時間が止まる坂

坂道

この話は私が小学2年生の時のことです。

クラスで仲の良かった友人が、興奮気味に「すごい場所があるんだよ!今日行こうぜ!」と誘ってきた。

その友人は普段から「宇宙人を見た」といった奇妙な話をする子だったので、あまり期待せずに彼に付いて行った。

行き着いたのは小山の頂上にある公園で、公園の入り口の反対側にある坂だった。

そこはよくダンボールで滑った場所で、下は大きな道路があった。

坂の一部では芝生が枯れ、地面が露出していた。友人はその部分を指差し、私は一人でその場所を調べてみたが、何も変わらなかった。

しばらく道路を眺めていたが、友人が肩を叩き、「もう帰ったほうがいいよ」と言ってきた。

気づくともう夕方になっていた。その日は土曜日で、学校から直接来ていたため、13時頃には到着していたはずだが、もう18時近かった。

友人に聞いても「なっ!不思議だろ!」と言うだけだった。

家に帰り、家族に話し、布団に入って寝ようとした時、ふと気づいた。

あの場所は完全に「無音」だったのだ。目の前の道路を走る車の音や、公園で遊ぶ子供たちの声が聞こえなかった。

時間の感覚もおかしくなり、日が傾くのにも気づかなかった。

翌日、友人はまた行こうと言ったが、私は怖くなり断った。

その夜、友人の母親から「息子が帰ってこないのですが、お宅にお邪魔してませんか?」と電話があった。

急いで私の両親と友人の家族でその場所に行くと、友人は一人で坂の上に座っていた。

両親に全てを話したが、信じてもらえなかった。

もし友人が私に教えずにその場所に行っていたらと思うと、今でも恐ろしい。

数年後、その場所は地元の子供たちの間で「時間が止まる坂」と呼ばれるようになった。

その坂には時折、現実とは異なる時間の流れが存在すると言われている。

私はその後、二度とその坂に近づくことはなかったが、その不思議な現象の真相を知る者は今も現れていない。

関連記事

空

雲の上の記憶と真紅の花

数年前、私は今でも忘れられない不思議な体験をしました。 それは、家族旅行でキャンプに出かけた際の出来事です。 キャンプ場のテントを離れ、弟と二人で少し奥の林の中で遊んでい…

二人だけの水族館

俺はじいちゃんが大好きだった。 初孫だったこともあって、じいちゃんも凄く俺を大事にしてくれた。 俺はあまりおねだりが得意な方じゃなかったけど、色々な物を買ってくれた。 …

んーーーー

現在も住んでいる自宅での話。 今私が住んでいる場所は特にいわくも無く、昔から我が家系が住んでいる土地なので、この家に住んでいれば恐怖体験は自分には起こらないと思っていました。 …

教室(フリー素材)

消えた同級生

小学2年生の時の話。 俺はその日、学校帰りに同じクラスのS君と遊んでいた。 そのS君とは特別仲が良い訳ではなかったけど、何回かは彼の家にも遊びに行ったし、俺の家に招いたこと…

田舎の風景(フリー写真)

指切り地蔵様

俺の実家の近所に『指切り地蔵様』と呼ばれている地蔵がある。 指の部分がちょうど指切りできるように変に曲がっているから『指切り地蔵様』。 小さな頃、その地蔵様と指切りをした…

公衆電話

公衆電話が呼ぶ

突然だが、僕は電話が苦手だ。 それは電話が面倒だとか、メールの方が楽だとかそういうことではない。 電話が掛かってくる度にギュウッと心臓が掴まれたようになる。 ※ とある…

高速      

真実と幻

数年前の夏、高速道路交通警察隊に勤める友人が体験した不可解な事件についての話です。 ある日、友人は別部署の課長から突然の呼び出しを受けました。理由は、一週間前に起きた東北自動車…

非常階段

数年前、職場で体験した出来事です。 その頃、僕の職場はトラブルつづきで、大変に荒れた雰囲気でした。 普通では考えられない発注ミスや、工場での人身事故が相次ぎ、クレーム処理に…

子供にしか見えない

その友人親子は夕方に近くの公園まで散歩をするのが日課でした。 友人の仕事の関係上、いつも日暮れ前には帰宅していましたので、夕食ができるまでの間に4歳になる息子と毎日遊んであげてい…

木造校舎

青い手首

ネタではありません。実際の体験談です。 世田谷区立某小学校での出来事。 ※ 入学して1年間は、戦前からある古い木造校舎で過ごしました。 2年生になった頃に木造校舎の建て…