そこを右

Victoria-Stoyanova-1968---Bulgarian-Abstract-painter---Tutt'Art@

あるカップルが車で夜の山道を走っていた。

しかし、しばらく走っていると道に迷ってしまった。

カーナビもない車なので運転席の男は慌てたが、そのとき助手席で寝ていたと思った助手席の彼女が、

「そこを右」

などと道を案内し始めたのだ。

「なんだ、道知ってるのかよ」

と思った彼だが、助手席から聞こえてくる彼女の案内に従って山道を走り始めた。

「そこを左」

「その道入って」

など彼女の案内は続いた。彼は安心して運転をすることができた。

そして、

「そこを左に曲がって」

彼はハンドルを切って左に曲がった。

「!!!」

彼は急ブレーキを踏んだ。

左に曲がったすぐ先は崖となっていた。落ちたら命はなかったろう。

「なんでこんな道を教えたんだ!」

彼は助手席の彼女に怒鳴った。

「死ねばよかったのに……」

寝ている彼女の口から低い男の声が聞こえた。

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