浮遊する金魚

公開日: ほんのり怖い話 | 不思議な体験

金色の金魚(フリー写真)

小学2年生くらいまで、空中を漂う金色の金魚みたいなものが見えていた。

基本的には姉ちゃんの周りをふわふわしているのだけど、飼っていた犬の頭でくつろいだり、俺のお菓子を横取りしたりしていた。

家の中を好き勝手にうろちょろしていたから、きっとうちで飼っているペットか何かで、姉ちゃんに懐いているのだろうと思っていた。

「今になって考えるとおかしいよな。変なもん見えてたんだな」

という話を、大学生の兄ちゃんが里帰りして来た時に話した。

兄ちゃん(姉ちゃんから見ると弟)は、

「お前、高校生にもなって何言ってんの?」

と言っていたのだけど、姉ちゃんは

「何であんたにも見えるの?」

と言い出した。

実は姉ちゃんも、小学2年生の夏までその金魚が見えていたらしい。

だけど俺が生まれる少し前に見えなくなったので、

『あれは新しく生まれて来る弟の魂だったんだ!』

と思っていたらしい。

それなのに俺が生まれてからも金魚が居たことが判り、驚いたらしい。

「友達だと思って楽しく話していた人が、実は全然違う人だったと発覚した時の気分に似ている」

などと言い出して吹いた。

そんな体験したことねーよ(笑)。

しかし、あの金魚みたいなものは何だったんだろう?

姉ちゃんはまだ家に居るのではないかと、時々キョロキョロしている。

見えない癖に何してんだよ(笑)。

姉ちゃんが言うには、あの金魚みたいものは『ショーベタ』という熱帯魚に似ているらしい。

あと、寝返りを打った犬に潰されても平気そうにしていたのが不思議だった。普通ならぺちゃんこだよな。

触った感じはグミみたいだったけど、ぐにぐにしたら嫌がって逃げていたなあ…。

関連記事

橋(フリー写真)

面影橋

私が京都は東山にあるその営業所に移動になったのは、春先の桜が満開の季節でした。 小さな営業所ではありましたが仕事は多く、音を上げずに勤めていられるのは、ただ同僚の方たちの人柄ゆ…

逆光を浴びた女性(フリー素材)

真っ白な女性

幼稚園ぐらいの頃、両親が出掛けて家に一人になった日があった。 昼寝をしていた俺は親が出掛けていたのを知らず、起きた時に誰も居ないものだから、怖くて泣きながら母を呼んでいた。 …

校舎(フリー写真)

消えたヤンキー

現在就活中で、大阪と兵庫の辺りをうろうろしている。 昨日ホテルに帰る途中のタクシーの中で、一緒に居た友人が何故か怖い話を始めた。 その時に運転手さんから聞いた話。 …

不敬な釣り人の顛末(宮大工11)

とある休日、久しぶりにオオカミ様の社へと参りに出かけた。 途中、酒を買い求めて車を走らせる。 渓流釣りの解禁直後とあって、道には地元・県外ナンバーの四駆が沢山停まっている。…

蜘蛛の巣(フリー画像)

クモ様

我が家は東北の片田舎にある古い一軒家。 うちでは昔からクモを大事にする習慣があり、家には沢山のクモが住み着いてクモの巣だらけ。 殺すなどもっての外で、大掃除の時もクモの巣を…

雷(フリー写真)

記憶の中の子供達

私は子供の頃、雷に打たれた事があります。 左腕と両足に火傷を負いましたが、幸いにも大火傷ではありませんでした。 現在は左腕と左足の指先に、微かに火傷の跡が残っているまでに回…

白い犬(フリー写真)

おかげ犬

知り合いが体験した話。 とある鄙びた峠道を歩いていると、いつの間にか犬が一頭、後をついて来る。 痩せた白い体毛の犬で、首には大きな風呂敷包みを提げている。 彼の方を…

皺のある手(フリー写真)

青いみかん

小学2年生まで自分は感情の起伏の無い子供だったらしく、両親がとても心配し、よく児童相談所や精神科のような所へ連れて行っていた。 その時も面倒臭いとも楽しいとも思った事は一切無く、…

雑炊

妻の愛

ようやく笑い飛ばせるようになったんで、俺の死んだ嫁さんの話でも書こうか。 嫁は交通事故で死んだ。 ドラマみたいな話なんだが、風邪で寝込んでいた俺が夜になって「みかんの缶詰食…

狐の嫁入り

俺の実家は山と湖に囲まれた田舎にある。 小学校6年の時の夏休みに、連れ二人と湖に流れ込む川を溯ってイワナ釣りに行く事になった。 雲一つも無いようなよく晴れた日で、冷たい川の…