い゛れでぇぇ…

0391

友人は最近仕事が忙しく、自宅に帰るのは午前2時~3時になっていたそうです。

この自宅というのは、8階建てのマンションで7階にある部屋です。

いつものように、帰りが2時を過ぎていたので疲れ切ってマンションに辿り着き、エレベーターで部屋まで行ってとっとと寝ようと思っていたそうです。

エレベーターに乗り込み7階のボタンを押します。

この時間だと利用する人も殆ど居らず直通なのですが、2階で止まって扉が開きました。

でも、待ってる人はいなかったそうです。

それで「おかしぃなあ…」と思ったそうなのですが、なにやら廊下の奥の方から誰かが走ってくる足音が聞こえます。

「あ、誰か乗るのかな?」

と思ったのですが、『開』のボタンを押すより早く扉が閉まってしましました。

「ま、いっか」

とその場は何も気にしなかったのですが、3階でまたエレベーターが止まり扉が開きました。

「おっかしぃぃなあ…」とただ不可解に思った直後、身が凍る思いをしたそうです。

またもや、廊下の奥の方から走る足音が聞こえてくるのです。

それも、どうやらこっちに向かって走って来ている様子…。

鳥肌がゾワゾワっと立ち、慌てて『閉』ボタンを押したそうです。

心臓がドキドキしながらも「もしかして次の階も止まるのでは…」と直感的に思ったそうです。

直感は当たり、4階でも止まり扉が開こうとします。

扉が開く前から『閉』ボタンを連打したのですが、やはりある程度開いてしまいます。

その開いた時に、エレベーターの中からは見えない位置だったのですが、もうエレベーターの近くまでその走る足音が聞こえてきてたそうです。

それと、苦しそうで、くぐもってはいるが女らしき声で、

「い゛れでぇぇ…」

と聞こえたそうです。

もう、半ば気絶しかかりそうになりながらも5階でも止まると確信して『閉』ボタンの連打。

それで、また5階で扉が開いてしまった訳なのですが、ちょっとだけ開いて閉る瞬間、廊下からエレベーターホールに走り込んで来た人が見えたそうです。

友人は恐怖で泣き叫びながら『閉』ボタンを連打してたのですが、6階でまた止まり、扉が開いた瞬間、2メートル近く前方に目をかっと見開いたバサバサの長い髪をした人がこっちに向かって走って来ていて、先ほど言っていたと思われる「れでぇぇぇぇ」の部分を聞いたところで、気絶したのか記憶が途切れているそうです。

気が付くと自宅のベットの中にいたそうです。

夢だったのかとも思ったそうですが、どう考えてもそれはないと本人は言い張っています。

関連記事

教室(フリー写真)

余るプリント

この間久しぶりに会った、20年来の幼馴染から聞いた話。 幼馴染(A男)は、ある女子高で英語の教師を勤めていた。 Aはいつも英語を教えるクラスの生徒に配るプリントを校内のコ…

ビル

ゲーム雑誌会社での恐怖体験

昔、私はゲーム雑誌会社で働いていました。会社が潰れてからは振り返ることもなかったのですが、今はもう話しても大丈夫でしょう。ゲームにまつわる不可解な話を一つ、記してみます。 私た…

抽象的模様(フリー素材)

融合体

以前、井戸の底のミニハウスと、学生時代の女友達Bに棲みついているモノの話を書いた者です。 ……8月に物凄いことがあったので、以下にまとめました。フェイク込みなので辻褄が怪しいとこ…

母からの手紙

息子が高校に入学してすぐ、母がいなくなった。 「母さんは父さんとお前を捨てたんだ」 父が言うには、母には数年前から外に恋人がいたそうだ。 落ち込んでいる父の姿を見て、…

神社(フリー素材)

ふくろさん

大学二年の春だった。 その日僕は、朝から友人のKとSと三人でオカルトツアーに出掛けていた。 言いだしっぺは生粋のオカルティストK君で、移動手段はSの車。いつもの三人、いつも…

高田馬場のアパート

7年前の話。 大学入学で上京し、高田馬場近辺にアパートを借りて住んでいた。 アパートは築20年くらいで古かったけど、6畳の和室と、襖を挟んで4.5畳くらいのキッチンがあると…

学校の校門(フリー背景素材)

ジェニー人形

昔、父親に愛人が居た。 数年後、母にバレて別れる事になったのだが…。 それが原因でその愛人さんは精神的に不安定になり、私や私の姉達の通学路に立って、おかしな言動をするように…

爺ちゃんとの秘密

俺は物心ついた時から霊感が強かったらしく、話せるようになってからは、いつも他の人には見えない者と遊んだりしていた。 正直生きている者とこの世の者ではないものとの区別が全くつかなか…

林道(フリー写真)

姥捨て山

俺の兄貴が小学生の頃、まだ俺が生まれる前に体験した話。 兄貴が小学5年生の春頃、おじいちゃんと一緒に近くの山へ山菜採りに入った。 狙っていたのはタラという植物の芽で、幹に棘…

沖縄

奄美大島の伝説

この話は私の大学時代の友人から聞いたもので、彼は奄美大島出身です。ある夜、ゼミ合宿での宴の席で、私たちは怪談話に花を咲かせていました。その中で、奄美大島に伝わる「いまじょ」という怪談…