神様の訪問

公開日: ほんのり怖い話 | 不思議な体験

居間のブラウン管テレビ(フリー写真)

小さい時は親が共働きで、一人で留守番をする事がよくあった。

特に小学校の夏休みなど、日中は大体一人で家に居た。

小学4年生の夏休みの事だ。

トイレに行って居間へ戻ったら、知らないお爺さんが座って勝手に麦茶を飲んでいた。

「誰?」

と聞いても答えない。

ちょっと怖いから自分の部屋で漫画を読み、暫くしてから戻ったら、もう居なかった。

それから何日かに一回というペースで来た。

トイレに行ったりテレビに夢中でいたら、いつの間にか部屋に居る。そして勝手にお茶を飲んでいる。

慣れてくると全然怖くはなく、何となく居るのが当たり前になった。

ある日、また来て勝手にお茶を飲んだ後、いきなり

「お前、何か願い事あるか」

と言われた。

「お母さんに家に居て欲しい」

と答えたら、

「そうか」

と言って消えた。

その日の夜、帰宅した父は

「父さん偉くなったぞ!」

と私たち家族に報告した。

当時はよく解らなかったが、父はこの日、異例の昇進が決まって給料も跳ね上がった。

その後、秋になって母の妊娠が発覚し、父の収入も増えたからと、母は退職して専業主婦になった。

ぬらりひょんという妖怪を知ったのはかなり後になってからだったが、あれはもしかしてぬらりひょんだったのだろうか。

でも、ぬらりひょんは願い事を叶える妖怪じゃないみたいだしなあ……とも思う。

何者にせよ、良い奴だったんだと思うけど。

関連記事

図書室(フリー写真)

本に挟まったメモ

高校3年生の時の話。 図書館で本を借りたら、本の中に 『こんにちわ』 と書かれたメモが入っていた。 次の週にまた別の本を借りたら、 『こんにちわ。このまえ…

幸福の妖精

リクルートスーツを見る季節になると、毎年思い出すお話。 俺は就職活動してた。バブル崩壊後の冷や水ぶっかけられた氷河期世代あたりだと思ってくれ。俺は理系で一応研究職希望だったけど、…

音のない世界

時間が消えた坂道

確か、小学2年生の頃の出来事です。 クラスで仲の良い友人が、ある日こう言いました。 「すごい場所があるんだよ! 今日行こうぜ!」 彼は以前から「宇宙人を見た」などと…

農村(フリー写真)

神隠しの森と村の伝承

ある山村に、不思議な伝承があった。 その伝承によれば、村の奥地にある古い神社には、神隠しの力があると言われていた。 神隠しとは、神や妖怪が人間を自分の世界に連れ去ってしま…

ニワトリ

6月のある日の夕方に家に居ると、外出中の母親から電話がかかってきた。 かかりつけの病院に行って母の代わりに薬をもらって来てくれという内容だった。 俺は家を出て徒歩で病院に向かった。…

エレベーター

エレベーターと失われた時間

今日、不思議な体験をしました。 仕事が早く終わったので、行きつけのスナックで一杯飲むことにしました。 スナックが入っている雑居ビルのエレベーターに乗り、いつものように胸ポ…

ゴムまり持った女の子

私がまだ花の女子大生だった頃のお話です。 私の学科用の校舎は新設されたばかりでまだぴかぴか。最上階には視聴覚設備用の特別教室があり、その上にパイプスペース用の小部屋だけがある階が…

田んぼ

田んぼの案山子の秘密

私は田舎に住んでいて、学校への通学路は常に田んぼの脇道を歩いていた。 ある日、帰宅中に田んぼの中にピンク色の割烹着を着た姿が見えた。 「田植えをしているのか」と思ったが、…

アパートのドア(フリー写真)

異界の部屋

当時はアパートに住んでいて、その頃に体験した不思議な話。 母ちゃんに頼まれ、回覧板を他の部屋に渡しに行った。 さっさとドアのポストに回覧板を入れ、自分の部屋に帰って行った…

ダム

迷い込んだ農家

以前付き合っていた霊感の強い女性から聞いた話。 「これまで色んな霊体験してきて、洒落にならんくらい怖い目にあったことってないの?」と尋ねたら教えてくれた。 俺が聞き伝えでこ…