顔半分の笑顔

img_1

僕がまだ子供だったとき、ある晩早くに眠りに就いたことがあった。

リビングルームにいる家族の声を聞きながら、僕はベッドの中から廊下の灯りをボンヤリ見つめていたんだ。

すると突然、半透明の年老いた女の人が目の前に現れたんだ。

黄色く長いカールした髪の毛で、紫色の花のドレスを着ていた。

そして、なにより怖かったのが、顔を半分覆ってしまうほどの笑顔で、こっちをジッと見てきたことだったよ。

恐怖に駆られた僕は、なんとか叫ぼうとしたけれど声がでなくて、急いで布団をかぶって震えていた。

しばらくしたら、泣き寝入りしてしまったようだけど。

翌日、そのことを姉に話してみたら、それは守護霊だという答えが返ってきたけど、「そんなバカな」って思ったよ。

だって守護霊なら、あんな怖い笑顔を浮かべるはずがないからさ。

クラスメートに話してみたら、同じような不気味な笑顔を浮かべた人物を見かけた子が他にもいたんだ。

その子は、あの顔半分の笑顔を浮かべた10代の若い男を自宅の庭で見かけたらしい。

彼も怖くなって、すぐに家に駆け込んだってさ。

関連記事

夜の校舎

あんたがたどこさ

深夜23時。僕と友人のKは、今はもう使われていない、とある山奥の小学校にいた。 校庭のグラウンドには雑草が生え、赤錆びた鉄棒やジャングルジム、シーソーがある。 現在は危険と…

忌箱(長編)

これは高校3年の時の話。 俺の住んでた地方は田舎で、遊び場がなかったんで近所の廃神社が遊び場というか、溜まり場になってたんだよね。 そこへはいつも多い時は7人、少ない時は3…

死後の世界への扉

これは母から聞いた話です。 私の曽祖父、つまり母の祖父が亡くなった時のことです。 曽祖父は九十八歳という当時ではかなりの高齢でした。 普段から背筋をぴんと伸ばし、威厳…

考古学の本質

自分は某都内の大学で古代史を専攻している者です。 専攻は古代史ですが、考古学も学んでいるので発掘調査にも参加しています。 発掘調査なんてものは場合によっては墓荒らしと大差な…

不審な女性

10年程前の話です 姉が「ビデオを返してくる」と言って家を出て行ったのは夕方の6時半ごろでした。 季節は冬の始まりぐらいで、もう大分暗くなってきていました。 それから…

庭の地面

記憶に刻まれた「一度目の死」

物心がついた頃から、私はこう語っていた。 「僕は一回、死んだんだ」 幼い子どもの妄言と思われるかもしれないが、私は本気だった。というより、その“死んだ記憶”は今でも鮮明に…

玄関(フリー写真)

ただいま

俺が高校生だったある深夜、母が部屋に来て起こされた。 祖母が亡くなったということだった。 俺の実家は新潟県で、祖母は二年程前までは一緒に過ごしていたが、容態が悪くなってか…

行軍

爺ちゃんの従軍時代の話

子供の頃に爺ちゃんに聞いた話を一つ。 私の爺ちゃんは若い時、軍属として中国大陸を北へ南へと鉄砲とばらした速射砲を持って動き回ってました。 当時の行軍の話を聞くと、本当に辛か…

臨死体験

けっこう昔の出来事なんだけど、俺が小学生のとき臨死体験にあった。海水浴場で溺れて死にかけたことがきっかけだった。 家族で行った海水浴場で、俺がそこで泳いでいるときに突然足がつって…

狐の嫁入り

俺の実家は山と湖に囲まれた田舎にある。 小学校6年の時の夏休みに、連れ二人と湖に流れ込む川を溯ってイワナ釣りに行く事になった。 雲一つも無いようなよく晴れた日で、冷たい川の…