兄の言伝
深夜に見知らぬ老婆から電話がかかってきた。相手は俺のフルネームも母の旧姓も知っていた。そして「あなたのお兄さんに頼まれた」と言った。…
深夜に見知らぬ老婆から電話がかかってきた。相手は俺のフルネームも母の旧姓も知っていた。そして「あなたのお兄さんに頼まれた」と言った。…
山あいの集落を担当する郵便配達員が体験した話。行き止まりの農道の奥に、毎月荷物を無言で受け取る老婆がいた。ある日、玄関前に見知らぬ男の人影が消え、帰り道に思いも…
漁師の俺が深夜の波止場で見た人影は、三ヶ月前に嵐で消えた仲間の健介にそっくりだった。倉庫に消えた影、空き缶、そして春先に上がった水死体——あれは何だったのか、今…
亡くなった祖母の家で見つけた、曾孫のために縫いかけの甚平。遺品整理のたびに進む縫い目と、漂う金木犀の香り。祖母が遺したものとは。…
遺品整理で買い取った古い鏡台を店に置いた翌日から、閉店後の店内で誰かが髪を梳く音が聞こえるようになった。娘が見たという「きれいなひと」の正体とは。…
家族旅行で訪れた古い温泉旅館。どこか懐かしいその場所で、私は湯けむりの向こうに誰かの気配を感じた。亡き祖母が残してくれた、温かな不思議の記録。…
長距離トラック運転手が深夜に泊まった国道沿いのビジネスホテル。快適な一夜を過ごしたが、二週間後に同じ場所を訪ねると、そのホテルは三年前に閉業していた。…
父が亡くなって初めての帰省。縁側に座ると、なぜか線香の煙のような匂いがした。母に話すと「今朝からここに誰かいる気がするんだよ」と言った。…
古い温泉旅館で夜勤バイトをしていた頃の話。深夜の館内巡回中、坪庭の池のそばに白い着物の女性が立っていた。声をかけようとしたその瞬間、彼女は忽然と姿を消した。…
一人暮らしのアパートで、勝手に洗濯物が干され、食器が洗われ、知らない食材が増えていく。誰かが私の部屋に入り込んでいる――それが誰だったのか、私はまだ答えを出せず…
深夜の温泉旅館で警備を務める男が、誰もいないはずの大浴場で繰り返し目撃した不可解な現象。湯気の向こうに見えたものは、今も説明がつかない。…
実家に帰省した夜、幼い頃よく遊んだ神社に立ち寄った。そこで一人の老婆に声をかけられた。彼女は、十年以上前に亡くなった俺の祖父のことを知っていた。…
静岡・牧之原の茶の集落では、留守番の日に雨が降ると必ず呼び鈴が鳴り、苗字を呼ぶ声だけが聞こえました。二十年後にずぶ濡れのおばさんが姿を見せた理由と、郵便受けに挟…
取り壊し寸前の屋敷を実測した日、鋼の巻尺は必ず突き当たりの二尺手前で止まりました。翌朝に写された間取り図の廊下は、それから十四日ごとに二尺ずつ伸びていきます。平…
家賃が相場の半分だった、元仕立物屋の古い借家。北側の四畳半で眠る私の壁の中から、毎晩、何かを数える声がした。慣れてはいけないと祖母に言われた矢先、枕の中から現れ…
大学写真部の夏合宿で泊まった、外房の網元屋敷の古い民宿。深夜、寝落ちした部員の枕元に、濡れた髪の女が正座していた。誰も動けないまま夜が明け、東京に戻って集合写真…
まだ誰もがカセットテープを使っていた頃、亡くなった叔父の遺品だという一本を借りた。深夜、録音が終わった無音に、波の音と、抑揚のない男の声が混じる。海に浮かぶもの…
旅先の県道で食あたりに倒れたとき、野次馬の中に四頭身の異様な女がいました。退院の日も病院の門に。以来、人ごみのたびに、無表情のその女が、決まって五十メートル先か…