お告げ
私は全く覚えていないのだが、時々お告げじみた事をするらしい。
最初は学生の頃。
提出するレポートが完成間近の時にワープロがクラッシュ。
残り三日程でもう一度書き上げなくてはならない羽目に陥ったが、三日間ろくに睡眠も取らず、どうにか書き上げて提出に漕ぎ着ける事が出来た。
しかし既に限界を突破していた私は、家に帰るなりリビングでスイッチが切れた如く眠りに就いてしまった。
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暫くして目が覚めた時、何故か家族がまるで異様なものを見るような目で私を見ている事に気が付いた。
話を聞くと、リビングでそのまま突っ伏して寝ていた私はいきなり起き上がり、まずは父に向かって
「上の兄に連絡を取れ。体を悪くしている」
と言い、次は母に
「探している物は左の引き出しの奥にある。引き出しを外して見ろ」
と言い、次は兄に
「あの家はやめておけ。理由が知りたければ二軒隣の婆さんに聞いてみろ」
というだけ言ってまた眠ってしまったとの事。
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これだけならただ妙な寝ぼけ方をしたという話なのだが……。
翌朝、言われた通り電話をした父は、兄が心臓を悪くして昨夜救急車で運ばれたと聞かされ、母は言われた通りの場所から探していた保険の書類を見つけ、兄は買おうと思っていた中古の家が実は事故物件であったのを知ったそうだ。
偶然と言えば偶然なのだが、このお告げはその後も幾度かあり、それも全て的中というのが不思議で仕方がない。
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追記
一番オカルトらしかったのは、楽しみにしていた RPGゲームをようやく手に入れ、週末なのを良い事に徹夜までやっていた時の事。
睡眠も食事もろくにせずにやり込んでいたのだが、とうとう親に「いい加減に食事くらいしろ」と怒られ、渋々リビングに行った。
食事を待っている間に体力が尽き、スイッチが切れた。
椅子に座ったまま爆睡する私に「アホかこいつ」と両親が呆れた時、いきなり私はむくりと体を起こすと、誰も居ない方をじっと見つめ、何やらぶつぶつ言い出したらしい。
最後に一つ頷くと、私は母親の方を振り返り、
「今、ケンおじが来てたよ。悪いけど後は頼むって。明日、迎えに行ってあげて」
と言い、またテーブルに突っ伏して爆睡してしまったらしい。
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ケンおじというのは母の一番下の弟で、はっきり言ってろくでなし。
定職も就かずにブラブラしていた人だが、私には優しかったので大好きな親戚の一人だった。
既に何度かお告げを経験していた母は、すぐに近くに住んでいる叔母に電話し、翌日様子を見てもらうように頼んだらしい。
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結果は書かなくても判るかもしれないが、ケンおじは家で死んでいました。
酒で肝臓を悪くしていたせいか、血を吐いていたそうです。
一人暮らしだったため誰にも見つけてもらえず、叔母が行った時には既に死後何日か過ぎていたらしい。
これはきっと、なかなか見つけてもらえなかったケンおじが私に頼みに来たんだね…と言われています。