かわらけのお狐さん
公開日: 不思議な体験
小学生の頃に学校の畑を掘ったら、土の中から陶器の狐が出てきた。
真っ白のかわらけで出来た狐のお面みたいなもので、他にも沢山出て来た。
七福神や打出の小槌などの縁起物もあった。
当時はまだ小学生だったから『これはお宝だ!』と、気に入ったものを勝手に取って持ち帰った。
狐のお面は一つしかなかったが、掘り起こした私自身が手放さなかったのと、他の子が「釣り目で恐い」と言って嫌がったので、私はお狐さんを喜んで持ち帰った。
近くで見ていた先生も特に何も咎めなかった。
※
帰ってから暫くは大事に机の引き出しに入れておいたのだけど、中学に上がってからテレビで人形供養をしている様子を見て
『私のお狐さんも神社に納めた方が良いんじゃないか…』
と思い始めた。
そもそも、この畑に埋まっていたものは何なのか大人に聞いてみたが、よく分からないとの答えだった。
でも、地面に埋まっていたものなら、神社かどこかにお返した方が良いかもしれないということになった。
ちょうどこの時、家族で京都に旅行する予定があった。
狐なら稲荷神社が良いだろう、どうせなら総本山の伏見稲荷が良いのではと、旅行にかわらけのお狐さんも持って行った。
お狐さんが手元から無くなってしまうのは寂しかったけど、潮時かなとも思ったし、伏見稲荷に行くのは凄く楽しみだった。
※
旅行当日。
割れたりしないよう厳重にくるんだお狐さんをバッグに入れて、行きの新幹線で爆睡中の私。
その夢に茶髪のお兄ちゃんが出てきた。
夢の中で現実と同じく京都行の新幹線に乗っているのだけど、乗客が私とそのお兄ちゃんしか居らず、二人で向かい合せに座っている。
お兄ちゃんはジーパンに白いTシャツ、腕には紫色のリストバンドをしていて、茶髪で色が白かった。
茶髪のお兄ちゃんは困った顔で言った。
「あのさー、神社に行くのは良いけど、伏見はやめようぜ。
嬢ちゃんも、急に偉い人のところに行けって言われたら困るだろ?
俺、ずっと地元に居たいのよ。のんびりしてーの。な? 頼むよ」
お兄ちゃんの紫色のリストバンドは、お狐さんが割れないよう、ずっと引き出しの中に閉まっていた時から包んでいたものだった。
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京都に着いて伏見稲荷には行ったけれど、お狐さんを納めるのはやめて、神社の人に
「こういうものがあるのだけど、どうすれば良いですか」
と質問するだけにした。
神社の人は、
「ご近所の稲荷神社か氏神様にお納めください」
と教えてくれたので、帰ってから地元の稲荷神社に持って行くことにした。
※
京都から帰り、地元のお稲荷さんに行く前日、また夢にあの茶髪のお兄ちゃんが出てきて、
「世話になったなー、これ嬢ちゃんに返すな」
と、紫色のリストバンドを夢の中で私に返してくれた。
翌日、お狐さんは無事に地元の稲荷神社に納められた。