タグ: 不思議な話

帳場の椅子に掛けた白い布

祖父から継いだ宿場町の旅籠には、帳場の椅子が一脚あり、俺が生まれる前から白い布がかぶせてあった。布を取るな、動かすな、座らせるな。祖父の最期の言葉の意味を、俺は…

53年後に帰還した爆撃機

終戦間際に消息を絶った一機を、祖父は五十三年間、旧滑走路の端で待ち続けました。霧の夜に響いた発動機の音と若いままの声、残された航空時計の針が指す時刻。整備員だっ…

猫を抱えた子が追い抜いた夜

記録的な大雨で半鐘が鳴った晩のことです。藍色の着物を着た裸足の猫を抱えた子が、百段の石段を誰よりも速く駆け上がっていきました。町じゅうの者がその姿を見ているのに…

33年間

火山の噴火で地中に沈んだ村の跡で、井戸を掘っていた私の祖先が、古い屋根の下から響く音を聞いた話です。三十三年ぶりに掘り出された二人の生き残り、記録と合わない人数…

ヤマノケ

息子と二人で出かけたキャンプの帰り道、近道に選んだ林道でエンジンが止まった夜の話です。闇から跳ねて近づく白いもの、土地でヤマノケと呼ばれる山の怪異、そして息子の…

失われた時間

高熱の地下鉄で記憶が途切れ、気づくと一年後の見知らぬ街に立っていました。染めた髪、知らない服、一文字だけの連絡先、そして見知らぬ鍵。失われた一年をめぐる、この不…

黒目

古い文化住宅の共同玄関に置かれた、一台の古い乳母車。眠る赤ん坊の目には、白目がありませんでした。数十年後、母の記憶とまるで食い違う、この不思議な話を、当時のまま…

二月十一日の予言とイヤリング

仙台の終電後、雨宿りをした軒下で出会った、傘も持たず濡れていない紳士。彼が語った予言は半年で次々と当たり、手には片方だけのイヤリングが残された。二月十一日の午後…

みおちゃんの未来

小学三年生の夏の夕方、いちばん仲のよかった親友のみおちゃんが言いました。今日の私はほんとうは四十歳なの、と。意味も分からず別れて四十年、自分が四十歳になった朝に…

不思議な森

不思議な話。底なし沼を埋めた土地に建つ団地、その裏手の古い防風林には、踏み込むと時間が狂い、人の姿が消える暗がりが点在していました。肝試しで消えた少年が見たもの…

ほよよの本

中学時代、変わった口癖を持つ友達がいました。ある夏の日、私の部屋に、見知らぬ故人の古い自伝が、ひとりでに現れます。そこに記されていた故人の口癖は、なぜか、その友…

ゆやみという駅

仕事帰りに電車で寝過ごし、降りた駅は「ゆやみ」という見知らぬ無人駅でした。鳥居、濁った目の老婆、山に灯る提灯、そして手を引く男の子。帰宅後にいくら調べても、その…

薄い壁の向こうで鳴る鈴

築四十年の安アパートに越して三日目の夜のことです。薄い壁の向こうから、低い声が聞こえてきました。リン、リリン。鈴を真似たようなその声は、月に一度だけ、壁に口を押…

ため池の跡に建った家

瀬戸内の窯業の町で、大きなため池が埋め立てられ、広い更地になりました。ため池の跡は絶好の遊び場でしたが、地元の子は誰も真ん中へは行きません。真ん中まで走っていく…

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