おんぶしてあげるよ

公開日: 心霊ちょっと良い話

おじいさん(フリー写真)

去年、祖父が亡くなりました。

僕は祖父にはよく可愛がってもらっていましたが、何の恩返しもできないまま逝ってしまいました。

不思議な体験というのは、その祖父の葬儀の時に起こりました。

背中にちょうど人一人がおぶさっているような、そんな感触があるのです。

その背中の重みは葬儀の最中続き、お坊さんのお経の最後の『引導』が終わった後に無くなりました。

その時は『何だったんだろう?』くらいにしか思いませんでした。

それから葬儀が終わり、皆で祖父のことを話している時に、あることを思い出しました。

それは、僕がまだ小さかった頃のことです。

祖父の家に遊びに行った時、僕はよく祖父におんぶしてもらっていました。

そんなある日、ポツリと祖父が言うのです。

「重くなったなあ。これじゃあもう、おじいさんおんぶできなくなっちゃうなあ。今度はおんぶしてもらわないとなあ」

僕はそれを聞いて、

「じゃあ、大きくなったらおんぶしてあげるよ」

と答えました。

結局、その約束は祖父が生きているうちは果たされることがありませんでした。

今ではその葬儀での出来事は、その約束のことだったんだなと思っています。

ちょっとした恩返しができたと思いました。

ありがとう、お祖父さん。

関連記事

空(フリー写真)

夢枕に立つ祖母

俺にとってばあちゃんは『優しさ』の権化のような人だった。 いつもにこにこしていて、言葉を荒げることもなく、本当に穏やかな人で、家族みんなばあちゃんのことが大好きだった。 ば…

大きな木(フリー写真)

初恋のお兄さん

小学3年生の頃、当時9歳だった私は、学校で虐めに遭っていました。 幼なじみの友達はいたのですが、一人で過ごす方が楽に感じてきていました。 ※ そんなある夏の日のこと…

夫婦の手(フリー写真)

あの世とこの世

若くして亡くなった夫は、美術的な才能のある人でした。 でも息子は小学生の頃から図画の授業は全然ダメ。 その点は父親に似なかったんですね。顔も似ていません。 性格はよ…

満開の桜

桜の木の下のふたり

夏の間はご無沙汰していたが、普段の休日には、近所の小さな公園によく足を運んでいた。 住宅街の真ん中にひっそりとあるその公園には、鉄棒とブランコ、そして砂場があるだけで、子どもの…

山

山の神社と巫女の幽霊

これは5年前の話です。当時の私は浮浪者で、東京の中央公園での縄張り争いに敗れ、各地を転々とした後、近畿地方の山中の神社の廃墟に住むようになりました。 麓へ下り、何でも屋として里…

合格祈願の絵馬(フリー写真)

母の四十九日まで

私が中学生の時の話です。 受験の真っ只中の時期に、母がくも膜下出血で入院。そのまま亡くなってしまいました。 その日の夜、 「最後に家族みんなで一緒に寝よう」 と…

トタンのアパート(フリー写真)

訳あり物件のおっちゃん

半年ほど前に体験した話。 今のアパートは所謂『出る』という噂のある訳あり物件。 だが私は自他共に認める0感体質、恐怖より破格の家賃に惹かれ、一年前に入居した。 ※ この…

タヌキの神様

俺の姉貴は運が良い人間だ。 宝くじを買えば、ほぼ当たる。当たると言っても、3億円なんて夢のような当たり方ではないのが残念なところだ。 大抵 3,000円が当たる。何回当たっ…

戦時中の軍隊(フリー写真)

川岸の戦友

怖いというか、怖い思いをして来た爺ちゃんの、あまり怖くない話。 俺の死んだ爺ちゃんが、戦争中に体験した話だ。 爺ちゃんは南の方で米英軍と戦っていたそうだが、運悪く敵さんが多…

グラスに入ったウィスキー(フリー写真)

千鳥足の酔っ払い

その日はなかなか仕事が終らず、自宅近くのバス停に降り立ったのは22時少し前だった。 自宅のマンションに向けて歩いていると、数メートル先に一人の酔っ払いが歩いていた。 酔っ…