爺さんの教え
公開日: 心霊ちょっと良い話
学生の時、爺さんが末期癌でこの世を去った。
悲しかった。ただ、葬式では泣かなかった。泣けなかった。
「人前で泣くな」
が爺さんの教えだったから。
※
数日後、母から思わぬ話を聞いた。
「爺さんは、あんたにキツく接していたけど、実は一番可愛がられていたのはあんたなんだよ。
爺さんが肩車したのは、子供や孫の中で、あんただけだったんだから」
この話を聞いた時、物凄い後悔をした。
何故もっと孝行出来なかったのだと、自分を責めた。
ただ、泣くことはしなかった。
※
更に数日後、交通事故に遭った。
自転車対自動車(自分が自転車)で、自分は10メートル近く吹っ飛ばされた。
しかし、地面に激突するという時に、凄い力で自分の体が支えられた。
大事故だというのに、すり傷程度で済んでいた。
何かの気配を感じ顔を上げた…。
爺さんだった。生前には見たことも無い優しい笑顔で、こちらを見ていた。
守られているというのが解った時、涙が止まらなかった。止められなかった。
爺さんに心の中で謝った。
「出来の悪い孫でごめん…泣いちゃったよ」
爺さんは優しい笑顔のままだった。