A子ちゃんの夢

ビー玉(フリー写真)

ちょっと辻褄の合わない不思議な経験で、自分でも偶然なのか思い込みなのか、本当にそうだったのか自信がないのですが。

子供の頃、大人になっても憶えているような印象的な夢を見た事があります。

同じ年頃の女の子と一緒に遊んでいる夢で、その子がA子ちゃんという名前。

そしてどうしてだか、もうこの世の人でないのも解っている。

A子ちゃんがこの世に留まっているのは、お母さんへの伝言があるからで、私に代わりに伝えて欲しいと願っている…とか、何の説明もないのにもう夢の中では解っていました。

そのうちA子ちゃんが夢の中で私に、ビー玉や色ガラスの欠片が沢山入った綺麗なビンをくれようとしました。

しかし受け取る前に夢から覚めてしまいました。

不思議な事に、夢なんて普通すぐに忘れてしまうものなのに、いつまでもその夢は憶えていました。

A子ちゃんのちょっと下膨れのほっぺたの顔も、長い髪の毛を両側で括ったヘアスタイルも忘れられず、いつまでも憶えていました。

だけど、あくまでも夢の中の話だと思っていました(そもそもA子ちゃんがどこの誰だったかとかは、さっぱり判らなかったし)。

そうしてそのまま大人になり、数年前、趣味の小物を売っている小さなお店に偶然入り買い物をしました。

店主の女性に会計をしてもらっている時、そのレジの所に、あの夢で見たそのままのビー玉と色ガラスの入ったガラス瓶が置いてあるのを見つけてビックリ。

そして思わず、

「これ見覚えがあります!夢でA子ちゃんという女の子が持っていました!」

と話すと、その女性は顔色が変わって、

「あなた…いきなり何が言いたいの?」

と胡散臭そうに言われました。

しかし私は夢の中のA子ちゃんの話をして、そのA子ちゃんの姿とA子ちゃんの伝言を伝えました。

すると女の人は涙をボロボロ流しながら聞いていて、奥から写真を持って来て見せてくださりました。

その写真の女の子は、間違いなくあの夢の中のA子ちゃんで、実際A子ちゃんという名前のお子さんでした。

A子ちゃんの伝言は、

「お母さんは悪くない。自分は苦しまなかったし、今はキラキラした綺麗な場所に居てとても楽しい。

でも、お母さんがいつまでも苦しんでいると、私も苦しくなって綺麗な場所に居られなくなるから、もう苦しまないで」

という意味ものでした。

A子ちゃんは2年前の夜中、睡眠中に発作を起こし、子供には珍しい脳出血で亡くなっていました。

お母さんはその時に気が付かないまま眠っていて、助けられなかった自分を責めていました。

それがA子ちゃんの心残りだったのかも知れません。

でも、私がA子ちゃんの夢を見たのは20年以上も前で、実際にA子ちゃんが亡くなったのは2年前。

私が夢を見た頃は、A子ちゃんはまだ生まれてもいない時だったんですよね。

今でもあれはただの思い込みで偶然だったのか、本当にA子ちゃんの伝言だったのか判りません。

事実だったとしても、何故A子ちゃんはそんなまどろっこしい伝言を私に頼んだのかな…と謎なんだけど。

どちらにせよ、現実にA子ちゃんのビー玉(生前の宝物だったらしい)は、お母さんと半分こして分けたものが今だに手元にあるんだよね。

関連記事

線路

北陸本線の夜

二日前、11月6日の終電間近に北陸本線のある無人駅で不思議な出来事がありました。 音楽を聴きながら列車を待っていた私は、列車接近のアナウンスもなく突然、ホームに列車が現れたこと…

目(フリー素材)

犯罪者識別能力

高校の時の友達に柔道部の奴がいて、よく繁華街で喧嘩して警察のお世話になっていた。 そいつは身長185センチで体重が100キロという典型的な大男。名前はA。 性格は温厚で意外…

枕(フリー写真)

槍を持った小人

最近の話。 俺の家は四人家族で、いつもカミさんと上の子、一歳の下の子と俺が一緒に寝ているのだけど、この下の子がよくベッドから落ちる。 俺も気を付けて抱っこしながら寝たりする…

山道(フリー写真)

出られなくなる山道

車好きの友人(Aとします)から聞いた話です。 G県のある山中に、夜間は通行禁止にされている山道があるそうです。 夜間通行禁止の理由として、 『明かりが全く無い上に見通…

隙間見た?

子供の頃に姉が、 「縁側のとこの廊下、壁に行き当たるでしょ。あそこ、昔は部屋があったんだよ。 人に貸してたんだけど、その人が自殺したから埋めたの。 今はもう剥げてきて…

トンネル

霧島、消えた駅

これは一昨日の夜に体験した出来事です。私はいつも通り、都会から田舎の自宅へ帰るために最終電車に乗りました。この日は友人と遅くまで飲んでいたため、21時頃には出るはずが大幅に遅れ、埼玉…

スローになる空間

友達の家に手応えのある変な空間がありました。 何もないところで手をふると、そこだけスローになる。 それは空中に留まっており、撫で回してみるとバスケットボールぐらいの大きさ。…

登山(フリー写真)

二つの人影

友人に山岳部のやつが居る。そいつが何処だか忘れたが、結構有名な日本の山に部員と登った時の話。 ちょうど山の中腹まで登った頃に濃霧が立ち込めて来て、他のメンバーとバラバラになってし…

台湾

混同された記憶

私は現在、仕事の都合で台湾に住んでいます。宿代もかからず、日本からも近いため、友人が時々遊びに来ます。この話は、そんなある時の出来事です。 今年の2月初旬、高校時代からの親友で…

夏祭りの光景

小百合おばさん

怖くはないと思いますが、不思議だった話をしたいと思います。 小学校に上がった頃の私はよく、周りの人には見えないものを見ては泣き、逃げ回っていたそうです。 ある日、祭りがあ…