A子ちゃんの夢
ちょっと辻褄の合わない不思議な経験で、自分でも偶然なのか思い込みなのか、本当にそうだったのか自信がないのですが。
子供の頃、大人になっても憶えているような印象的な夢を見た事があります。
同じ年頃の女の子と一緒に遊んでいる夢で、その子がA子ちゃんという名前。
そしてどうしてだか、もうこの世の人でないのも解っている。
A子ちゃんがこの世に留まっているのは、お母さんへの伝言があるからで、私に代わりに伝えて欲しいと願っている…とか、何の説明もないのにもう夢の中では解っていました。
そのうちA子ちゃんが夢の中で私に、ビー玉や色ガラスの欠片が沢山入った綺麗なビンをくれようとしました。
しかし受け取る前に夢から覚めてしまいました。
不思議な事に、夢なんて普通すぐに忘れてしまうものなのに、いつまでもその夢は憶えていました。
A子ちゃんのちょっと下膨れのほっぺたの顔も、長い髪の毛を両側で括ったヘアスタイルも忘れられず、いつまでも憶えていました。
だけど、あくまでも夢の中の話だと思っていました(そもそもA子ちゃんがどこの誰だったかとかは、さっぱり判らなかったし)。
※
そうしてそのまま大人になり、数年前、趣味の小物を売っている小さなお店に偶然入り買い物をしました。
店主の女性に会計をしてもらっている時、そのレジの所に、あの夢で見たそのままのビー玉と色ガラスの入ったガラス瓶が置いてあるのを見つけてビックリ。
そして思わず、
「これ見覚えがあります!夢でA子ちゃんという女の子が持っていました!」
と話すと、その女性は顔色が変わって、
「あなた…いきなり何が言いたいの?」
と胡散臭そうに言われました。
しかし私は夢の中のA子ちゃんの話をして、そのA子ちゃんの姿とA子ちゃんの伝言を伝えました。
すると女の人は涙をボロボロ流しながら聞いていて、奥から写真を持って来て見せてくださりました。
その写真の女の子は、間違いなくあの夢の中のA子ちゃんで、実際A子ちゃんという名前のお子さんでした。
A子ちゃんの伝言は、
「お母さんは悪くない。自分は苦しまなかったし、今はキラキラした綺麗な場所に居てとても楽しい。
でも、お母さんがいつまでも苦しんでいると、私も苦しくなって綺麗な場所に居られなくなるから、もう苦しまないで」
という意味ものでした。
A子ちゃんは2年前の夜中、睡眠中に発作を起こし、子供には珍しい脳出血で亡くなっていました。
お母さんはその時に気が付かないまま眠っていて、助けられなかった自分を責めていました。
それがA子ちゃんの心残りだったのかも知れません。
でも、私がA子ちゃんの夢を見たのは20年以上も前で、実際にA子ちゃんが亡くなったのは2年前。
私が夢を見た頃は、A子ちゃんはまだ生まれてもいない時だったんですよね。
今でもあれはただの思い込みで偶然だったのか、本当にA子ちゃんの伝言だったのか判りません。
事実だったとしても、何故A子ちゃんはそんなまどろっこしい伝言を私に頼んだのかな…と謎なんだけど。
どちらにせよ、現実にA子ちゃんのビー玉(生前の宝物だったらしい)は、お母さんと半分こして分けたものが今だに手元にあるんだよね。