終点の白いドーム
最終電車で眠り込み、目を覚ますと、終点は、真っ白なドームの駅でした。読めない駅名、灰色の人々、橙色の空。家にも、電話が、つながりません。私が、その異空間から持ち…
最終電車で眠り込み、目を覚ますと、終点は、真っ白なドームの駅でした。読めない駅名、灰色の人々、橙色の空。家にも、電話が、つながりません。私が、その異空間から持ち…
占い師に「長くは生きられない」と告げられました。左手を握る、日本のものではない何か。動かないはずの左手でチェロを弾く夢と、肩にそっと置かれる手。予言の年月を越え…
幽霊より、生きている人間のほうが怖い。九歳で出会った優しい常連客から、夜道の襲撃、そして抑揚のない声で同じ言葉を繰り返した車の男まで。犯罪者とばかり縁のある私の…
高校の中庭で、世界がぴたりと止まった、あの十秒間。視覚以外の五感がすべて消えたその時を境に、親友との関係も、座席も、自分の記憶までもが、少しずつずれ始めました。…
中学時代、変わった口癖を持つ友達がいました。ある夏の日、私の部屋に、見知らぬ故人の古い自伝が、ひとりでに現れます。そこに記されていた故人の口癖は、なぜか、その友…
仕事帰りに電車で寝過ごし、降りた駅は「ゆやみ」という見知らぬ無人駅でした。鳥居、濁った目の老婆、山に灯る提灯、そして手を引く男の子。帰宅後にいくら調べても、その…
目をつぶって三回まわると、私は知らない場所に立っていました。三歳で水族館、五歳で人のいない入り江、中学でひとりきりの四時間目の教室。あの入り江から持ち帰ったジャ…
昭和の終わり、神奈川県の駅ビルで起きた不思議な話です。階段もエスカレーターも使わず、決まった角を曲がるだけで三階から四階へ――再現できる「近道」、七分ずれる柱時…
母の四十九日を終え、五年ぶりに実家へ帰りました。書斎の机の引き出しにあったのは、去年私が贈ったカレンダーを切り刻んだ日付の紙片です。十三枚のうち、一枚だけが上下…
小樽の運河沿い、石造り倉庫の貸間に住み着いた黒い人影の話です。本を倒し扉を開けるイタズラ好きだと思っていたのに、四十度の熱で動けなくなった雪の夜、あいつは机から…
松山の商店街の裏、元銭湯の二階に家賃三万五千円で住んだ三年前の話です。風呂場の電球だけが切れ続け、夜の十時四十分になると壁が決まって三つ鳴りました。乾物屋のおば…
富山の八尾で風の盆が始まった夜、卒業以来一度も会っていない五人が、示し合わせもせずに同じ石畳へ揃った不思議な話です。輪になると足音だけが六つあり、半年誰も触れて…
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