お爺さんとの絆

犬(フリー写真)

向かいの家の犬が息を引き取った。

ちょうど飼い主だったお爺さんの一周忌の日だった。

お爺さんは犬の散歩の途中、曲がり角で倒れ込み、そのまま帰らぬ人となった。脳出血だったらしい。

それから一年。その犬は主の来ない庭で、何を思って生きて来たのだろう。

お爺さんの最初の命日に、お爺さんの息子が犬を散歩に連れて行った。

気を利かせたつもりだったのだろうか、お爺さんが亡くなってからは違う道順を辿るようになっていたのに、その日は、お爺さんと犬が十年以上ずっと辿っていた散歩道を歩かせた。

お爺さんが倒れた曲がり角を通った時、犬はそこで急に立ち止まり、座り込んだ。

暫くそのままで居させてやったが、流石にずっと座っている訳にもいかず、息子さんは犬を引っ張ろうとした。

けれどもその犬は、そのまま眠るように息を引き取っていた。

飼い主とペットには、少なからず不思議な縁と絆が宿る。

多分、その曲がり角で犬はお爺さんに再会できたのだと、僕は思うのだ。

関連記事

教室(フリー素材)

M君の記憶

中学二年の終わりに引っ越す事になった。引っ越しの前日、家の前を同級生のM君がブツブツ独り言を言いながら歩いているのを見つけた。M君とは幼稚園から中学二年まで同じ学校で、…

消えた数時間

今日、変な体験をした。早目に仕事が終わったから、行きつけのスナックで一杯飲んで行くかと思い、スナックが入ってる雑居ビルのエレベーターに乗った。俺は飲む時に使う金を決め、…

天使(フリー素材)

お告げ

私は全く覚えていないのだが、時々お告げじみた事をするらしい。最初は学生の頃。提出するレポートが完成間近の時にワープロがクラッシュ。残り三日程でもう一度書き上げな…

前世を詳細に語る幼児

「前世」というものの概念すらないであろう幼い子が、突然それを語り始めて親を驚かせたという話が稀にある。米国では今、オハイオ州の幼い男の子が自分の前世を語り、それが1993年に起…

女性のシルエット(フリー素材)

イトウ

高校から現在にかけて、俺の周りをウロチョロする謎の同級生がいる。高一の時に言われたのが一番最初。夏休み明け直後の日だったのだが、いきなりクラスの奴に「イトウって知ってる…

山(フリー写真)

山に棲む大伯父

もう100年は前の事。父方の祖母には2歳離れた兄(俺の大伯父)が居た。その大伯父が山一つ越えた集落に居る親戚の家に、両親に頼まれ届け物をしに行った。山一つと言っても、子…

居間のブラウン管テレビ(フリー写真)

神様の訪問

小さい時は親が共働きで、一人で留守番をする事がよくあった。特に小学校の夏休みなど、日中は大体一人で家に居た。小学4年生の夏休みの事だ。トイレに行って居間へ戻った…

雷(フリー写真)

記憶の中の子供達

私は子供の頃、雷に打たれた事があります。左腕と両足に火傷を負いましたが、幸いにも大火傷ではありませんでした。現在は左腕と左足の指先に、微かに火傷の跡が残っているまでに回…

竹下通りの裏路地

今から5年前、当時付き合っていた彼女と竹下通りへ買い物に出掛けました。祭日だったと記憶しています。どこを見ても若者だらけで、快晴の空の下、人混みを避けながら買い物を楽しんでいま…

ショートカット

小学校の頃の体験です。私が通っていた校舎は4階建てでした。校舎の両端にそれぞれ階段があって、東階段と西階段と呼ばれていました。東階段部分の校舎は3階までしかなく…