電車の幽霊

機関車(フリー写真)

埼玉の三郷に操車場跡という所があります。地図にも載っています。

心霊スポットとしては途中のお化けトンネル(化けトン)が有名ですが、体験したのはその近くの建物です。

操車場は上から見ると『芋』の形をしているのですが、その両脇を道路が走っています。

その東側(千葉側)の真ん中辺りの道路脇に敷地があり、奥まった所に真っ暗なビルが残っています。

敷地の入り口は柵がされており、建物は入り口を鉄板などで封鎖されています。

7、8階建てのビルなのですが、一番上の階辺りにぽつんと明かりが点いていて不思議でした。

そこは以前から窓から人が見ていたとか、写真を撮ったら窓から手が出ていたなどの噂を聞いていました。

自分達もそれを期待し、夜から見に行った訳です。

敷地に入ると色々な資材が置いてあり、プレハブもあったので、まだ何かに使っているようでした。

人が居た形跡があったため少し気が抜けたのですが、案の定、建物には入れません。

一緒に霊感のある奴も居たのですが、

「何も無いねぇ」

と言っていました。

建物の周りを一回りして車に戻ろうとした時、入り口の柵の脇に通路を見つけました。

そこは敷地の端っこから坂になっていて、ちょうど自分の真下のところからトンネルになっています。

坂の脇に回ったのですが、トンネルの奥は真っ暗で何も見えません。

何があるのだろうと思い覗き込んでいたら、ふと音が聞こえてきました。

「カタン…カタン…カタン…カタン…」

電車のレールの継ぎ目を車輪が超える瞬間の『あの』音です。

「ん? 何で音が? こんな所で?」

時間も時間だし、操車場は殆ど使われていません。

それに道向こうの操車場は高い壁で囲まれていて、電車の音など聞こえるはずがないのです。

それは一瞬の出来事です。深く考える間もなく横で叫び声がしました。

「キャー!」「うわー!」

「ん? どうした? 何でみんな逃げるの? え? 何か出たの?

え? え? 待って? 置いて行かないで~!」

自分も走り出しました。

霊感の無い自分は変なものを見た訳ではないし、怖い思いもありません。

でもみんな逃げるし、置いて行かれても困るんだけど…。

そう思いながらようやく車に辿り着き、発車させました。

「え? どうしたの? 何があったの?」

一緒に行った4人は黙っています。

「何だよぉ、教えてくれよぉ」

いつもの俺一人何も見れないパターンです。

「もういいよ!」

俺はふれくされて運転を続けていると、霊感のある女の子が話し出しました。

「電車が走って来た…」

「え? 電車? どこ? いつ?」

詳しく聞いてみると、自分が覗いていたのと反対側に資材が置いてあったようなのですが…。

その女の子が『あっ』と思った瞬間、自分の側に向かって電車が走って来るのが見えたそうです。

そうです。自分に聞こえた『あの』音は、電車の幽霊(と言うのも変ですが)の音だったようです。

その女の子も、幽霊はよく見るが電車のは初めて見たと言っていました。

これが初めての霊体験です。

怖くはないのですが貴重な体験でした。

関連記事

10円おじさん

10年程前に会った10円おじさんの話をします。 当時、高校を卒業したばかりで、仲間とカラオケに行きました。 一両や二両しかない電車の通る無人駅の傍にある小さなカラオケ店です…

刀(フリー素材)

霊刀の妖精(宮大工15)

俺と沙織の結婚式の時。 早くに父を亡くした俺と母を助け、とても力になってくれた叔父貴と久し振りに会う事ができた。 叔父貴は既に八十を超える高齢だが、山仕事と拳法で鍛えている…

女性のシルエット(フリー素材)

赤の他人

俺は物心付いた時から片親で、父親の詳細は判らないままだった。 俺は幼少期に母親から虐待を受けていて、いつも夕方の17時から夜の21時まで家の前でしゃがみ込み、母親が風呂に入って寝…

田舎の風景(フリー写真)

犬の幽霊

あれは小学6年生の頃、夏の盛りだった。 僕は母方の田舎に一人で泊まりに来ていた。 田舎のため夜はすることがなく、晩飯を食った後はとっとと寝るのが日課になっていた。 ※ …

2才児の直感

家の子は2才くらいまでは色々と見える子だった。 印象深いのは、20年ぶりくらいに中学の同級生が訪ねてきた時のこと。 その同級生は、昔は性悪で金の亡者だったが、金持ちと結婚し…

見えない恋人

大学生時代、同じゼミにAと言う男がいました。 Aはあまり口数の多い方ではなく、ゼミに出席しても周りとは必要なこと以外はあまり話さず、学内にも特に親しい友人はいない様子でした。 …

深夜のコンビニ

この話は、ある男がコンビニで深夜のアルバイトをしていた頃に起きた体験談である。 そのコンビニは、深夜になるとほとんど客が来なくなる。 俺は共にバイトをしていた大学の先輩と、…

抽象画

息子を迎えに来ますからね

知人のおばあさんは我が強くて恐い人だけど、自分の母親の話をする時だけは顔つきが穏やかになる。その人から聞いた昔話が原因の出来事。 ※ そのおばあさんの母親(仮にAさんとする)は、お…

太平洋戦争

大東亜トンネル

これは自分が大学生だった時の話だ。 当時やんちゃだった自分は、よく心霊スポットに出かけていた。 ある日、遊び仲間の友達が「すぐ近くに幽霊トンネルがあるらしい」と教えてくれた…

浅間神社の氏神様(宮大工4)

とある秋の話。 俺の住む街から数十キロ離れた山奥にあるA村の村長さんが仕事場を訪れた。 A村の氏神である浅間神社の修繕を頼みたいという。 A村は親方の本家がある村であ…