三つの墓標
俺の高3の時の生物の担当の話。
自分が実際に体験した訳じゃないけど、ある程度現場視点で話します。
先生は某国立大学の出で、その大学は山にあって、昔は基地として使われていたらしく、今も地下通路が残されているらしい。
その大学に伝わる噂の一つに、
「校内の中に三つの墓標があって、三つ目の墓標見た人は死ぬ」
というベタな噂があった。
当時、先生は新入生で、探検も兼ねて、噂の三つの墓標を友達と探すことになった。
三つの内の二つはキャンパス内の人達に大体知られているらしく、一つ目は増設工事か何かをしていて、作業用の足場から落ちて死んでしまった人の所。
二つ目は例の地下通路を探検していて、長時間そこにいて、酸欠で亡くなった人の所。
この二つは有名ということで、すぐに見つかったが、噂の三つ目の墓標は色々探し回っても結局見つからなかった。
それから日にちが過ぎて、その年の年末。
先生は教授の助手になっていて、あの噂のこともすっかり忘れていた。
自分の助手用の部屋でゴロゴロしていると、教授から一本の電話が入る。
「年末だし、部屋の大掃除でもしろ」
とのことだった。
同じ部屋で生活していたもう一人の助手は実家に帰省しており、部屋にいるのは自分一人だったが、渋々承諾。掃除に取り掛かった。
掃除も終盤に入って時計は4時を過ぎ、冬なので外はもう暗くなっていた。
本棚の掃除をするために本棚ををどかすと、あるものを見つけた。
ドアがあった。ノブに手をかけてみるがどうやら鍵はかかっていない。
『なんでこんなところに?』と最初は思ったが、すぐに納得した。
先生達の部屋は廊下を挟んで両側にあり、教授と助手の部屋で隣同士で繋がっているからだ。
全ての部屋が繋がっているとはいえ、別のちゃんとした入り口が一つずつあるはずなのに、いま目の前にあるドアの部屋の出入り口は鍵がかかっていて、立ち入り禁止になっている。
ここで先生は小耳に挟んだ一つの噂を思い出す。
それは、
「この部屋の教授が何かをやらかしたとかで追放された」
というものだった。
先生は好奇心と、武勇伝として語るためのネタを作るために、この部屋に探索してみることにした。
※
電気が点いているわけもなく、時間が時間ということで、中は真っ暗で何も見えない。
なので、懐中電灯を持ってくることにした。
部屋の中を照らすと、引越しのための荷造りされたものが放置してあるのか、ダンボールが大量に山積みになっている。
ダンボールを開けてみると薬品の臭いがし、液体の入ったフィルムケースが綺麗に並べて底に置いてあった。
透かしても何も見えないので蓋を開けてみると、ホルマリンの臭いがする。
臭いの原因はこれらしい。すぐに蓋をしてその箱を閉じる。
他の箱もいくつか開けてみるも、どれも同じ中身なので、箱を後回しにすることにした。
次に先生が向かったのは、更に隣の部屋に続くドアだった。
ここも出入り口は立ち入り禁止で鍵がかかっていたが、このドアは鍵がかかっておらず、入ることができた。
部屋の中は、さっきの部屋と同じように、ダンボールが大量に山積みされている。
思ったより何もなくて、ガッカリしかけて出入り口の方を見ると、ドアの足元に何かあった。
それを見つけた先生はおもむろに電灯で照らしてみる。
三つ目の墓標だった。
見つけてしまったということで、とりあえず友達に電話しようとした時、よく見ると石碑に「水子供養」と書かれていることに気がついた。
一気に寒気がし、急いでダンボールの中身をもう一度よく見ると、ダンボールの底にお札が大量に貼ってあることに気がついてしまった。
もうこれを見て先生は「うおわあああああ」と叫んで一気に部屋を飛び出したらしい。
お望み通り武勇伝ができた先生は、友達に酒の席でこの話をしたそうです。
ちなみに後日聞いた話によると、過去にその部屋の教授は人間の赤ちゃんを使って遺伝子の違法な研究をしていたらしく、それがバレて大学を追放されたとのことです。