すたかという駅

26_07_18_web

京都駅からJR線に乗っていて、長岡京で降りようと思ってたのに寝過ごして、起きたらちょうどドアが閉まって長岡京を出発するところだった。

仕方がないので折り返そうと次の駅で他の数人と一緒に降りた。こんな駅あったっけってくらい寂れた無人駅だった。駅員さんいないし、鈍い色の外灯はあるけど薄暗いし。

改札出たとこに大きな鳥居が見えた。

久しぶりにJR京都線乗ったもんだから、少し来ないうちに駅増えたのかと思いつつ電車待ったんだけど待てども来ない。携帯で電車の時間調べようと思ったんだけど、電波がよろしくなくて中々繋がらない。駅構内には時刻表が見当たらない。因みに駅の名前は「すたか」と看板に書いてあった。

一緒の電車から降りたおばあさんがまだ駅のベンチに座っていたから「すみません、次の電車の時間て分かりますか?」て聞いた。そしたらおばあさん「じきに来る」て一言。

とりあえずお礼言うと、おばあさん初めて顔上げて「タマヒメサマが泣いてるからゆっくりしてきい」て言ってた。続いて「ウゴは終わりの国は捨てろ」「チョウベエ」「キョウノ」「キリサメ」「ユスド」「マツリ」といった言葉。凄く聞き取りづらくて、これくらいしか思い出せない。ボケてんのかなぁと、とりあえず相槌うって聞いてた。

そのとき小学生くらいの子供が駅の中に入ってきて、こっち見て手振ってすぐにまた出てった。

その時にその子が何か落としたのが見えて拾いに走ったんだけど、もういなかった。落し物は龍だか蛇だかの刺繍されたお守りだった。

どうしようかと思ってたら、おばあさんが手招きして「渡しとくからばんばにおくれ」と言うので知り合いかと思って渡した。おばあさんはお守り受け取ると駅から出てった。

そのうち牛の声みたいな音が近づいてきた。低い、大きな音だった。また、いつの間にか近くの山にポツポツと明りがついてた。提灯みたいなのが一定の間隔で。山の全面に提灯が並んでた。

そしたらさっきのお守りの子が横に立っていた。「さっき落としたお守り、おばあさんに渡しといたよ」て言ったら、何とも言えない嫌そうな表情をした。

意味もわからず謝ったら、渋々ながら許してくれた感じで、今後は手を引っ張ってきた。

ついて行くと駅の外に出ちゃって「電車待ってるから戻らないと」て言うと「電車こない!こっち行って!」と道を指さされ更に引っ張られる。

子供なのに力強いなと思いながら引っ張られるがままに小走りでしばらく進んだ。

民家とか電柱並んでんだけど、どこも薄暗いし古ぼけた感じ。何分か歩き進むと橋について、その子供は「戻っちゃだめ!ばいばい!」だけ言ってどっか行っちゃった。

連れまわしてここから放置かよ、とちょっと憤りながらも橋の向こうの明るい方へ進んでみた。そしたらだんだんお店とか見えてきて最終的に阪急の長岡天神駅に着いた。

家に帰って調べたけど、すたか駅なんて存在しないよね?

関連記事

女性のシルエット(フリー素材)

この女になろうと思った

友達が経験した話です。 高校の卒業式に、友人Aは同級生で親友だった男Bに告白された(Aも男)。 Aはショックで混乱しつつも、Bを傷付けないよう丁寧にお断りしたそうだが、Bか…

草むら

茶室のような小さな扉

うちの近くに、高い草が生い茂る空き地がある。日が差し込みにくく、常に薄暗いその場所は、不気味な雰囲気を漂わせている。 そんな空き地は、小中学生にとっては絶好の肝試しスポットとな…

教室(フリー素材)

M君の記憶

中学二年の終わりに引っ越す事になった。 引っ越しの前日、家の前を同級生のM君がブツブツ独り言を言いながら歩いているのを見つけた。 M君とは幼稚園から中学二年まで同じ学校で、…

小さな鍾乳洞

少し昔……と言っても15年以上前の話になる。 俺の地元には小さな鍾乳洞がある。 田んぼと山しかないド田舎だったので、町としても鍾乳洞を利用して観光ビジネスを興そうとしたらし…

異世界での体験談(長編)

異世界とか霊界とか、信じる信じないではなく、当たり前にあるものだと思って生きてきました。 死んだおじいちゃんが出雲大社で修行していて、祈祷師のような事もやっていたから。 家…

学校の校庭(フリー素材)

逆上がりさん

小学生の頃、学校の七不思議が幾つもありました。 それはとっくに七不思議を超えていて、私が知る限り50個はあったのです。 その中に『逆上がりさん』という七不思議があって、当時…

空(フリー写真)

石屋のバイト

私は二十歳の頃、石屋でバイトをしていました。 ある日、お墓へ工事に行くと、隣の墓地に自分の母親くらいのおばさんが居ました。 なぜかその人は、私の働く姿を見守るような目で見て…

住宅街

深夜の訪問者たち

昨年の夏のある夜、我が家は月に二、三回、夜10時から11時頃にピンポンダッシュの被害に遭っていました。 最初は怖さを感じましたが、窓から見える犯人たちの後ろ姿は中学生か高校生の…

病院

病院の空白

私は2年前まで看護師をしており、今は派遣事務の仕事に就いています。看護師時代は17、18時間の長時間勤務が当たり前でした。 ある日の二交代勤務中、朝7時半に病院の通用口を通り抜…

沼(フリー写真)

そこなし沼にて

親父は教師をしており、俺は小学二年生まで教員住宅に住んでいた。 俺の家の裏は林になっていて、そこに『そこなし沼』と呼ばれる沼があった。 その周りではクワガタが沢山捕れるの…