さっきの子

motodani-yamano-koya

今年の夏休み、大学の友達と3人で四国へ旅行に行った時の話。

ナビも付いていないオンボロ車で、山中で迷ってしまい、どうにか国道に出る道を探し回っていた。

辺りも薄暗くなってきていたので内心焦っていた。

どんどん道が細くなって行き、車一台通るのがやっとの道幅。

俺は運転もせず後部座席だったからまだ余裕があったけど、運転していた友人は相当焦っていたと思う…。

そのまま道を登って行くと腐敗した小屋があり、覗き込むと小学生くらいの男の子が自分たちに背を向けた格好でボーっと立ち竦んでいた。

地元の子だったら道分かるかなと思い「すいませーん!」と呼びかける。

反応が一切無く、「おーい、僕~!」と俺も呼びかける。しかし無反応。

運転席の友人がクラクションを鳴らすと、顔だけこちらへ向けた。

普通の男の子なんだけど、これ以上ないぐらいに無表情。

「あのさ、国道まで出たいんだけど、どっち行けば良いか分かるかな?」

表情ひとつ変えずに指を差してくれた。俺らの進行方向で正解だったようだ。

暗くなってきていたし、男の子は小屋の中にいるので顔がよく見えなかった。

ただ、妙に無表情な印象が強く、不思議な子だったねと車内で話しながら俺らは細道をひた走った。

それから3分と走らずに行き止まりに突き当たった。

「んだよ、行き止まりじゃん、最悪!嘘つかれたわ、さっきの子にぃ~」

友人が愚痴りながらバックで来た道を戻った。

さっきの小屋があった場所にちょうどスペースがあったのでそこで車をUターンさせ、来た道を戻ろうとした。

「あれ? さっきの子いないじゃん」

「ほんとだ。もう帰ったんじゃない、暗くなってきたし」

特に気にもかけなかった。俺らに嘘を吐いた手前、急いで帰ったというのも頷ける話だ。

「やばいなぁ。もう暗いから来た道戻ってみようか」

ほぼ一本道だったので戻るしかなかった…。

俺は何気なく後部座席を振り返って、もう一度小屋の方を見た。

「ちょ、ちょっとおい!!」

俺が絶叫に近い声をあげると、友人がびっくりして急ブレーキを踏んだ。

「なにさ!!」

「あれ!!!」

小屋の横にさっきの男の子が立っているのだ。こちらを向いて。

「なんだよあの子…なんか気味悪いな」

どこかに隠れていたのだろうか…。そんな平坦な山道でもなかったのだが…。

何より無表情で、ゾクっとするのだ。

逃げるように俺たちは来た道を戻り、30分程で民家を発見した。地図を示しながら道を尋ねて、礼を言って再出発。

「今度こそ大丈夫だ」

友人が安心した声を漏らした。

もう真っ暗になっていたので車を急がせる。

「おい待て待て」

助手席の友人が慌てて運転席の友人を制止させる。

「こっち曲がったらさっきと同じ道じゃんか」

地図に走り書きした道筋を確認すると、確かにこちらで合っている。

俺たちは怪訝な顔を一斉に並べながらゆっくり細道を進んだ。

「ほらあれ、さっきの小屋」

確かにさっきの小屋だ。間違いない。

男の子の姿は見当たらなかった。

ゆっくり小屋の横を通り過ぎ、行き止まりだと分かっていた道を進む。

すると、さっきは気付かなかったが右に曲がる割と大きな道があるのだ。

見落とした? それこそあり得ない。さっきはまだ今よりも明るかったし、右側は一面が林だったはずなのだ。

「いやぁ、でも良かったなぁ!!」

「…」

俺が話しかけても、運転席と助手席の友人の反応が無い。黙って車を走らせている。

「何々、どうしたよ」

助手席の肩を叩くと「絶対後ろ見るな、絶対後ろ見るな」と小さい声で呟く。

その瞬間、俺も悟って押し黙った。

俺は気が動転して、10分程目を瞑って友人らのシートをずっと掴んでいた。

しばらく走ると大きな道に出た。その途端、助手席と運転席の友人が見合わせたように大きな溜め息を吐いた…。

「見た?」

「見たというより、見えた…」

話を聞くと、小屋の横を通り過ぎた際に、フロントライトの反射で小屋の中が見えたそうだ。

そこにさっきの男の子が立っていて、こちらを見てニターっと笑っていたというのだ。

口は裂けたように大きくて、目は人間のそれとは違って大きく吊り上がり、獣のような真っ白な顔だったと言う。二人とも説明が合致していた。

狐につままれたような体験だったが、本当に狐の仕業だったのかもしれない。

関連記事

最強の姉

一年前から一人暮らしを始めて以来、不眠症が酷くなった。数ヶ月前に姉が遊びに来て、「へー…ここ住んでるんだ。そうかそうかなるほどね」と変な言葉を残して帰って行った。霊とか…

しゃべれるんだな

自宅のトイレに大きな窓がある。ちょうどトイレの床から1メートルくらいのところに。トイレの臭いを換気する為に、いつも10センチほど開けっ放し。まあ、自宅代わりに借りてるビ…

根絶やしの歌

本当の話です。というより、現在進行中なんですが…。私は今まで幽霊どころか不思議なことすら体験したことがない人間なんですが、最近どうもおかしなことが続いているので書き込みします。…

迷い道

昔、某電機機器メーカーの工場で派遣社員として働いていた時の話。三交代で働いていて、後一ヶ月で契約が切れる予定で、その週は準夜勤(17:00~0:30)でした。当時は運転…

大事な妹

小4の時の話。Tちゃんのお姉さんは中学生で、首に腫瘍ができるよく解らない難しい病気で、入退院を繰り返していた。家に遊びに行くとたまにお姉さんもいて、挨拶くらいはしたこと…

ホテルの看板(フリー素材)

海外の幽霊ホテル

この前、ニュージーランドをバイクで旅したんだ。南島にダニーデンという町があって、そこのユースホステルは幽霊が出ることで有名なんだ。そこの建物は50年前まで病院だったらし…

イタチの仕業

祖母の葬式の晩の事。田舎の古い屋敷で壁3面ガラス張りの小さな和室に1人だった。長い廊下の突き当たりの座敷には祖母が安置されていた。裏の山には江戸時代からの一族の墓が並び、近くの公園…

子供にしか見えない

その友人親子は夕方に近くの公園まで散歩をするのが日課でした。友人の仕事の関係上、いつも日暮れ前には帰宅していましたので、夕食ができるまでの間に4歳になる息子と毎日遊んであげてい…

お婆ちゃんの手(フリー素材)

牛の貯金箱

小学生の頃、両親が共働きで鍵っ子だった俺は、学校から帰ると近所のおばあちゃんの家に入り浸っていた。血縁者ではないが、一人暮らしのばあちゃんは俺にとても良くしてくれたのを覚えてい…

幽霊船

これは、もう亡くなった曾祖父に聞いたお話です。曾祖父が亡くなる数ヶ月前、どうしたことか、親戚を集めて色々な話を聞かせてくれたのです。私の実家は鹿児島県のとある離島なんで…