タイムカプセルの手紙

公開日: ほんのり怖い話 | 不思議な体験

桜の木(フリー素材)

俺の知り合いの超霊感体質の女性(42歳)から聞いた不思議な話。

事の起こりは彼女が中学三年の卒業前まで遡る。

卒業を間近に控えていた彼女のクラスでは、卒業記念にとクラス全員で未来の自分に宛てた手紙を書き、校庭の桜の木の下に埋めたそうだ。

時は流れ、彼女が30歳の時。

中学当時の旧友が集まる同窓会があり、その時に彼女は他のクラスメイト達に、卒業前に埋めたタイムカプセルの事を

「覚えてる? 懐かしいよね!」

という感じで聞いてみた。

ところがその場に居た全員が

「はあ? お前何言ってんの? そんな事してないだろ」

とタイムカプセルの存在を全否定する。

彼女としては自分の記憶に確信があったし、他のみんなが覚えていない事の方が不思議だったので、その場では

「絶対にタイムカプセル埋めたよ!」

と言い張ったのだが、やはりみんなの記憶にはそんなものは存在していない。

まあ、そんなカプセルの存在など実生活では何の影響もない訳で、結局その話は流れてしまったそうだが、彼女は一人その存在を確信していた。

確かにあの時、校庭のあの場所に埋めたのだ、と。

ただ、彼女自身が未来の自分に宛てた手紙にどんな事を書いたのかだけは、どうしても思い出せなかった。

更に時は流れて10年後。

彼女が40歳の時に、その母校の中学校では校舎の増築工事が行われる事になった。

新校舎が建設されるのは、彼女の記憶にあるタイムカプセルを埋めた場所。校庭に植えられていた桜の木のある場所だった。

あの木を切ってその上に校舎を建てたら、カプセルは二度と取り出せない。

彼女はそう思ったのだが、どうする事も出来なかった。

ところが工事の進捗に合わせて、そのタイムカプセルが工事関係者の手によって発見されたのだ。

早速、同窓会名簿を通じて当事者たちが母校に集結した。

彼女以外のクラスメイトは、彼女が30歳の時の同窓会でタイムカプセルの事を話したのは覚えており、

「何でお前だけ覚えてて、他のやつの記憶には無いんだ?」

と不思議がりはしたものの、取りも直さず各々自分の手紙を開封して読んだそうだ。

その時、クラスメイトの中で二十歳の若さで夭折したY君という男子生徒の手紙を、担任だった先生が代わりに開封したところ、その場が凍り付いた。

そして更に、彼女が自分に宛てて書いた手紙を他のクラスメイトたちに見せた時、その場に居た全員が顔面蒼白になった。

Y君の手紙

「このカプセルはみんなが二十歳になった時、その存在が記憶から消え去るだろう。

そしてその20年後に再び思い出される。しかし俺は二十歳で死んでいるのだ、イエイ!」

彼女の手紙

「40歳の私へ。私は他のみんながカプセルの存在を忘れたとしても、私一人だけは絶対に忘れない。やったね!」

予言通り二十歳で亡くなっていたY君。また、死んだY君の手紙に呼応するかのような彼女の手紙。

その手紙は書いた当時、各々が家で書いて封をし持ち寄ったものだし、彼女とY君は示し合わせた訳でもなく、お互いの手紙の内容を知っていた訳でもない。

そして手紙を書いた彼女自身でさえ、自分がそんな事を書いていたという記憶が欠落していたそうだ。

一同、不思議な事もあるものだと妙に感心した様子。

担任の先生は

「これは本当に言霊の力だなあ。書いてあることが現実になっている」

と宣ったそうだ。

実は彼女の母校であるこの中学校があった場所には戦時中、大きな病院が建っていたとの事で、空襲で学徒動員の生徒たちが何十人も犠牲になった場所でもあった。

そのため、校内には慰霊碑まで建っているという曰く付きの土地。

実際、霊感が強い彼女は在学中に何度も校内で心霊体験をしたとの事だ。

関連記事

姪っ子に憑依したものは

高校生の夏休み、22時くらいにすぐ近所の友達の家に出かけようとした。 毎日のように夜遅くにそこへ出かけ、朝方帰って来てダラダラしていた。 ある日、結婚している8歳上の姉が2…

竹下通りの裏路地

今から5年前、当時付き合っていた彼女と竹下通りへ買い物に出掛けました。 祭日だったと記憶しています。どこを見ても若者だらけで、快晴の空の下、人混みを避けながら買い物を楽しんでいま…

知らない女の子

東日本大震災での被害はほとんどなかったものの、津波で水をかぶった地域。 地震発生後、町内で一番高いところにある神社に避難していく途中、見慣れない女の子が猫を数匹抱えて走る姿を数多…

ニワトリ

6月のある日の夕方に家に居ると、外出中の母親から電話がかかってきた。 かかりつけの病院に行って母の代わりに薬をもらって来てくれという内容だった。 俺は家を出て徒歩で病院に向かった。…

運命(フリー写真)

運命

その日は仕事で遅くなり、終電に乗って家へ帰ることになった。 駅に着き、改札を出て家へ向かって歩き始めると、駅前広場の片隅に何人か集まっていた。 よく見てみると、集まってい…

雪(フリー写真)

片道の足跡

北海道は札幌に有名な心霊スポットの滝がある。 夏場などは、夜中なのに必ずと言って良いほど駐車場に車が数台停めてあって、若い声がきゃーきゃー言っているような有名な場所。 ※ 当…

金縛り中の他者的視点

以前、一度だけどうにも奇妙な体験をしたことがある。 金縛りというものは多くの人が経験してると思うが、あれは脳の錯覚だ。 本当は寝ているだけなのに、起きていると脳が勘違いをし…

忠告

先日事故で意識不明、心肺停止状態で病院に運ばれた時、気が付くと処置室で自分が心臓マッサージをされているところを上から見ていたんです。 これが幽体離脱というやつだなと解って、自分の…

親子(フリー写真)

前世の母

うちは母子家庭だった。母ちゃんは地元のスーパーのパートさんで、一人で俺を育ててくれていた。 親父が何をしていた人だったかは知らないけど、会った記憶も無い。 気が付いたら古い…

良い心霊写真

写真店のご主人から聞いた話ですが、現像した写真におかしなものが写り込む事は珍しくなく、そういったものは職人技で修正してお客さんへ渡すそうです。 このご主人ですが、一度だけ修正せず…