未来の自分から

公開日: 不思議な体験

10047

今から20年くらい前の出来事。

一人っ子だった俺は、幼稚園から帰ってくるとファミコンをするか家の目の前の公園で一人で遊ぶのが日課だった。

最初はどんな出会いだったかは憶えていないのだが、公園で遊ぶ時にはいつからか俺の遊び相手になってくれるお兄さんがいた。

お兄さんと言っても当時の俺からしたら「おっさん」であったが。実際の年齢は27〜28歳くらいだったと思う。

外見は少し変わっていて、女の子みたいなロン毛で服装もあまり見かけない感じ。顔もなんだか不思議な感じがした。

お兄さんはいつでも優しくて、ボール遊びをして遊んだり、ゲームの裏技とかも色々教えてくれた。

あと「お母さんを大事にするんだよ」とか「赤ちゃんが生まれたら、しっかり守ってあげるんだよ」とか、そんなような事をよく言われたのを覚えている。

小学校へとあがり、遊ぶ友達も沢山できた頃にはお兄さんの姿を見かける事はなくなった。

小学5年の夏休み。その日は友達と遊ぶ約束があったのだが、当時3才の妹の世話があったので出かけたくても出かけられない状況だった。

困ったなあと思っていると、妹はそのまま昼寝を始めたので、早めに帰ってくればいいか、と俺はそのまま出かける事にした。

家を出て正面の公園に目をやると、昔よく遊んでくれたお兄さんがこっちを見て手を振っていた。

特長のある外見のお兄さんだったし、昔と全然変わっていなかったからすぐに分かった。

「久しぶりだね!」とか「どこに行ってたの?」とか、他愛のない会話をした後、お兄さんは

「赤ちゃんが生まれたら守ってあげるんだよってお兄さん言ったよね? 今日は遊ぶの我慢して、お母さんが家にいる日に遊ぼうな」

と少し強い口調で言った。

俺はまだ子供だったし、お兄さんの言う事に不信感を抱く事もせずに素直に家に帰り、妹のおもりをする事にした。

家に帰り、妹の寝ているソファーを覗くと、妹は先程までは元気だったのに凄い汗をかいていて、明らかに熱が高かった。

俺はオロオロしながらも母が働くパート先へと電話をし、母に事情を説明した。

母の職場は割りとすぐ近くだった。母は早退し、10分程で帰宅するとそのまま三人で病院へ。

妹はあのまま放置していれば肺炎になって命も危ういところだったそうだ。

お兄さんに会ったのはそれが最後。

お兄さんの事については考えても考えても解らないのだが、最近一つだけ気になっている事がある。

それは、今の自分の外見があの時のお兄さんにかなり似ているという事だ。

今でも忘れられない不思議な体験でした。

関連記事

遊具

記憶の中の転校生

幼稚園の頃、同級生が交通事故で亡くなった記憶がある。しかし、月日が流れたある日、そのはずの同級生が転校生として私の小学4年生のクラスに姿を現した。 当時、幼稚園の同級だった数人…

雨(フリー素材)

天候を操る力

小学生の頃だったか。 梅雨の時期のある日、親友の友人という微妙な関係の子の家に遊びに行った。その親友と一緒に。 そこで三人でゲームなどをして遊んでいたら、あっという間に帰る…

夜の街並み

エレベーターの歪み

今日、信じがたい体験をした。 早めに仕事が終わったので、行きつけのスナックで一杯飲もうと思い、そのスナックがある雑居ビルのエレベーターに乗った。僕は飲むときの出費を決めておく癖…

コンサートホール

某コンサートホール

以前、某コンサートホールでバイトをしていました。その時の体験を話そうと思います。 初めに気が付いたのは、来客総数を試算するチケット・チェックの場所でした。 私たちはもぎった…

横断歩道

佐藤大樹は誰なのか

前世の記憶があると言っても、それは鮮明なものではない。 生まれた瞬間から過去の記憶を持っていたわけではないし、何か特別な力を持っているわけでもない。 ただ、ふとした瞬間に…

彼の予見

昔付き合っていた彼氏の話。 当時高校生だった私は、思春期にありがちな『情緒不安定』で、夜中に一人で泣く事が多かった。 当時はまだ携帯なんて高嶺の花で、ポケベルしかなかったん…

死臭

人間って、死が近づくと死臭がするよね。 介護の仕事をしていた時、亡くなるお年寄りは3、4日前から死臭を漂わせてた。 それも、その人の部屋の外まで臭うような、かなりハッキリした臭い…

きょうこさん

異界の名を呼ばれた日 ― きょうこさん

「これまで、いろんな霊体験をしてきたって言ってたけど、命の危険を感じるような、洒落にならないくらい怖い体験って、ある?」 ある日、ふとした会話の流れで、以前付き合っていた“霊感…

異界の夜

禁足の神社と小さな神主

夏の時期に体験した、不思議で、どこか気味の悪い出来事です。 それは今から3年前、私が21歳だった頃の夏。ちょうど8月の二週目のことでした。 大学に通うために上京していた私…

優しさを大切に

俺が小学校1年生ぐらいの時の話。 その頃、俺はおとなしくて気の弱い方で、遊ぶのも大体おとなしい気の合う子達とばっかり遊んでいた。 でも何がきっかけだか忘れたけど、ある時に番…