砂風呂

img_0

昔ね、友達と海に行った時の話なんだけど。

砂風呂をやろうとして、あんまり人目が多い場所だとちょっと恥ずかしいから、あんまり人気のない場所で友達に砂かけて埋めてもらったんだ。

顔には日よけのパラソルがかかるようにしてもらって快適だったし、すぐにウトウトし始めた。

その時、不意に誰かが近づいてくる気配がして

「オキテタラヤル」

と、若くはない女性の声でしゃべったのよ。

友達の声じゃなかったし、妙に抑揚が無いしゃべり方だった。

かなり眠かったから無視したんだけど、結局それきり声は聞こえてこなくて気配もすぐ立ち去った。

それからしばらく砂から出て海で遊んでたんだけど、人も少なくなった帰りの時間に、パラソルをあの場所に置いてきてしまったことを思い出して取りにいったのね。

言い忘れてたけど、あの時砂から出る際に人がまだいるかのように砂を盛り上げて、パラソルも顔に当たる部分が見えないように配置していたわけよ。

友達を驚かそうとしていたんだけど、結局待つのが面倒ですぐに別の場所で合流してしまったんだけどね。

で、パラソルを取りに戻った俺が見たのは、俺のじゃない別のパラソルが砂の盛り上がった部分に何本も突き刺さっていたのね。

俺のパラソルは切り裂かれて、顔があるべきはずだった場所に垂直に突き刺さっていた。

あと何故かカミソリが頭と胴体の間にめり込んでいた。

正直、怖かった。怖い話のテンプレみたいだなとも考える自分もいたけど。

とりあえずゴミはまずいから自分の分のパラソルの残骸は持って帰ろうと思って、思い切り深く刺さってたそれを軽い怒りと共に引き抜いたのね。

そしたらさ、遠くからなんか声が聞こえてきて、視線を向けると結構長い砂浜の向こうからものすごい勢いで走ってくる奴がいるのよ。

で、そいつがなんか叫んでるの。

まだ残っていた人たちが、そいつから後ずさっているのはよく見えた。

もう俺もすぐに走って車に戻って、よくわかんない顔してる友達を車に乗せてさっさと逃げた。

焦ってはいたが、距離はかなりあったから結構余裕ではあったが、笑いながら「オキテル」「オキテル」と走ってくる姿は忘れない。

関連記事

学校(フリー背景素材)

お守りばばあ

俺が小学生だった頃、地元に有名な変人の婆さんが居た。渾名は『お守りばばあ』。 お守りばばあは、俺が通っていた小学校の正門前に、夕方頃になるといつも立っていた。 お守りばばあ…

旅館(フリー写真)

旅館での恐怖体験

甲府方面にある旅館に泊まった時の話。 俺と彼女が付き合い始めて1年ちょっと経った時に、記念にと思い電車で旅行をした時の事。 特に目的地も決めておらず、ぶらり旅気分で泊まる所…

田舎の風景(フリー写真)

天神逆霊橋

そもそも『天神逆霊橋』というのは、神奈川の話ではない。 詳しい地名は失念してしまったが、東北の方のある村の話だった。 その村では悪さをする子供に「天神様の橋を渡らせるよ」と…

夜道

白い傘を差した人

ある日、友人と遊んだ後、雨が降っているし時間も遅いからということで友人を家に送った帰りの話。 今週の漫画をまだ読んでいないなと思い、コンビニへ行った。店内に客は自分だけ。 …

画鋲

幼稚園の頃に画鋲を飲まされそうになった経験があります。 当時、私のいた幼稚園のサクラ組では「嘘はつかない」という簡単な法律があり、毎朝のHRでは「うーそついたら、針千本のーます♪…

てめぇじゃねぇ!

ある夜のことでした。 会社員のAさんは残業で遅くなったのでタクシーを拾いました。 タクシーの中では、運転手さんと色々な話で盛り上がっていました。 そして、タクシーは山…

紅葉狩り

俺が大学時代の20年以上前の話。 友達がワンボックスの車を買って貰ったとかで、仲の良い女の子達も誘って紅葉狩りに行ったんだ。 山奥で湖があって山道を歩くような所なんだけど、…

水溜り(フリー素材)

かえるのうた

ある年末の事です。会社の先輩からこんな誘いを受けました。 「年末年始は実家に帰るんだけど、良かったらうちで一緒に年越ししない? おもしろい行事があるのよ。一回見せてあげたいなあと…

くる!

ウチの叔母さんはちょっと頭おかしい人でね。 まあ、一言で言うと「時々昔死んだ彼氏が私を呼ぶのよ」って台詞を親族で飯食ってる時とかに平気で言う人でね。 2年くらい前から「離婚…

抽象模様(フリー画像)

ヤドリギ

あまり怖くなかったらすまん。ちょっと気になることが立て続けにあったんで聞いて欲しいんだ。 自分は子供の頃からオカルトの類が大好きでな、図書館などで読んでいたのは、いつも日本の民話…