華ちゃん
公開日: 心霊ちょっと良い話
高校生の時に婆ちゃんが亡くなり、形見で市松人形を頂いた。
かなり古いが可愛い顔で、良い品だと見て取れるような市松さん。
『華ちゃん』と名付け、髪飾りを作って付けてあげたり、よく可愛がっていた。
大学進学で一人暮らしになる時、華ちゃんも連れて来た。
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そのうちサークルの友達や先輩を部屋に上げるようになったが、ふと気付くと時折、華ちゃんがマジギレしていた。
他人には分からないらしいが、目をつり上げ、眉間に皺を寄せた顔はまさにマジギレ。
暫くして、ある特定の先輩が来た時のみマジギレしていることに気付いた。
その頃、部屋から細々したものが偶に紛失していた。必ずサークル内の人が複数で来た後に。
波風を立てたくないし、無くなってもすぐ困るものでもなかったから、ずっと黙っていた。
だが、まさかと思いA先輩に(華ちゃんの事は言わず、ただ物が無くなる事だけ)相談すると、A先輩が華ちゃんがキレた先輩を問い詰めてくれた。
結果的に、私は華ちゃんがキレた先輩から惚れられていたらしい。
把握していた紛失物は、ヘアピン、髪ゴム、小さなマスコットなどだったが、A先輩の家捜しにより、箸、リップクリーム、下着というダメージの大きな物も発見。
窃盗で警察へ行く前に相手の親が出て来て、示談金と相手の退学、それから『今後一切関わらない』の念書で済ませた。
この時は、気付かせてくれた華ちゃんに凄く感謝した。
A先輩や友達からは「下着無くなってんの気付けよ!」と総ツッコミを頂いた。
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その後、A先輩が部屋に来ると、華ちゃんは超えびす顔。
もう今にも『よく来たな、ゆっくりしていけ!』とか言いそうなえびす顔。
マジギレ顔と違い、これについてはA先輩も「何か華ちゃん笑ってない?」と言っていた。
A先輩とは何だかんだで付き合う事になり、そのまま結婚した。
『婆ちゃんの霊が華ちゃんに…?』とも一時期思っていたが、やっぱり華ちゃんは『華ちゃん』なのだと今は思う。
何年かしたら、今お腹の中の娘の御守りになってもらう予定です。