彼女の夢

公開日: 心霊ちょっと良い話

カップル(フリー写真)

若干長いんだけど、もう見えなくなった彼女の心霊的な話。

中学の頃は不良だった。

身も心も荒んでいて、周りは受験を意識していた中学3年生の夏。

他校でやらかしてしまい、色々とお咎めを受けた。

俺の更生プログラムみたいなものが組まれ、その一環で市の図書館の掃除などを任せられた。

寂れた図書館で、もうあと少しで無くなる予定の図書館。

切り盛りしているのが市の職員と数人のおばちゃん。

来ている人も殆ど居らず、本当に暇だった。

俺は学習室のテラスでサボって煙草。

『早く終わらねーかなー』なんて毎日考えていた。

そこで知り合ったのが彼女。

「そこで煙草吸うな」

と説教を始めた彼女。

むかついて彼女の制服目掛けて煙草を投げてしまい、制服が煙草で燃えてしまい穴が開いてしまった。

彼女は泣きながら家に帰ってしまった。

流石にやり過ぎたと思い、職員に身元を聞き、家まで謝りに行った。

そんな訳で知り合いになった。

毎日図書館の管理をする俺と、毎日そこに来る彼女という間柄のおかげで、冬には付き合い始めた。

付き合い始めたおかげで俺は更正し、高校に行くため勉強を教えてもらったりもした。

俺は所謂霊を視る力というのが若干あり、そのせいか時折、彼女が薄く見えることがあった。

『大丈夫なのか?』と心配だったが、それ以上に彼女という人間が不思議だった。

ちょくちょく家にお邪魔させてもらったのだが、ツタなどが絡まっているような廃墟に近い家で、その集落一帯は空港の拡大に向けて立ち退きが決まっていた。

更に彼女は何かの病気だったらしく、大量の薬を服用していた。

色々な事情があったらしく、俺はあまり相手の事情に踏み込むことはしない。

別れは突然だった。

彼女の家にお邪魔していたら親父さんが帰って来て、

「中学生なのに恋愛などするな!」

と俺を殴って追い返した。

「受験を控えた娘にちょっかいを出すな」

と言われ、それ以来会う事が出来なくなった。

彼女がどんな心境だったのかも分からないが、俺は受験を終え、今なら少しくらい会っても良いのではないかと思い、彼女の家に電話をした。

「おかけになった番号は現在使われておりません…」

「えっ? そんな!」

急いで彼女の家に向かった。

そこに彼女の家は無かった。

取り壊された跡で、俺は立ち尽くして泣き叫んだ。

俺はその後、出来る限り彼女の行方を捜したが、彼女が立ち退く前に高校の進学を断念し、入院したという噂を聞いただけだった。

それから暫くして、彼女の夢を見るようになった。

俺が彼女に一生懸命その日あったことを喋りかける夢。

彼女は花畑でにっこりと微笑みながら話を聞く。

俺「今日さ、体育祭があってさ…」

彼女「…」

俺「俺、大学に行きたいんだよ」

彼女「…」

彼女の夢を見ると必ず穏やかな気分になって、起きると泣いていた。

次第に彼女は影が薄れて行った。

最後にその夢を見たのは大学を卒業する直前。

俺「俺さ…就職決まって、ついに地元を出る事になったよ」

彼女「お…め…で…とう…」

ゆっくりお辞儀して、彼女は遠くに行ってしまった。

それ以来、彼女の夢を見ることも、彼女の顔も思い出せなくなった。

その夢を見た翌朝、急いで彼女と一緒に撮った写真や日記帳などを探したのだけど、ついに出てくることはなかった。

もう今では顔も思い出せないけど、一言くらい「ありがとう」を言わせて欲しかったな…と思う。

関連記事

田舎の風景(フリー写真)

氷を買いに来る若者

これはうちのじいちゃん(既に逝去)に聞いた話。じいちゃんは、鉄工所を経営する腕利きの職人だった。じいちゃんが若い頃(戦後間もなくだと思う)、仕事の得意先に製氷所があった…

白猫(フリー写真)

先導する猫

小学生の頃、親戚の家に遊びに行ったら痩せてガリガリの子猫が庭にいた。両親にせがんで家に連れて帰り、思い切り可愛がった。猫は太って元気になり、小学生の私を途中まで迎えに来…

ひよこ(フリー写真)

変り種の相棒

12年前、近所の社の祭でヒヨコを釣ったんだわ。体が歪んでいて、少し変わった形をしていた。それでも懸命に俺の後を付いて来る姿がいじらしくて、散々甘やかし、可愛がって育てた。 …

空(フリー写真)

爺さんの教え

学生の時、爺さんが末期癌でこの世を去った。悲しかった。ただ、葬式では泣かなかった。泣けなかった。「人前で泣くな」が爺さんの教えだったから。 ※ 数日後、母か…

民宿の一室(フリー写真)

あの時の約束

長野県Y郡の旅館に泊まった時の話。スキー場に近い割に静かなその温泉地がすっかり気に入り、僕は一ヶ月以上もそこに泊まったんです。その時、宿の女将さんから聞いた話をします。…

愛猫の最後の挨拶

うちの両親が体験した話。もう20年も前の夏のことです。私達兄弟が夏休みを利用して祖父母の家に泊まりに行っていた夜、当時とても可愛がっていた猫がいつまで経っても帰ってこな…

版画(フリー素材)

婆ちゃんの戦時中の話

昔、婆ちゃんから聞いた戦時中の話を一つ。第二次世界大戦中、うちの婆ちゃん(サノ)が10歳の頃の話です。 ※ 婆ちゃんはお姉さんと避難のために親元を離れ、田舎の遠い親戚の家に…

牛(フリー写真)

ミチ

私の母の実家は一度、家が全焼してしまう大火事に遭いました。当時住んでいたのは、寝たきりのおばあちゃんと、母の姉妹6人だけ。皆が寝付いて暫く経った頃、お風呂を沸かすために…

魂(フリー素材)

守護霊の助け

若い頃、友人のBさんと久々に会い、飲みの席で「本格的な占いをお互いしたことが無い」という話で盛り上がったことがありました。酔った勢いで帰り道、幾つか閉まっていた占い場の中から適…

昔の電話機(フリー画像)

申し申し

家は昔、質屋だった。と言ってもじいちゃんが17歳の頃までだから私は話でしか知らないのだけど、結構面白い話を聞けた。田舎なのもあるけど、じいちゃんが小学生の頃は幽霊はもちろん神様…