テレアポのバイト

公開日: 怖い話

23_l

ちょっと前にテレアポのバイトをしていた時なんだけど。

インカム着けて通話しつつも、お互いの内容がなんとなく聞こえるくらい小さな事務所だった。

そこでバイト仲間の一人が妙なことになったんだよね。

俺は壁際で、隣はA(学生・男)って真面目な奴しかいないんで、その会話を聞き流しつつ『めんどくせー』とか思いながら、俺もリストに従って順番にノルマやっつけようとしてた。

インカムで塞がれてない左耳に

「はい…7月の…18日ですね…渋谷。はい、確実に」

ってAの声が聞こえてきて『アポ順調だなー、いいなー』なんて思ってたんだけど、その後、

「息が止まるまで何度も、何度も、刺す…はい…死ぬまで…逃がさない」

と聞こえてきた。

そして、急にAが後ろ向きに椅子ごとぶっ倒れたんだよね。

反射的に見たら白目剥いて泡吹いてて、女子も多い事務所だからパニック状態になっちゃって。

すぐに社員が救急車呼んで、Aは近所の病院へ運ばれたらしいけど、その後出勤してくることはなし。

テレアポで営業かけてたのは某CSのチューナーだし、刺すだの死ぬだの物騒なキーワードが出てくるのは常識的にあり得ない。

Aはどんなお客さんとどんな会話してるんだよ、と。

通話記録も残ってるはずだと思うんだけど、バイト先からは何の説明らしきものはなかった。

それから暫くして、飲み会の帰りの始発電車の中で偶然Aを見かけたんだよね。

Aはガラガラの車内の真ん中で突っ立ったまま、涎を垂れ流しながら恍惚の表情で笑っていて、見るに堪えなかった。

あの電話一本で何があったんだろう。

関連記事

巫女さん(伊勢神宮)(フリー写真)

巫女さんのバイト

姉の体験談。 近所の神社が祭りのために臨時で巫女のバイトを募集していた。 姉はそれに応募し、見事採用された。 主な仕事は祭りの時期の接客であったが、祭りの後も土日だけ…

高過ぎる電気代

ある新婚夫婦がマイホームを購入するため不動産屋を訪ねた。 その夫婦は、少し古いが希望に合う物件を見つけることが出来た。 そこは古い和風屋敷の一軒家。値段の割には良い物件。 …

夜の砂浜

夜の砂浜

昔、一人で海辺の町に旅行したことがある。 時期的に海水浴の季節も過ぎているため民宿には俺以外客は居らず、静かな晩だった。 俺は缶ビール片手に夜の浜辺に出て、道路と浜辺を繋ぐ…

運転注意

先日、父親が知り合いを近所の病院へ車で送った時の話。 その病院は市の中心部から少し離れたところにあり、ちょっとばかり丘の上にある戦時中からある大きな病院。 入り口まで着き、…

畑(フリー写真)

人面芋

兄夫婦の嫁さんが教えてくれた話。 兄嫁(仮名・K子さん)のお父さんは、昔から農家をしている人だった。 農家というのは、幼い頃からお手伝いをさせられるから大変だったと、K子さ…

教室(フリーイラスト素材)

先生の心当たり

小学5年生の夏休みが明けた9月1日。 始業式も終わり、久しぶりの友達との再会に『自分はどこへ行った』『何を見た』などの話に花を咲かせていると、真っ黒に日焼けした担任の先生が教室に…

廃墟

廃屋の歯の謎

高校生の頃の話です。実家で犬を飼っていました。弟が拾ってきた雑種犬です。 その犬を2年ほど飼っていると、家族の一員のように感じるようになり、私も時々散歩に連れていました。 …

爪を食べる女

最近あった喫茶店での話。 普通に時間を潰していたところ、隣のテーブルでなにやら物音。 カリカリカリという音。最初は特に気にもならなかったので本を読んでいたのですが、30分ほ…

ダム

迷い込んだ農家

以前付き合っていた霊感の強い女性から聞いた話。 「これまで色んな霊体験してきて、洒落にならんくらい怖い目にあったことってないの?」と尋ねたら教えてくれた。 俺が聞き伝えでこ…

千仏供養(長編)

大学一回生の春。僕は思いもよらないアウトドアな日々を送っていた。それは僕を連れ回した人が、家でじっとしてられない性質だったからに他ならない。 中でも特に山にはよく入った。うんざり…