そこを右

Victoria-Stoyanova-1968---Bulgarian-Abstract-painter---Tutt'Art@

あるカップルが車で夜の山道を走っていた。

しかし、しばらく走っていると道に迷ってしまった。

カーナビもない車なので運転席の男は慌てたが、そのとき助手席で寝ていたと思った助手席の彼女が、

「そこを右」

などと道を案内し始めたのだ。

「なんだ、道知ってるのかよ」

と思った彼だが、助手席から聞こえてくる彼女の案内に従って山道を走り始めた。

「そこを左」

「その道入って」

など彼女の案内は続いた。彼は安心して運転をすることができた。

そして、

「そこを左に曲がって」

彼はハンドルを切って左に曲がった。

「!!!」

彼は急ブレーキを踏んだ。

左に曲がったすぐ先は崖となっていた。落ちたら命はなかったろう。

「なんでこんな道を教えたんだ!」

彼は助手席の彼女に怒鳴った。

「死ねばよかったのに……」

寝ている彼女の口から低い男の声が聞こえた。


いつも当ブログをご愛読いただき、誠にありがとうございます。
今後もこちらでの更新は続けてまいりますが、note では、より頻度高く記事を投稿しております。

同じテーマの別エピソードも掲載しておりますので、併せてご覧いただけますと幸いです。

怖い話・異世界に行った話・都市伝説まとめ - ミステリー | note

最新情報は ミステリー公式 X アカウント にて随時発信しております。ぜひフォローいただけますと幸いです。

関連記事

山村

辿静祭の禁を破った村

俺はある山奥の村で生まれ育った。 人口は百人程度、村に学校は無かったから、町の小中学校まで通って行っていた。 村人のほとんどは中年の大人や高齢の方で、一部の高校生や大学生…

生き延びた男

これは本当にあった事件の話で、ある精神病院に隔離された事件の生存者の話です。 なので細部が本当なのか狂人の戯言なのかは分かりません。 しかし事件そのものは実際に起こり、北海…

今、神様やってるのよ

うちの母方の実家が熊本県にあるんですけど、ずっと実家に住んでいる母のお姉さんが、先日遊びにきました。 ちょうど『ターミネーター2」がTVでやっていて皆で観ていたんです。 映…

赤い服の女の子

以前に書き込みした者ですが、もう一つ、二十年程前の話をします。 私はオカルト掲示板でもお馴染みの、例の生き人形の生放送を見ました。 スタジオがパニックになったなど詳細は覚…

夜道

散々な彼女

高校時代の彼女H美の話。 H美の家は、少し長めの道路の中間ぐらいに位置していた。夜になると人影も車もまばらになる薄暗い道路だ。 ある時期から、大して人通りもないその道路で事…

赤ちゃん(フリー写真)

違和感

私の母方の祖母は、以前産婆をしていました。 以前と言ってもかなり昔で、今から50年前くらいになると思います。 「どんな子も小さい時は、まるで天使のようにかわいいもんだ」 …

カーテンの上から

10年以上前の話ですが…。 大阪の某公園で、足を骨折して入院した時の出来事です。 その病院は夜21時に消灯する所で、取り敢えずベッドに横になっていた訳ですが、少し経ってから…

真夜中の訪問者

私には父親が生まれた時からいなくて、ずっと母親と二人暮しでした。 私がまだ母と暮らしていた17歳の頃の事です。 夜中の3時ぐらいに「ピーー」と玄関のチャイムが鳴りました。 …

葬列

ある日、AさんがBさんの家で飲み会をし帰りがすっかり遅くなってしまいました。 夜道を歩いていると向こうから何やら行列が見えます。その行列の人たちは喪服を着ており葬式だということが…

雨の音

その日は雨が強く降っていた。 現場に着き、トンネルの手前で車を脇に寄せて一時停車。 その手の感覚は鈍いほうだが、不気味な雰囲気は感じた。 恐い場所だという先行イメージ…