きょうこさん

民家

以前付き合っていた霊感の強い女性から聞いた話です。「これまで色んな霊体験してきて、洒落にならんくらい怖い目にあったことってないの?」と尋ねたら、彼女は深刻な表情で教えてくれました。

19年前、彼女は家電量販店で働いていました。ある日、注文されたテレビを配達するため、ある町へ向かいました。彼女の叔母がその町に住んでいたため、叔母の家に立ち寄り、テレビの配達先を尋ねたところ、幸い近くだったので配達を済ませました。

帰り道、彼女はNダムのそばを通る裏道を通り、K市へ向かうことにしました。しかし、曇天の中を進むうちに、道は徐々に狭く、険しい山道に変わりました。彼女が迷っていたところ、農作業をしていたお婆さんに道を尋ね、民家まで行くように指示されました。

民家に着くと、お婆さんが突然現れ、彼女を家でお茶に誘いました。彼女は何となく家の中に入りましたが、中で待っていたのは、彼女を「きょうこさん」と呼ぶお爺さんでした。彼女はその名前を知りませんでしたが、何となく納屋の方に人の気配を感じました。

縁側に座っていると、突然意識を失い、目を覚ますと仏間にいました。そこで彼女は、自分の腕を掴む小さな女の子に遭遇しました。その子は、彼女の腕を掴みながら、お爺さんに噛みついたのです。

彼女は怖くなり、逃げようとしましたが、動けませんでした。そして、畳から無数の手が伸びてきて、彼女を掴んでいました。彼女はパニックに陥り、気を失う寸前でしたが、お爺さんが変わり果てた姿に変身し、彼女に話しかけてきました。

やがて彼女は外に連れ出され、倉にいる「きょうこさん」の妹と言われました。彼女は恐怖のあまり、車に逃げ込みましたが、車のエンジンがなかなか始動しない中、お婆さんが現れ、彼女を引き留めようとしました。

彼女はなんとか脱出し、自宅に帰りましたが、運転免許証がないことに気づきました。警察署で免許証を引き取ると、写真が見知らぬ女性に変わっていました。その女性は「きょうこさん」という名前で、2年前にダム近くで事故死していたのです。

彼女が経験したのは、現実と異世界の境界線が曖昧になった恐怖体験でした。普段は何気ない日常の中に、異世界への穴が隠されているのかもしれません。

関連記事

ストーカー

俺が友達の女の子の家に泊まりに行った時の事。 彼女は前からストーカー被害に遭っていると言っていたんだけど、まあ正直特別可愛い子という訳じゃないし、男からすればストーカーどころか痴…

ちょっとだけ異空間に行った話

ドラッグか病気による幻覚扱いにされそうだけど、多分、ちょっとだけ異空間に行った話。 就活で疲れ果てて横浜地下鉄で眠り込んでしまった。 降りるのは仲町台。夕方だったのに、車掌…

裏山

危険な好奇心(中編)

山を降り、俺達は駅前の交番へ急いだ。 『このカメラに納められた写真を見せれば、五寸釘の女は捕まる。俺達は助かる』 その一心だけで走った。 途中でカメラ屋に寄り現像を依…

田舎の家(フリー写真)

般若面の女

過去から現在まで続く、因果か何かの話。 長いし読み辛いです。 ふと思い出して混乱もしているので、整理のために書かせてください。 ※ 私が小学生一年生の夏、北海道の大パパ…

雪国(フリー写真)

無医村

爺ちゃんは当時、凄い田舎の山村に住んでいて、村にはあまり評判の良くない医者が一軒しかなかった。 ある時、爺ちゃんの知り合いの年配の男性が盲腸になり、仕方なくその医者に手術してもら…

ビルの隙間

去年の夏休みの事。 夜中にコンビニへ行き、いつも通る道を歩いていると、ビルとビルの間に1メートルくらいの隙間があるのを発見した。 俺は『こんな所に隙間あったっけ?』と思った…

廃墟

記憶の村の変貌

ある日、男性は突然、過去に訪れた村を思い出した。 それは数年前、一人旅をしていたときに偶然立ち寄った、小さな宿がある村だった。 その村では心温まるおもてなしを受け、強く印…

集合住宅(フリー素材)

知らない部屋

私が小学校に上がる前の話。 当時、私は同じ外観の小さな棟が幾つも立ち並ぶ集合団地に住んでいました。 ※ ある日、遊び疲れて家に帰ろうと「ただいまー」と言いながら自分の部屋の戸…

巨頭オ

男はふとある村の事を思い出した。 数年前、一人で旅行した時に立ち寄った小さな旅館のある村。 心のこもったもてなしが印象的で、なぜか急に行きたくなった。男は連休に一人で車を走…

放射能記号(フリー素材)

原発並み

以前、井戸の底のミニハウスと、学生時代の女友達Bに棲みついているモノの話を書いた者です。 当時、女友達Bの元彼氏(E)に聞いた小話を思い出したので投下します。 ※ 以下はこれ…