お爺さんとの絆

犬(フリー写真)

向かいの家の犬が息を引き取った。

ちょうど飼い主だったお爺さんの一周忌の日だった。

お爺さんは犬の散歩の途中、曲がり角で倒れ込み、そのまま帰らぬ人となった。脳出血だったらしい。

それから一年。その犬は主の来ない庭で、何を思って生きて来たのだろう。

お爺さんの最初の命日に、お爺さんの息子が犬を散歩に連れて行った。

気を利かせたつもりだったのだろうか、お爺さんが亡くなってからは違う道順を辿るようになっていたのに、その日は、お爺さんと犬が十年以上ずっと辿っていた散歩道を歩かせた。

お爺さんが倒れた曲がり角を通った時、犬はそこで急に立ち止まり、座り込んだ。

暫くそのままで居させてやったが、流石にずっと座っている訳にもいかず、息子さんは犬を引っ張ろうとした。

けれどもその犬は、そのまま眠るように息を引き取っていた。

飼い主とペットには、少なからず不思議な縁と絆が宿る。

多分、その曲がり角で犬はお爺さんに再会できたのだと、僕は思うのだ。

戦闘機(フリー写真)

白いマフラー

俺のじいちゃんは昔、パイロットだった。 若い頃のじいちゃんの写真は、白のマフラーを巻いて格好つけていて、でも本当に格好良かった。 俺もじいちゃんみたいな戦闘機乗りになりた…

魂(フリー素材)

守護霊の助け

若い頃、友人のBさんと久々に会い、飲みの席で「本格的な占いをお互いしたことが無い」という話で盛り上がったことがありました。 酔った勢いで帰り道、幾つか閉まっていた占い場の中から適…

桜の木の神様

今は暑いからご無沙汰しているけど、土日になるとよく近所の公園に行く。 住宅地のど真ん中にある、鉄棒とブランコと砂場しかない小さな公園。 子供が遊んでいることは滅多にない。と…

飲食店(フリー素材)

身代わり

少し昔の話をする。 私の友人が飲食店の店長をする事になった。 その店に行きたいと思いつつなかなか都合がつかず、結局その店に行けたのはオープンから一ヶ月が過ぎようとしている頃…

雨(フリー写真)

涙雨

親父の葬式の時の話。 告別式の最中、心の中で親父に語りかけていた。 『親父、まだ上には行ってないだろ。側に居るなら蝋燭を揺らしてみてくれ』 すると壇上の蝋燭が激しく…

踏み入るべきではない場所

私がまだ小学校低学年の幼い子供だった頃、趣味で怖い話を作っては家族や友達に聞かせていました。 「僕が考えた怖い話なんだけど、聞いてよ」と、きちんと前置きをしてからです。 特…

満タンのお菓子

私の家は親がギャンブル好きのため、根っからの貧乏でした。 学校の給食費なども毎回遅れてしまい、恥ずかしい思いをしていました。 そんな家庭だったので、親がギャンブルに打ち込ん…

タクシー(フリー写真)

契約書の拇印

俺の親父の話を書きます。 親父はタクシーの運転手をしています。 夜中2時を過ぎた頃だったそうです。40代くらいの一人の男性が病院から乗って来ました。 行き先は違う近…

枝に積もる雪(フリー写真)

おじいさんの足音

母から聞いた話です。 結婚前に勤めていた会計事務所で、母は窓に面した机で仕事をしていました。 目の前を毎朝、ご近所のおじいさんが通り、お互い挨拶を交わしていました。 …

狐さん(フリー写真)

小さなかぎ裂き

戦後暫く経った頃、地方のある農村での話。 村で一番の旧家の跡取り息子が失踪した。 山狩りをしても、池を浚っても見つからない。 お金か女性がらみのトラブルかと思い、人…