爺さんの教え

公開日: 心霊ちょっと良い話

空(フリー写真)

学生の時、爺さんが末期癌でこの世を去った。

悲しかった。ただ、葬式では泣かなかった。泣けなかった。

「人前で泣くな」

が爺さんの教えだったから。

数日後、母から思わぬ話を聞いた。

「爺さんは、あんたにキツく接していたけど、実は一番可愛がられていたのはあんたなんだよ。

爺さんが肩車したのは、子供や孫の中で、あんただけだったんだから」

この話を聞いた時、物凄い後悔をした。

何故もっと孝行出来なかったのだと、自分を責めた。

ただ、泣くことはしなかった。

更に数日後、交通事故に遭った。

自転車対自動車(自分が自転車)で、自分は10メートル近く吹っ飛ばされた。

しかし、地面に激突するという時に、凄い力で自分の体が支えられた。

大事故だというのに、すり傷程度で済んでいた。

何かの気配を感じ顔を上げた…。

爺さんだった。生前には見たことも無い優しい笑顔で、こちらを見ていた。

守られているというのが解った時、涙が止まらなかった。止められなかった。

爺さんに心の中で謝った。

「出来の悪い孫でごめん…泣いちゃったよ」

爺さんは優しい笑顔のままだった。

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