくて、ずっと母親と二人暮しでした。 私がまだ母と暮らしていた17歳の頃の事です。 夜中の3時ぐらいに「ピーー」と玄関のチャイムが鳴りました。 …

ふたりの母

ふたりの母 — 扉の向こうと現実のあわいで

これは、私がまだ小学校に上がる前の、夏の終わりに体験した不思議な話です。 ※ その日、私は母方の祖父母が住む田舎の家で、昼寝をしていました。 何度も訪れていたはずの…

アケミちゃん

夜の電車で出会ったアケミちゃん

大学に入学し、少しずつ友人ができ始めたある日のことだった。 夜の九時過ぎ、仲良くなった友人Aから電話がかかってきた。 「今、うちにBとCも来てるんだ。暇なら来ないか?」 …

夜の町並み(フリー写真)

夜道のいざない

去年の7月くらいに体験した話。 うちの母方の祖父が亡くなり、通夜と葬式のため親の実家の北海道へ行きました。 当日は祖父を神社まで運び、その夜は従兄弟や叔父、叔母とみんなでそ…

石段(フリー写真)

朽ち果てた神社の夢

二十年前から現在まで続く話。 俺は当時大学生で、夏休みに車で田舎の実家に帰省していた。 その時は、普段帰省時に通っている道とは別の道を通って行った。 見渡す限りの山や…

釘

恨みクギ

俺が若かった頃、当時の彼女と同棲していた時の話。 同棲に至った成り行きは、彼女が父親と大喧嘩して家出。彼女の父親は大工の親方をしている昔気質。あまり面識は無かったが、俺も内心びび…

ドルイド信仰

ドルイドとは、ケルト人社会における祭司のこと。「Daru-vid: オーク(ブナ科の植物)の賢者」の意味。 ドルイドの宗教上の特徴の一つは、森や木々との関係である。 ドルイ…

謎の通報者

警察の友人に聞いた話。 殆どの人は、事件や事故があった場合は110番すると思う。 例えば自殺者を見つけた時なんかも通報すると思うんだよね。 実際に殆どの自殺者は通報に…

教室(フリー写真)

余るプリント

この間久しぶりに会った、20年来の幼馴染から聞いた話。 幼馴染(A男)は、ある女子高で英語の教師を勤めていた。 Aはいつも英語を教えるクラスの生徒に配るプリントを校内のコ…