掛け声の正体

山道(フリー写真)

無名に近い芸能人の方がテレビで語っていた怖い話。

その方の実家近くに、子供の頃から絶対に登ってはいけないと言われていた山があった。

高校時代のある日、仲間数人と連れ立って、学校をサボり昼間からその山に登ることになる。

鬱蒼と茂った林の中を細い山道を伝って山頂を目指していると、山頂の方からお神輿を担いでいるような声が聞こえて来た。

「わっしょい、わっしょい、わっしょい…」

平日の昼間から何故山の中で祭りをやっているのか不審に思ったが、一行は取り敢えず登り続けることにした。

掛け声が段々大きく聞こえて来ることから、どうやらそのお神輿の一団は山道を下って来ているということが解った。

しかし、ここでおかしな事に気が付く。

まず声が近付くにつれ足音も聞こえて来たのだが、その数が半端じゃないほど多い。

半端じゃないほど多いはずなのに、人の気配が全くしない。

おまけに「わっしょい」だとばかり思っていた掛け声も、はっきり聞こえないがどうやら違うようだ。

彼らはやばいということに気が付いたが、足が竦んで動けなくなってしまった。

そうこうしている内に、お神輿の一団が登山道のカーブを曲がり、いよいよ自分達の視界に入る位置に来た。

彼らは見聞きしてはいけないと思い、目を瞑り両手で耳を塞ぎ、その場でしゃがみ込んでしまった。

お神輿の一団はしゃがみ込んだ彼らの頭上を通り抜けて行ったそうだ。

耳を塞いでいたにも関わらず、よく聞き取れなかった掛け声もはっきり理解出来た。

掛け声の正体は、

「わっしょい!わっしょい!わっしょい!」

ではなく…

「帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!」

だった。

関連記事

窓ガラス(フリー写真)

お通夜を覗く女性

15年程前、不思議な体験をしました。 当時は福井の田舎に住んでおり、高校生の僕は、友人の母親のお通夜へ行きました。 崖崩れか何かの急な事故で亡くなったとのことでした。 …

三文字

俺は、某所のある古いアパートで一人暮らしをしている。このアパートは二階建てで、各階四号室までのごく普通のアパートだ。 ちなみに俺は104号室に住んでいる。ある日、いつものスーパー…

夜の駅(フリー素材)

地図に無い駅

その日、彼は疲れていました。 遅くまで残業をし、電車で帰る途中でした。 既にいつも使っている快速は無く、普通電車で帰るしかありませんでした。 その為いつもよりも電車で…

赤いベストのおっさん

今年の5月の連休だけど、会社の仲間2人と2泊3日の予定で奥秩父に渓流釣りに行った。 あのヘリが墜落したり日テレ社員が遭難した4重遭難と言われる事件で、奥秩父は怖いところだと噂が広…

時が止まる場所

昔ウチの近所に結構有名な墓地があって…。 当時俺は、よく友達と近所の大きな公園で、自転車を使った鬼ごっこをしてたんだ。 ある日、リーダー格の友人Aの意見で、公園内だけではつ…

皺のある手(フリー写真)

祖母の日記

私は大変なおばあちゃん子で、中学になってもよく祖母の家に遊びに行っていました。 父方の祖母なのですが、父親は私が幼い頃に不慮の事故で死去していました。 祖父を早くに亡くした…

ゲーム屋

大量のゲームソフト

10年前くらい前、ゲーム屋でバイトをしていた。 ある日、もうすぐ閉店時間という時に、突然60歳くらいのおばさんが大きなダンボールを抱えて店に入って来て、物凄い形相で「お金いらない…

和室(フリー写真)

連鎖と数珠

一年経ってようやく冷静に思い出すことができるようになった出来事がある。 去年のちょうど今頃の話だ。 その日は金曜日で、俺は会社の同僚数人と何軒かの店をハシゴして、すっかり良…

田んぼ

蛇田

自分の住んでいる所は田舎の中核都市。 田んぼは無くなっていくけど家はあまり建たず、人口は増えも減りもせず、郊外に大型店は出来るものの駅前の小売店は軒並みシャッターを閉めているよう…

山道(フリー素材)

上位の存在

厳密に言うと、この話は俺が「洒落にならない程怖い」と思った体験ではない。 俺の嫁が「洒落にならない程怖い」と思ったであろう話である。 俺の嫁は俗に言う視える人で、俺は全くの…