ゴムまり持った女の子

7025975-girl-face-monochrome-art

私がまだ花の女子大生だった頃のお話です。

私の学科用の校舎は新設されたばかりでまだぴかぴか。最上階には視聴覚設備用の特別教室があり、その上にパイプスペース用の小部屋だけがある階がありました。

というより、階段がその階分だけ上に突き出してて、階段にへばりつくように小部屋があるという感じです。

私と友達は、施錠されてないのを良いことに、よくその小部屋に入り浸っていました。

荷物を置いたり更衣室にしたり、空き時間にただ雑魚寝してたり…(女子大の実態なんてこんなもの)。

その部屋には、押し上げ式の窓がひとつだけあり、夏の暑い日のことだったので、私はその窓をできるだけ開け、首を突き出して涼んでいました。

すると、視界の隅っこを何かがよぎりました。

なぜか「あれ? 女の子だ?」と思いました。

黄色のゴムまりを持った『トイレの花子さん』みたいなオカッパで、白ブラウスに赤い吊スカートの。ちらっと見えただけだったのですが…。

首をひっこめて「ねえ、子供が遊んでる。こんな暑いのに元気だよね」と友達に声をかけると、怪訝な顔をされました。

それでハッと気づきました。こんな場所で遊んでいて落っこちでもしたら大変です。慌ててもう一度首を突き出してみたら…。

いません。見渡す限り、子供なんていません。

眼下は切り立った校舎の壁で、落っこちたら死にますってくらいの高さとコンクリです。

学校自体が山の中腹に建っていたので、実質5階に相当する階なのに、1階下くらいの高さのお向かいさんには山の地面があります。

校舎と山の間は…5メートルくらい離れていたでしょうか…。

山の中はゴルフ場。手前は校舎で切り立った崖状態。住宅地ならいざ知らず、こんなところに子供が迷い込んで来られるはずはありません。

大体、夏真っ盛りに長袖に白ブラウスを着てたということもおかしいです。

そこで初めて、ゾッとしました。

「私、一体何を見たの?」

いわく因縁後日談、何もありません。私の見間違いかもしれません。でも、私は絶対に見た…と思うんだけどなぁ…。

関連記事

街並み

見知らぬ街で目覚めた日

2001年の秋、私は風邪を引いて寒気を感じていました。症状を抑えるため、大久保にある病院に行くことにしました。西武新宿線の車内でつり革につかまり、頭痛がひどくなってきたため、目を閉じ…

カーテン(フリー写真)

少年とテレビ

これは僕の姉が、今の旦那と同棲中に体験した話です。 姉は何年か前に、京都の市内にあるマンションに旦那さんと住んでいました。 当時旦那さんは朝早い仕事をしており、毎朝5時には…

雪に覆われた山(フリー写真)

雪を踏む足音

初雪の山は登ってはいけない。 そういう話を仲間内でよく聞いていたが、単に滑りやすくなるからだろうと軽く捉えていた知り合いは、命の危険に晒された。 彼は登山歴3年くらいの経験…

公園

誰も居ない通学路

20年近く前の話になります。当時、私は小学4年生でした。近所の公園には、変わったすり鉢状の滑り台があり、小学生には大人気でした。学校が終わると、そこで親友のT君と遊ぶ約束をしていまし…

林

消えた時間と赤い蝶

小学2年生の頃、私と仲の良かったタケシと一緒に、学校の裏山へ虫採りに行った。その山は私たちの遊び場で、中規模の雑木林のような場所でした。私たちはその地形を隅から隅まで知り尽くしていま…

河原

時空の穴

この出来事は14年前に起こりました。私は多摩川の河原を散策していたところ、奇妙な穴を発見しました。その穴は草むらにあり、斜め下に向かって延びていました。何の気なしにその穴を進んでいく…

昔の電話機(フリー画像)

申し申し

家は昔、質屋だった。と言ってもじいちゃんが17歳の頃までだから私は話でしか知らないのだけど、結構面白い話を聞けた。 田舎なのもあるけど、じいちゃんが小学生の頃は幽霊はもちろん神様…

庭に咲く花(フリー写真)

光る玉

私の母は私を産む前に二度流産しており、三度目(私)の時も、何度か駄目になりかけていたそうです。 妊娠4ヶ月頃の時も、やはり体調を崩して流産しかけたらしいのですが、その時、庭で二人…

消えた数時間

今日、変な体験をした。 早目に仕事が終わったから、行きつけのスナックで一杯飲んで行くかと思い、スナックが入ってる雑居ビルのエレベーターに乗った。 俺は飲む時に使う金を決め、…

行軍

爺ちゃんの従軍時代の話

子供の頃に爺ちゃんに聞いた話を一つ。 私の爺ちゃんは若い時、軍属として中国大陸を北へ南へと鉄砲とばらした速射砲を持って動き回ってました。 当時の行軍の話を聞くと、本当に辛か…