病院の空白

公開日: 不思議な体験 | 怖い話

病院

私は2年前まで看護師をしており、今は派遣事務の仕事に就いています。看護師時代は17、18時間の長時間勤務が当たり前でした。

ある日の二交代勤務中、朝7時半に病院の通用口を通り抜けましたが、院内は異様に静かでした。通常ならば朝食の準備で賑わうはずの時間帯に人の気配がまるで感じられませんでした。

更衣室に向かう道すがら、同僚の姿も見えず、携帯で連絡を試みても通じません。取りあえず、ステーションへ向かうことにしましたが、その途中で職員も患者も一人も見かけませんでした。異常な事態に恐怖を感じ、誰かを探そうとしましたが、恐ろしさのあまり動けませんでした。

内線電話を取り上げると、発信前のトーン音さえ聞こえませんでした。パニックになった私は、携帯を落とし、それを拾い上げると実家の番号が表示されていました。すぐにダイヤルし、母との会話が始まりました。しかし、母からは「病院から連絡があったが、時間になっても来ないから心配している」と言われました。

その瞬間、力が抜けてしまいました。そして、携帯を落とした場所にバッテリーが落ちていることに気付きました。バッテリーが無いのに、どうやって母と話していたのか疑問に思いました。

恐怖で逃げ出し、通用口の近くで倒れていたところを同僚に発見されました。目覚めたときはいつもの賑やかな職場でした。その後、その日に何が起こったのか確たる証拠もなく、自分の見たことが現実だったのかさえ確信が持てませんでした。見たはずの大きな鏡は実は存在しなかったのです。


note 開設のお知らせ

いつも当ブログをご愛読いただき、誠にありがとうございます。
今後もこちらでの更新は続けてまいりますが、note では、より頻度高く記事を投稿しております。

同じテーマの別エピソードも掲載しておりますので、併せてご覧いただけますと幸いです。

怖い話・異世界に行った話・都市伝説まとめ - ミステリー | note

最新情報は ミステリー公式 X アカウント にて随時発信しております。ぜひフォローいただけますと幸いです。

関連記事

玄関

マンデラ効果

これは私が中学生の頃、夏休みを目前に控えた、蒸し暑いある朝の出来事です。 朝食を終え、のんびりと準備を整えて玄関に向かいました。 スニーカーのつま先を土間にとんとんと叩き…

10の14乗分の1

人間って、壁をすり抜けたりする事ができるの知ってました? 10の14乗分の1くらいの確率で。 細胞を形成している素粒子に透過性があるかららしい。たまたまこないだテレビで見て…

エレベーター

赤い空のエレベーター

建築基準法によると、5階以上の建物にはエレベーターの設置が義務付けられているそうだ。 私が以前住んでいた、高速道路沿いのマンションにも当然エレベーターが一基設置されていた。 …

夜のビル街(フリー写真)

呻き声

俺のツレはいわゆる夜中の警備のバイトをしていて、これはそのツレにまつわる話。 ある日、そいつが言うには、 「何かさ、最近、バイト中に鳴き声がするんだよな」 「まあ、近…

湖(フリー素材)

白き龍神様(宮大工13)

俺が中学を卒業し、本格的に修行を始めた頃。 親方の補助として少し離れた山の頂上にある、湖の畔に立つ社の修繕に出かけた。 湖の周りには温泉もあり、俺達は温泉宿に泊まっての仕事…

赤い顔

赤い爺さん

友人Yから聞いた話。 今から二年程前、Yの爺さんが亡くなった。 Yは昔から超が付く程の爺さんっ子だったものだから、葬式の時は年甲斐もなく鼻水を垂らしながらわんわん泣いたらし…

祖父の箱

旅先で聞いた話。 伐り倒した木を埋めておくと、稀に芯まで真っ黒になることがある。 そんな埋木を使って特殊な方法で箱を作ると、中に女子が育つそうだ。 ただし、箱を開ける…

工事現場(フリー写真)

持ち出された藁人形

俺は建設会社で現場作業員をしています。 ある年の年末、道路工事の現場で働いている時の事でした。 一日の作業を終えてプレハブの現場事務所へ戻ると、ミーティング時に使う折り畳み…

目(フリー素材)

犯罪者識別能力

高校の時の友達に柔道部の奴がいて、よく繁華街で喧嘩して警察のお世話になっていた。 そいつは身長185センチで体重が100キロという典型的な大男。名前はA。 性格は温厚で意外…

赤模様

赤いシャツの女

二年前の今頃の話。 その日、来週に迎える彼女の誕生日プレゼントを買いに、都内のある繁華街に居た。 俺はその日バイトが休みだったので、昼過ぎからうろうろとプレゼントを物色して…