今の死んだ人だよな

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この4月の第3土曜日のことなんだが、自分は中学校に勤めていて、その日は部活動の指導があって学校に出ていた。

その後、午後から職員室で仕事をしていた。その時は男の同僚がもう二人来ていた。

そしたら急に職員室のドアがガラガラと音を立てて開き、3月に転任した先生が「どうも」と言いながら入って来た。

でも、その先生は春休み中に自分の子供を連れて山スキーへ行き、立木に頭をぶつけ、恐らくその影響で一時間程後に尾根から転落して亡くなっているんだ。

葬式は内輪でやったので呼ばれなかったけど、自分は家にお線香をあげに行っているんだ。

こっちも「どうも」と言い返したら、その先生は「山滑りに行くのはいいよな。また行きたいな」と言った。

それから職員室の後ろに置いてある来客用のソファに背中から滑り込むような格好をして、反対側から立ち上がり、「じゃ」と言って出て行ったんだ。

その時、職員室にいた三人はしばらく沈黙し、ややあって自分が「今の死んだ人だよな」と言った。

「あーそうだよな」「すごいはっきりしてたな。生きてるときと変わらなかった」

こんな会話になったんだ。

ここで思ったことは、急だったせいもあってか全く怖く感じなかったこと。

明るい日中で他にも人がいたこともあるかもしれない。

ただ、『この人死んでるのにな』という違和感は強く感じた。

もう一つは、その人は謹厳な勤務態度だったので、休日であってもソファに滑り込むなんてことは生前は絶対にしなかった。

それが子供みたいな行動をしたのも変に思った。

とにかくこの一件があって、その場にいた三人は幽霊を信じるようになったんだ。

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